桜才学園での生活   作:猫林13世

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いてもいなくても変わらない


代理の生徒会顧問

 職員室で作業していると、横島先生に話しかけられた。

 

「小山先生、悪いんだけど明日、生徒会の顧問の代理をお願い出来ませんか」

 

「それは構いませんが、横島先生明日は何か予定でも?」

 

「出張でさ。あんまりすること無いけど、代理は立てておかないとだろ?」

 

「そうですね。それで、具体的には生徒会顧問の仕事ってどんな事です?」

 

 

 普段から顔を出している様子ではないし、生徒会メンバーはしっかりとした子だ。天草さんや七条さんは若干不安があるけども、津田君と萩村さんはちゃんとしていると記憶している。

 

「私は主に、下ネタを言って場を和ませている。つまり下の世話をしている!」

 

「つまり何もしていないんですね……」

 

 

 昔の天草さんなら喜んで横島先生と会話していたでしょうけども、最近は大人しくなってきているということなので、恐らくは冷たい目で見られているのでしょうね……

 

「分かりました。とりあえず横島先生が不在の間は、私が代理の生徒会顧問を務めます」

 

「助かったよ。これで安心して出張に行ける」

 

「というか、随分と急ですね」

 

 

 普通なら以前から決まっていることだから、もっと早くに代理を探すはずなのですが……

 

「普段なら代理なんて立てないから忘れてたんだよ。まぁ、小山先生もあいつらと交流を持った方が良いだろうと思って、今回はお願いしたんです」

 

「そうですか」

 

 

 何となく疑いたくなる理由だけども、嘘だという確証はないので、私はそれ以上追及することはしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会室に向かう途中、部屋の中から珍しい人の気配を感じ取って首を傾げると、隣を歩いていたスズが視線で問いかけてきた。

 

「小山先生が生徒会室にいるんだが、いったい何の用だろう」

 

「小山先生が? 横島先生じゃなくて?」

 

「あの人は今日出張らしい。朝から気配が無いからな」

 

 

 いても大して役に立たないので、横島先生が生徒会室に来ても追い返すのだが、小山先生がいるのは気になるな。あの人、昔シノ会長と交流があっただけあってなかなかのツッコミスキルを持っているが、普段は横島先生一人で手一杯だし、今の時間はシノ会長とアリア先輩しかいないので、あの二人のストッパーも緩んでるだろうし。

 

「遅くなりました」

 

「あっ、津田君と萩村さんも来てくれた。これで二人も大人しくなるかな?」

 

「あぁ、やっぱり」

 

 

 俺が思った通り、二人のストッパーが緩んでいたようで、小山先生は困った表情でこちらを見て、安心した表情に変わった。

 

「ちょっとした冗談だったんですけど、小山先生なら受け入れてくれるかと思ったんですけどね」

 

「私は横島先生ではありませんので」

 

「あの人はここに来ても余計な事しかしませんので」

 

 

 今日はそれなりに仕事が溜まっているので、俺は処理すべき領収書をスズに渡して、自分の分の仕事を始める。何となく小山先生が驚いた様子なのは、スズが計算機を使わずに領収書の処理をしているからか、それとも会長であるシノさんがあまり機能していないからか。

 

「お茶淹れたよー。小山先生もどうぞ」

 

「あ、ありがとう」

 

 

 代理の生徒会顧問としてやってきたようだが、別に普段からいないので誰も話しかけなかった所為か、小山先生はすっかり空気と化していた。それを察したのか、アリア先輩が五人分のお茶を用意して、漸く会話するきっかけが出来たようだ。

 

「ところで、何故小山先生が生徒会室に? 代理と言っていましたが、普段から生徒会顧問はいないものとして作業しているので、わざわざ常駐する必要はないですよ?」

 

「横島先生からもそう言われましたが、せっかくの機会ですから、皆の仕事っぷりを見学しようかと思っていたの」

 

「それで、どうでした?」

 

「天草さんや七条さんも仕事となると真剣だなって感じたけど、後輩二人の方が仕事をしているのが気になったかな」

 

「それは、まぁ……萩村が処理した方が早いですし、タカトシが打ちこみした方が誤字脱字が少なくてチェックが楽ですから」

 

「まぁ、天草さんはあんまり機械が得意じゃなかったもんね」

 

 

 会長と小山先生が話している横で、俺は朝から気になっていたことをスズに尋ねる。

 

「美容院に行った? 朝から様子が違うって思ってたんだが」

 

「良く気づいたわね。ネネやムツミでも気づかなかったのに」

 

「まぁ、何となく雰囲気が違ったから」

 

「さすがタカトシだな。よく人のことを見ている」

 

「津田君って、昔からそんな感じだったの?」

 

「そんな感じ、とは?」

 

 

 小山先生が何を聞きたいのか、俺にはよく分からない。いや、分からないことはないんだが、何故それが気になったのかが良く分からないのだ。

 

「この学校の男子のだいたいは、女子生徒に対して多かれ少なかれ欲の詰まった視線を向けてるのに、津田君からはそんな感じが一切しないから」

 

「まぁ、そういった感情で相手を見るのは失礼ですし」

 

「津田副会長はむしろ、欲望の詰まった視線を浴びる側ですからね」

 

「屋上からロープを吊るして盗撮するのは止めるよう、散々指導したはずですが? やはり新聞部を活動停止にしないと分からないのですか?」

 

 

 突然現れた畑さんに俺以外の全員がビックリしているが、俺は淡々と畑さんに説教してその場を片付けたのだった。




そして何処からともなく現れる畑ランコ……

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