桜才学園での生活   作:猫林13世

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ダメさ加減が目立つな……


出島さんの希望

 珍しく宿題も終わり、タカ兄もお休みなので一緒にテレビを見ていた。だが特に面白くもないので、私は他のことをしようと考え、タカ兄と一緒にお出かけをしようと決めた。

 

「ねー、コンビニ行かない?」

 

「別に良いが」

 

 

 普段タカ兄はコンビニではなくスーパーに行っているので、あまり一緒に行く事は無かったけど、意外なことにすんなりと同行してくれることになった。

 

「寒いからちゃんと上を着ていけよ」

 

「そんな子供に対する親みたいなこと言わないでよー」

 

 

 そりゃタカ兄は保護者代理だし、お母さんよりお母さんっぽいけど、私だってもう高校生なのだ。上着の必要性の有無を決める事くらい自分でできるのだ。

 

「あっ、今ノーブラだった」

 

 

 別に上着は無くても良いかなーと思ってたけど、ブラをしていないのでさすがに部屋に取りに行かなければならない。

 

「お待たせ―」

 

「ふざけてるのか?」

 

 

 シャツの上からブラを着けている私を見て、タカ兄のこめかみがぴくっと動いた。あの動きは怒ってるときにする動きだ。

 

「こーゆーファッション、本当にあるんだよ! けっして着替えるのが面倒だったわけじゃ――」

 

「ん?」

 

「ゴメンなさい! 着替えてきます」

 

 

 こめかみだけでなく、片眉までぴくっと動いたので、私は急いで着替えに戻る。最近大人しくしているから本気で怒られることは無かったけど、このままだと本気で怒られることが分かったからだ。

 

「あー……怖かった」

 

 

 部屋に逃げ込んで大きく息を吐いてから、私はちゃんと着替えてタカ兄と一緒にコンビニに向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 食事の用意をする為に、橋高さんと一緒にキッチンで作業をしている。本当ならお嬢様とくんずほぐれつしながら用意したいのですが、さすがにそんなことをしていたら調理が進まないので自重している。

 

「あっ」

 

 

 そんなことを考えていたからか、私は普段ならしないミスをしていたことに気が付いた。

 

「水の量、間違えて米炊き失敗しました」

 

「まぁ、どんまいですな」

 

 

 橋高さんは基本的に穏やかな方なので、滅多に怒ることはない。まぁ私も怒られて快感を覚えるタイプではないので、この対応は非常にありがたい。

 

「出島さーん」

 

「お嬢様、如何なさいましたか?」

 

 

 失敗してしょんぼりしていたところにお嬢様が現れたので、私のテンションは一気に最高潮になる。こう考えると、私って結構簡単なのでしょうか。

 

「トイレ流す時、大と小のレバー間違えたでしょ。少し残ってたよ?」

 

「恥ずかしーっ」

 

「それは猛省してください」

 

 

 橋高さんに聞かれていたことが恥ずかしいわけではないが、何となく気まずくなり、私は調理を任せて別の仕事へ向かう。

 

「何してるの?」

 

「クローゼットの整理です。着ない服は圧縮袋に」

 

 

 これだけでもだいぶ片付くので、一般家庭でも使われているのだが、お嬢様はあまりそういうことに詳しくないので、関心したように圧縮袋を眺めている。

 

「そういえば、タカトシ君の家でもやってたような気がするな―」

 

「タカトシ様は立派な主夫ですからね」

 

 

 ご本人が聞いたら怒りそうな会話ですが、誰がどう見てもタカトシ様は立派な主夫なんですよね。

 

「ところで、それも整理の一環なの?」

 

 

 お嬢様が見ているのは、お嬢様のパンツが入れられた圧縮袋。

 

「これは私のお楽しみ用です」

 

「ここはブルセラじゃありませんぞ!!」

 

「橋高さん、いたんですね」

 

 

 最近では七条家内のツッコミ役として数えられている橋高さんだが、タカトシ様とは違ったタイプのツッコミを入れてくる。恐らくタカトシ様なら無言で睨みつけてくるか、容赦なくパンツを回収してお嬢様本人で保管するように促したでしょうね。

 

「おや?」

 

 

 お嬢様の足下に猫が群がり、母猫の乳を吸い始めたのが目に入る。こういう光景は和むので良いですよね。

 

「猫の赤ちゃんって、決まった乳首吸うんだって」

 

「猫の性ですね」

 

 

 お嬢様が披露した雑学は私も知っていたが、お嬢様は特に気にした様子もなく猫の授乳姿を見詰めている。

 

「私も本当は、お嬢様の乳首以外は吸う気ないんですけどね」

 

「あなたタチでしょ」

 

「お嬢様の前ならネコにだってなります! というか、むしろお嬢様の乳首を吸わせていただけるのなら、ネコだって偽ります!」

 

「というか、ちゃんと仕事してください」

 

 

 橋高さんに注意されてしまったので、私はほのぼの空間から離れて仕事を再開することに。

 

「あぁ、お嬢様の子猫になりたい……お嬢様の乳首を吸いたい」

 

「そんなことばかり言っていると、旦那様と奥様に報告してお嬢様から離れる仕事に回してもらいますぞ」

 

「それだけはご勘弁を! お嬢様と離れなければならないなら、私はこの仕事を辞めます」

 

「辞めてどうするのですか?」

 

「お嬢様のペットとして再就職します!」

 

「募集していないので諦めてください」

 

 

 橋高さんにバッサリと斬り捨てられて私はガックリと肩を落としながら、残っている作業を片付ける。お嬢様のペットなら、一日中お嬢様の側にいられるし、もしかしたら乳首も吸えると思ったんですが……残念です。




別名ヒモ……

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