桜才学園での生活   作:猫林13世

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ろくでもない雑学


キスの意味

 生徒会作業も一通り終わり、後は細々とした作業を片付ければ解散というところで、横島先生が生徒会室にやってきた。

 

「なぁ知ってるか? キスする場所によってその意味が変わるんだぜ」

 

「何ですか、いきなり」

 

 

 普段顔を出さないくせに、どうでもいい事を言いにわざわざ生徒会室にやってきたのだろうか? だとすれば邪魔でしかない。

 

「そういえば聞いたことがあります。おでこは『友情』でほっぺは『厚情』。そして口唇は『愛情』ですよね」

 

「天草よく知ってるな」

 

「さすがシノちゃん」

 

 

 別にもう大した作業も無いから、会長たちが横島先生の相手をしてくれるならそれで良いか。俺が残ってる雑務を片付ければいいんだから……

 

「じゃあ鼻はなんだ?」

 

「えっと……何だっけ」

 

「シノちゃん度忘れしちゃったの?」

 

「何とか思い出すから……えっと、臭い物フェチ人向けだったか?」

 

「そんなわけ無いだろ。愛玩ですよ」

 

 

 ひねり出せなかったのか、昔の癖が発動した会長にツッコミを入れ、俺は正解を教える。それにしても、こういう時にスズが三人の相手をしてくれればいいのに、彼女は我関せずを貫き通しているのだ。

 

「顔以外へのキスにも、意味があるの知っているかな? たとえばおなかにキスするひとは、相手に母性を求めているんだ」

 

「そうなんだー」

 

「じゃあちょっと聞くが」

 

 

 ここでまた横島先生が余計な事を言い出しそうな感じがしたが、今度は俺も放っておく事にしよう。というか、この人の相手をするだけ無駄だからな。

 

「へそ舐めの場合は、相手に何を求めているんだ?」

 

「罵声を求めているんじゃないんですか? というか、何故へそ舐め?」

 

「昨日の相手がそんな感じな事をしてきたからな。思いっきり罵声を浴びせてやったら絶頂しちまってな」

 

「ドMだったんですね」

 

 

 会長も七条先輩も昔の癖が出ていたので、俺はさっさと雑務を終わらせて音を立てずに生徒会室を後にした。残されたスズが恨みがましくこちらを見ていたような気もするけども、それには気付かないフリをしてさっさと帰る事にしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカ兄が生徒会業務で遅くなるので、私はトッキーを家に呼んで一緒に遊んでいた。本当は宿題を一緒にしていたんだけども、二人だけじゃどうにもならなくなってしまったのでタカ兄が返ってくる間での時間つぶしだ。

 

「先手は譲ってやる」

 

「また何かに影響されてるな……」

 

「敵に塩を送るというやつだよ」

 

 

 私とトッキーのプレイ時間の差を考えれば、この程度は問題ないと思っていたのだが――

 

「あっ、あわわわわわ」

 

 

――思ってた以上にトッキーの攻撃が繋がって、私のライフはあっという間に残りわずかになってしまった。

 

「そういえばトッキー、この前パンツの上に水着を着てプールに入ってたね!」

 

「古傷に塩を塗り込むな! てか、余裕ぶってたのに随分と慌ててるな」

 

 

 トッキーにも余裕が無くなったのか、意外といい勝負になってきた――いや、泥仕合か……

 

「ただいま」

 

「あっ、タカ兄おかえりー! それじゃあトッキー、タカ兄に質問しながら宿題の続きをしようか」

 

「おいこら! 負けそうになったからって逃げるんじゃねぇよ」

 

 

 さすがにバレたようで、この試合だけはきっちりを終わらせる事にした。先手を譲ったのが原因で、私はトッキーに負けてしまったのだが……

 

「よし、リベンジだ!」

 

「宿題やるんだろ?」

 

「終わったらもう一回勝負だからね!」

 

 

 リビングにいるタカ兄に声をかけて、私たちは残っていた宿題を急ぎ片付ける事にした。

 

「タカ兄、宿題教えてー」

 

「すんません……」

 

 

 二人揃ってタカ兄に教えを乞う。タカ兄は気配で私たちが近づいてきているのも、宿題で分からない箇所を質問することも分かっていたようで、私たちを座らせてじっくり解説してくれた。

 

「――というわけだが、二人とも理解したか?」

 

「はへ~……今ならタカ兄に襲われても抵抗出来ないよ」

 

「阿呆な事を言ってないで、最後の問題は自力で解け。さっきのと考え方は同じだからできるだろ」

 

 

 タカ兄に怒られてしまったので、私は残っている気力を振り絞って最後の問題に取り掛かる。隣ではトッキーが頭を悩ませながらも解いているのが気配で分かるので、私も負けないように問題を読みタカ兄に教わった公式を使って問題を解いていく。

 

「タカ兄、これであってる?」

 

「ちょっと待ってろ」

 

 

 タカ兄は私たちが問題を解いている間に洗濯物を取り込んでいたようで、私が確認してもらおうと思った時もまだ片づけをしていた。

 

「相変わらず母親みたいな兄貴だな……」

 

「トッキーだって、タカ兄の女子力の高さは知ってるでしょ?」

 

「女子力っていうか、オカンだよな、完全に」

 

「聞こえてるんだけど?」

 

「……すんません」

 

 

 タカ兄に聞かれていたことを失念していたトッキーは、素直に頭を下げた。さすがのトッキーもタカ兄には勝てないようだ……

 

「二人ともやればできるんだから、もう少し頑張ってくれ」

 

「タカ兄が教えてくれて漸くできるんだよ。だから、自分一人ではどうしようもない」

 

「威張って言うな……」

 

 

 タカ兄に頭を小突かれたけども、それほど痛くは無かった。まぁ、タカ兄も加減してくれてるから痛くないって分かってるんだけどもね。




兄兼オカン兼先生……

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