桜才学園での生活   作:猫林13世

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どっちも目立つんでしょうね


縦と横の存在感

 タカ君のお家にお泊りしてたから、今日は何時もより遅い時間に学校に到着した。それにしても、この時間だとかなりの人が登校してるんだなぁ……

 

「おっ?」

 

 

 人混みの中、一際大きな人が私の視界に飛び込んでくる。

 

「(あれは広瀬ちゃん。この登校ラッシュの中であの存在感とは……やはり只物ではない)」

 

 

 さっきまでコトちゃんと話していたからか、私の中の厨二心が制御出来ていない……

 

「(タカ君に聞かれたら呆れられちゃうでしょうけども)」

 

 

 鞄の中に入っている、タカ君の愛義弟弁当に視線を向け、思わず頬が緩む。もう何度も作ってもらっているけども、こういうのは何度体験しても良い物です。

 

「むっ!」

 

 

 鞄から視線を前に戻す時、私の視界に見慣れた物が飛び込んできた。

 

「(あっちで存在感を出しているのはサクラっち! この人混みの中でも目立つ大きさ……やはりタカ君の恋人候補筆頭だけある)」

 

 

 やっぱりコトちゃんの影響を受けているようで、私は教室にたどり着くまでに何とか気持ちの整理をしておこうと心に誓うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会の仕事で校内見回りをしていると、部活中の広瀬さんが走っているのが目についた。

 

「広瀬さんはやー」

 

「足で稼げそうですね」

 

 

 青葉さんと軽く話していると、会長もその話題に喰いついてきた。

 

「最後まで逃げ切ったら○万円っていうAVがあるもんね」

 

「いや、それは違うでしょ」

 

 

 ため口だけど、ツッコミの最中まで敬意を払う余裕はないし、今の会長の発言に払う敬意は無いですしね。

 

「そっか。あれは捕まってやられちゃうのがウリか。さすがサクラっち、分かってるー」

 

「こんな形で自分の評価を上げたくなかった! というか、大勢の前で何を言ってるんですか貴女は!」

 

 

 部活中という事は、当然下校中の生徒もいるのだ。会長の発言を聞いていた生徒がいたとしてもおかしくはない。

 

「大丈夫。たとえ聞かれてたとしても『あぁ何時もの事か』って思われるだけだから」

 

「……それはそれで大丈夫じゃないと思うんですけど」

 

「副会長も毎回大変ですよね」

 

「そう思うなら、少しは手伝って……」

 

 

 青葉さんに同情されたけども、会長の相手は私の仕事じゃないんだけどな……

 

「まぁまぁサクラっち、この後タカ君と会えるんだから」

 

「なんの慰めですか……」

 

「えっ? 森先輩、ついに津田先輩と付き合いだしたんですか?」

 

「いや、なにが『ついに』なのか分からないんだけど……今日は三人ともシフトが一緒ってだけ」

 

 

 そもそもタカトシ君が誰かと付き合ったとなれば、畑さんが桜才新聞特別号とか言って売り出してるでしょうし……

 

「だから、今日は早めに生徒会作業を切り上げるからね! 二人とも、覚悟しててね」

 

「会長がふざけなければ、すぐに終わるんですけどね……」

 

 

 脱線が多いのでその所為で時間がかかっているという事を自覚しているのでしょうか、この会長は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バイト終わりに義姉さんとサクラと共に近くのカフェに入る。三人シフトが一緒だった時の恒例となりつつある行事だが、何故か毎回義姉さんは楽しそうなのだ。

 

「それにしても、タカ君がいる時といない時とじゃ、お客さんの入りが全然違うよね」

 

「そうなんですか? いない時は知りようがないので、何も言えませんが」

 

「確かにそうですよね。タカトシ君がいないって分かった途端に帰るお客さんとかもいるくらいですから」

 

「それは店に迷惑なんじゃないか?」

 

 

 いれば直接注意できるが、いない時にそれをやられても注意する事は出来ないしな……というか、何で客寄せパンダになってるんだ、俺は?

 

「ところでタカ君」

 

「なんですか」

 

「今日のお弁当も美味しかったんだけど、随分と無理してない?」

 

「別に無理なんてしてませんが。何故そう思ったんですかね?」

 

 

 義姉さんにそう思われる覚えがないので、俺は素直に義姉さんに尋ねた。下手に誤魔化しても意味はないと思ったのか、義姉さんは少し考える素振りを見せてから答えた。

 

「なんていえば良いのかな……何時もよりお弁当が凝ってる感じがしたから?」

 

「そんなつもりは無いんですが……あぁ、コトミが『一回でいいから派手なお弁当が食べたい』と言ったので、彩を変えてみたりしたからですかね」

 

「タカ君のお弁当は、何時も派手だと思うけど」

 

「そうですか?」

 

 

 俺としては普通のつもりなのだが、意外と派手だったのだろうか?

 

「だって、タカ君のお弁当を食べようとすると、皆が寄ってくるから」

 

「それは単純に、会長がタカトシ君のお弁当を自慢してるからじゃないですかね? まぁ、私もタカトシ君のお弁当を持っている時は、女子から凄い見られますけど」

 

「まぁそれだけタカ君の家事スキルが凄いのと、ただでさえご縁が少ない英稜女子たちの嫉妬なのかもしれませんけどね」

 

「じゃあもう用意しない方がいいですかね?」

 

 

 下手に目立つのは避けた方がいいかもしれないし、原因を取り除けるなら取り除いた方が良いだろうしな。

 

「いえいえ、タカ君のお弁当は、そんなわずらわしさを凌駕するものですから」

 

「そうですね。女として自信を失くしそうになりますが、タカトシ君のお弁当が食べられなくなるのはちょっと嫌ですね」

 

「そんなもんか?」

 

 

 視線でサクラに尋ねると、力強く頷かれた。そんなに凝ったものを作ってるつもりは無いんだけどな。




タカトシの弁当は羨まれるでしょうね

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