桜才学園での生活   作:猫林13世

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タカトシのハイスペックさが目立つ


OGの引っ越し

 古谷先輩の付き添いで、私は今日物件巡りをしている。一人暮らしをする為に部屋を探したいのだが、一人ではよく分からないから付き合って欲しいと頼まれたからだ。

 

「こちらです」

 

「おー、いい感じじゃないか」

 

 

 まず外観が気に入ったのか、古谷先輩は今まで観てきた物件の中でも一番いい反応を見せた。もしかしたら、ここで決まるかもしれないな。

 

「……? 自動ドア、壊れてますよ」

 

「あ、いえ、オートロック……」

 

「(私のおばあちゃんも何かあると故障っていうな……)」

 

 

 感性が古いのは知っていたけども、まさかオートロックを知らなかったとは……女子大生の一人暮らしを考えている割には、防犯意識が低いんだな……

 

「なかなかいい感じの部屋だな」

 

「如何でしょう? 家賃もこれくらいですので――」

 

 

 オートロックで少し手こずりそうだが、古谷先輩の感じからすると、この部屋で決まりそうだな。そうなれば今度は引っ越しの手伝いとか頼まれそうだし、生徒会メンバーに招集を掛けるかもしれないという旨のメールだけは送っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シノさんから言われた通り、俺たちは今日古谷先輩の引越しの手伝いをする為に新しく借りた部屋に集まっていた。

 

「――というわけで後輩共、悪いが手伝ってくれ」

 

「いいですよ~」

 

「一人暮らしですか、憧れますね」

 

「そうだな。大人な感じがするもんな」

 

「それは暗に、私が子供っぽいと言ってるんですかね?」

 

「そ、そんな事は意図してないからな!?」

 

 

 スズとシノさんが何やらもめてるようだが、俺はさっさと帰りたいので片づけを開始する。それにしても、特に気にする事もなく男の俺に荷解きをさせるのはどうなんだろう……まぁ、俺も俺で気にしないでやってるからお相子なのかもしれないが。

 

「古谷先輩、これはどちらに?」

 

「あー、それはあっちにお願い」

 

「分かりました」

 

 

 勝手に運んで後で分からないと文句を言われたくないので、ある程度古谷先輩に配置場所を聞いて運ぶので、あまり効率は良くない。というか、シノさんとスズがまだ言い争っているので、作業の進みが遅いことこの上ないのだ。

 

「先輩、この箱って開けてもいいんですか~?」

 

「あぁ、それは人前で穿くやつだから問題ないぜ」

 

 

 アリアさんはまともに働いてくれているので、まだ救いかもしれない――

 

「あっ、このパンツ可愛いですね~」

 

「だろ? 人に見せる奴だからちょっとかわいいのを買ったんだ」

 

「あの『見せパン』ってそういう意味じゃないと思うんですが……」

 

「えっ? だって昔七条から聞いた話だと――」

 

 

――前言撤回……これなら一人で片づけてた方が早く終わるかもしれないな……

 

「ん? ぎゃっ、ゴキブリ!」

 

「た、タカトシ! 何とかしてくれ!」

 

「はぁ……」

 

 

 食器を包んでいた新聞紙を束ねゴキブリを潰し、騒がしくならない内に処理をする。というか、誰か他に処理できる人はいないのか?

 

「わ、私には一人暮らしは難しそうだ……」

 

「私もです……」

 

「ゴキブリ一匹で一人暮らしを断念するなよな……」

 

 

 古谷先輩は殺虫剤を構えてはいたが、結局は腰が引けているように見えたし、今後現れたらどうするつもりなのだろうか……

 

「あれ? このパンツ男の子のじゃ……」

 

「あぁ、それは天草から聞いたんだ」

 

「防犯用ですね」

 

「そうだったんですか。てっきり古谷先輩は男の娘だったのかと思っちゃいましたよ~」

 

「口じゃなくて手を動かせ手を」

 

「そういえば引っ越し祝い用にそば打ちセットを貰ったんだが、誰が作る?」

 

「一番の適任はタカトシですね」

 

 

 そんなの出前で済ませればいいのに……俺はある程度片付けに目途をつけてからキッチンに移動し、随分と本格的なそば打ちセットを見てため息を堪えられなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 津田君がほぼ一人で片づけてくれたお陰で、随分とすっきりした部屋になった。私一人だったら一週間は片付かなかったかもしれないな。

 

「相変わらずハイスペックな後輩だな」

 

「とっても助かってますから」

 

「よく発掘したな」

 

「こう、ビビっと来たんですよ」

 

「あの時は人手不足で何となく声を掛けた人を勧誘したんじゃなかったっけ?」

 

「こらアリア!」

 

 

 七条にあっさりと曝露されて、天草は恥ずかしそうに七条の口を塞ぎにかかる。そしてまた二人で追いかけっこが始まり津田君から物凄い視線を向けられている。

 

「お前ら、一応先輩だよな?」

 

「タカトシに逆らえる人間なんてそうそういませんって……」

 

「あれは視線だけで人を殺せますよ……」

 

「だから大人しくしてなさいって言ったんですよ」

 

 

 萩村からも怒られ、二人はシュンとしてしまう。というか、今の生徒会メンバーは後輩が実権を握っているのか?

 

「出来ました」

 

「おぉ、さっそく食べよう!」

 

 

 津田君が用意してくれたそばで何とか誤魔化した私は、一口啜り女としての自信を失いそうになった。

 

「これ、凄く美味いな……店で食べてるみたいだ」

 

「手順通りにやれば、これくらい誰でも出来ると思いますけど?」

 

「いや、その考え方はおかしいと思うぞ……少なくとも、私には難しいだろうからな」

 

「そうですかね?」

 

 

 さすが天草が「主夫」と呼んでいるだけあって、家事スキルはかなり高いようだな……これなら七条が「嫁に欲しい」と言うのもうなずける……




一日早いですが、メリークリt――(タカトシに蹴り飛ばされる)

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