桜才学園での生活   作:猫林13世

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普通は首が取れるとかなんでしょうけども


マスコットのハプニング

 パワースポット巡りでは結局効果があったのかどうかは分からないけども、こういう事は信じる事に意味があると思うので、私は神社で買った御守りを鞄に括りつけた。

 

「あっ、その御守り」

 

「はい?」

 

「サクラっち、買ったんだ」

 

「えぇ、せっかくですから」

 

 

 お賽銭の後でもいろいろとタカトシ君との関係を邪推されからかわれそうになったけども、タカトシ君が一睨みするとその場では大人しくなってくれた。でもタカトシ君の目が届かない場所でいろいろと疑惑の篭った視線を受けた身としては、神頼みでもして何とかしたいのだ。

 

「持ってると運気が上がるらしいので、物は試しで買ってみました」

 

「早速効果が出てると思うよ」

 

「どういうことで――」

 

「サクラっちのラッキースケベ運が上がってる」

 

 

 会長の視線を辿ると、私の鞄がスカートの裾をまくり上げている。

 

「ぐわぁ!」

 

「よかったね、タカ君がいない時で」

 

「た、タカトシ君は関係ないですよ!」

 

「でもサクラっちのパンチラなら、さすがのタカトシ君でも動揺するんじゃないかな? 私がやってもゴミを見るような目で見られるだけだろうけど」

 

「……なんで若干嬉しそうなんですか?」

 

「本格的にMに目覚めそうだから?」

 

「何で疑問形? そして私に聞かれても知りませんよ」

 

 

 会長の性癖が変わりそうだと聞かされた私は、いったいどんな反応をするのがせいかいだったんだろうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 桜才学園のマスコットキャラとして開発していたさくらたんが正式採用となり、今日が本格的なお披露目となる。

 

「以前畑に乗せられて軽くお披露目はしたが、全校生徒に向けてのものじゃなかったからな」

 

「そもそも私は、こんな企画が進められていた事自体初耳なんですが」

 

「そうだったか? だが学校が認めてくれているんだから、今更予算云々で却下は出来ないからな?」

 

 

 理事長や横島先生、そして宣伝してもらう為に畑には話しておいたが、そう言えば生徒会メンバーには話してなかったんだっけか……まぁ、以前タカトシに試着してもらう為に話したが、あの時は誰もいなかったんだっけか。

 

「おまたせー、さくらたんの準備出来たよ~」

 

 

 別室で着替えていたタカトシと、それに付き添っていたアリアが生徒会室に入ってきて、とりあえず萩村からの追及の視線は止んだ。

 

「随分と本格的ですね」

 

「前に一部の生徒の間で噂になってたのってこれだったんだね~。やっと実物を見られたよ~」

 

 

 アリアと萩村が興味津々にさくらたん――に扮しているタカトシを眺める。

 

「それじゃあ、さっそくお披露目と行こうか!」

 

 

 気合十分に宣言をして、私たちは体育館へと向かう。全校集会でさくらたんを披露すると、殆どの生徒が「かわいー」と興奮しており、一部のマイナーな生徒からは、性的な目を向けられている。恐らくそういう趣味の奴らだろう……

 

「シノちゃん、獣○趣味を否定したら可哀想だよ?」

 

「まぁ、性癖は人それぞれだしな……」

 

 

 一通りタカトシが動いてみせると、全校生徒だけでなく教師陣からも感嘆の声が漏れる。まぁアイツの身体能力ならあれくらいは出来るだろうけども、着ぐるみを身に付けながらバク転って、どれだけ運動神経が良いんだ……

 

『以上、生徒会長考案、桜才学園公認キャラクターさくらたんでした』

 

 

 司会進行の五十嵐が終了の合図を出すと、タカトシ――さくらたんは手を振って体育館から退場していく。その際惜しみなく拍手が送られ、私はこの企画の成功を実感したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会室に戻り着ぐるみを脱ごうとして、俺は問題が発生している事に気付く。

 

「ファスナーが壊れて脱げなくなってます」

 

「なにっ!? タカトシがバク転なんてしたからじゃないのか?」

 

「あの程度で壊れたりはしないと思いますが……」

 

 

 ファスナーと連動しているのか、頭も外せずに途方に暮れる。とりあえずシノ会長が裁縫道具を取りに行ったので、それまではこの格好で過ごすしかないのか……

 

「水分、いる?」

 

「あぁ、ありがとう」

 

 

 視界は狭いが見えないわけではないので、俺はスズが差し出したストローからお茶を啜る。何かは見えなかったが、中身はほうじ茶だったのか。

 

「タカトシ君、トイレ平気? したくなったらこのカテーテルで――」

 

「この格好でも説教は出来るんですが?」

 

「ゴメンなさい」

 

 

 何処から取り出したのかは知らないが、学校に不要なものを持ち込んだらカエデさんに怒られるし、そんな発言をすれば俺に怒られると思わなかったのか? まぁ、少し威圧すれば大人しくなってくれるので、最近はあまり疲れずに済んでるんだが……

 

「待たせたな!」

 

「会長、早いところ修理してやってください。七条先輩が余計な事を言って、タカトシをこれ以上怒らせないためにも」

 

「……何を言ったんだ?」

 

 

 シノ会長が不思議そうにアリアさんに視線を向け、小声でアリアさんが告げると納得したように頷いてから、すぐに修繕作業に取り掛かってくれた。

 

「とりあえず、これで脱げるはずだ」

 

 

 ファスナーを下ろしながらシノ会長がゆっくりと頭を外す。特に息苦しさは無かったが、やはりこうして肌に直に空気を浴びる方が気分が良いな。




アクロバティックマスコット……

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