桜才学園での生活   作:猫林13世

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信じる者は救われる、みたいな感じなんですかね……


パワースポット巡り

 シノっちと前々から計画していた、新制英稜生徒会と桜才生徒会との外部交流会として、今日は八人で行動する事にした。

 

「「第一回、パワースポット巡り!!」」

 

「わー」

 

「七条先輩しか盛り上がってませんよ」

 

 

 私たちの宣言に反応を示してくれたのはアリアっちだけ。青葉ちゃんと広瀬ちゃんの一年二人は拍手してくれているが、二年生トリオは冷たい反応だ。

 

「きょ、今日は訪れると良い感じになるという神社に行くぞ」

 

「また曖昧な」

 

 

 確かにどのように「いい感じになるのか」分からない表現だけども、女の子はそういうのでも反応してしまうんだよね……あっ、タカ君は男の子だった。

 

「せっかくだし、タカ君も男の娘になる?」

 

「ふざけた事ぬかすなら、ここで永眠させてあげましょうか?」

 

「じょ、冗談ですよ。タカ君もそれくらい分かるでしょう?」

 

 

 とてつもない殺気を浴びせられ、私は慌てて冗談という事にした。

 

「あの先輩、物凄い怖いんですね」

 

「普段は優しいんだけどね。怒らせるとああなるから、広瀬さんも気を付けてね」

 

「うっす」

 

 

 私が怒られている横で、サクラっちが広瀬ちゃんにタカ君との正しい付き合い方をレクチャーしている。

 

「とりあえずこの階段を上るぞ」

 

「お先にどうぞ」

 

「ありがと」

 

 

 広瀬ちゃんがスズポンを先に行かせている。普通に考えれば階段のマナーを理解していると思うのだろうけども、どうも違う理由がありそうなんだよね……

 

「IQ180ってマジすか?」

 

「あっ、やっぱり」

 

 

 広瀬ちゃんはスズポンに対して敬意を払って先行させたのではなく、目線合わせやすくしたくて先行させたようだ。まぁ、広瀬ちゃんとスズポンの身長差を考えれば、それくらいしないと話しにくいんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先輩たちはずんずんと先に上り、広瀬さんは萩村さんとお喋りしながら上っているのを、私とタカトシ君は一番後ろから見守りながら階段を上っている。

 

「何で俺たちが引率的立ち位置なんだか」

 

「まぁまぁ、この面子を見たらタカトシ君が引率的立ち位置でも仕方ないと思うけど?」

 

 

 学年で言えば魚見会長、天草さん、七条さんの方が上だが、あの三人がしっかりと引率の役目を全うするかと聞かれれば首を傾げてしまう。それなら学年は下だがタカトシ君の方がしっかりと引率として機能しそうだし。

 

「それにしても、いきなりパワースポット巡りとは、何を考えているんだか」

 

「流行に乗っかりたかっただけじゃないかな? 魚見会長はそういうところがありますから」

 

「シノ会長もそんな感じだしな……じゃあなぜ生徒会を巻き込んだんだ? 二人で行けばいいものを」

 

「まぁまぁ。交流会の延長だと思えばいいんだよ」

 

 

 実際そういう目的で集められたわけだし、恐らく二人で巡るのが恥ずかしくて私たちを巻き込んだんだろうけども、運動代わりにもなるからちょうどいい。

 

「どうかしたのか?」

 

「えっ?」

 

 

 急にタカトシ君に尋ねられ、私は思わず首を傾げる。彼にしては珍しく何の脈略もなく問われたので、私でなくても首を傾げただろう。

 

「歩幅が少しずつではあるが小さくなっているから、疲れたのかと思って」

 

「別に疲れてはないんだけど、ちょっと足が痛くなってきたなって思って。靴擦れしそうなのかな」

 

 

 新しい靴ではないけども、階段を上るつもりは無かったので運動靴ではないので、少し擦れてきたのかもしれない。

 

「靴にリップクリームを塗ると良いらしいから、ちょっと貸して」

 

「あっ、うん」

 

 

 ちょうど頂上に到着したので、私はタカトシ君に靴を手渡す。こういう事を予期していたのかは分からないけども、タカトシ君は未使用のリップクリームを取り出し私の靴に塗ってくれた。

 

「これで少しはマシになるとは思うが、無理はしない方が良いと思う」

 

「大丈夫だよ。ありがとう」

 

 

 タカトシ君から靴を受け取ったところで、私は複数の視線に気付き顔を上げる。

 

「あれで本当に付き合ってないんすか?」

 

「無自覚ラブコメコンビだから仕方ない」

 

「シノちゃん、血涙を流しながら言わなくても」

 

「そういうアリアっちだって、拳に血管が浮いてますよ」

 

 

 広瀬さんの問いかけに上級生三人が怖い顔をしながらこちらを睨みつけていた。というか、何で私とタカトシ君が付き合ってるって思ってるんだろう。

 

「ほ、ほら! せっかく神社に来たんですから、お参りしていきましょうよ」

 

「なんか誤魔化しだしたけども、確かにそうだな」

 

 

 私の言葉に納得しきれない部分はあったのかもしれないが、何とか興味を逸らす事に成功した。

 

「あっ……」

 

「どうかしたのか?」

 

「小銭、十円しか入ってなかった……遠縁になっちゃう」

 

「なら共同で入れるか。俺の十五円と足して、二重のご縁で」

 

「あっ、ありがとう」

 

 

 こういう事をさらっとできるから、タカトシ君は人気なんだろうな……

 

「奇数の賽銭ってカップルがやる事らしいですよ。割り切れない関係って意味で」

 

「あっ、やっぱり付き合ってたんすか」

 

「だから違うって!」

 

 

 力いっぱい否定するのも何だか悲しいけども、勘違いされたままにしておくと面倒な事になりそうなので、私は広瀬さんの誤解を解くことに全力を注ぐ事にした。




無自覚ラブコメコンビが目立ったな……

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