桜才学園での生活   作:猫林13世

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もう何度もやってるだろうに


乙女の悩み事

 もうすぐバレンタインということで、学校中がそわそわし始めている。でも大抵の男子は貰う事は出来ないだろうな……何せこの学校には我が兄にして生徒会副会長、加えて大勢の人を感動させるエッセイの作者であるタカ兄が在籍してるから……

 

「コトミ、また変な事考えてる?」

 

「別に変な事じゃないよ。ただ男子たちがそわそわしても、タカ兄に勝てるわけ無いからもらえないんだろうなーって」

 

「そんな事考えてる暇あるの? 平均七十点越えしないといけないんでしょ?」

 

「お、お義姉ちゃんのお陰で、六十五くらいは採れるようにはなってるから……」

 

 

 もちろんそれが平均ではなく、何教科でという話なので、ここから後十点以上平均を上げないといけないのだ……

 

「まぁ、その前にバレンタインがあるから、お義姉ちゃんのお勉強講座はお休みになるんだけど……その分タカ兄が厳しくなりそうで今から怖いよ……」

 

「普段からちゃんとしてないからでしょ? 津田先輩、そんなに怖い人じゃないし」

 

「それはマキがタカ兄に怒られるような事をしてないからでしょ!」

 

「いや、そもそも怒られたくないし」

 

「ごもっとも……」

 

 

 私だって出来る事なら怒られたくないし、タカ兄の負担になりたくはない。だがそう思うだけで実行出来る程、私には実力が無いのだ……

 

「というか、コトミがちゃんとしてたら、津田先輩にだって彼女がいてもおかしくないんじゃない? まぁそれは、中学の時からなんだけど」

 

「そうだね。例えば、マキとか?」

 

「わ、私はあくまでも後輩の一人でしかないから!」

 

「あーあ……また物凄いスピードで走ってっちゃった……」

 

 

 何時まで経っても純情なままで、マキはからかうと大変だなぁ……

 

「おい、今マキが物凄いスピードで走ってったんだが」

 

「うん、何時もの」

 

「お前も懲りないな」

 

「私の所為なの?」

 

「お前が兄貴関係でマキをからかわなければ、あんなにダッシュする必要は無いわけだろ?」

 

「うん、そうだね……」

 

 

 私としては冗談ではなく、結構本気でマキの恋路を応援しているんだけどな……まぁ、同時に最前線で邪魔してるのも私なんだろうけども……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会作業をしていてもどうしてもあの日の事が頭を過り、私は何時もならしないミスを連発している。

 

「会長、何か不安でもあるのですか?」

 

「実は、バレンタインチョコをどうやって渡そうかと思って……」

 

「タカトシ君にですか? しょっちゅう家に通ってるんですから、そのついでに渡せばいいのではないでしょうか?」

 

「簡単に言ってくれますね、サクラっち……ことはそう簡単ではないから悩んでるんじゃないですか」

 

「だって、会長って本気でタカトシ君の事が好きなのか、イマイチ分かりませんし……」

 

 

 確かに私はタカ君の事を義弟として好きだとはっきり言い切る事が出来るが、異性としてどう思っているのかと聞かれれば、答えに窮するかもしれない。もちろん好きなのだが、最近は異性としてというより家族としてという感情が大きくなってきているのは確かだ。

 

「そういうサクラっちは、どうやって渡すんですか? もしかしてチョコと一緒にサクラっちの初めてまで――」

 

「そういうのは良いんで」

 

「ちぇー」

 

 

 最近サクラっちの付き合いが悪くて、ちょっと寂しいですけども、冗談でも言わなければこの気持ちに押しつぶされそうなのでもう少し付き合って欲しかったな……

 

「コトちゃんの面倒を見てるから、タカ君の懐に飛び込むチャンスはいくらでもあるんですけども、邪な気持ちがあるとタカ君にバレてしまいますから」

 

「そもそも、物理的に飛び込む必要はありませんよね?」

 

「なんですか? 『タカ君の胸は私の特等席!』とでも言うつもりですか?」

 

「そんな事を言うつもりはありませんが……というか、何でそんな事を思ったんですか?」

 

「いや、ちょっと嫉妬キャラを確立させようかと思って」

 

 

 ただでさえ本妻に一番近い位置にいるのだ。ちょっとはマイナス面を見出さないとシノっちの心の平穏が保てないしね……

 

「兎に角! タカ君に渡すチョコの事と、どうやって渡せばいいのかが気になって作業に集中出来ません」

 

「ハッキリ言ったな……乙女として不安になる気持ちは分かりますが、生徒会長としての職務を全うしてください」

 

「サクラっちは余裕でいいよね……絶対に断られることは無いだろうし」

 

「いや、会長たちのだって、タカトシ君は受け取ってるじゃないですか。お礼もちゃんとくれてますし」

 

 

 タカ君の凄いところは、貰った相手を全員覚えていて、それぞれ違うお返しを渡しているところだ。同じクッキーにしても、ラッピングが違ったり形が違ったりと、一つとして同じものが無いという噂だ。

 

「あきらかな義理チョコにでも、ちゃんとお返ししてるのがタカ君の凄いところだよね。お義姉ちゃんそういうところ尊敬しちゃう」

 

「はいはい。そういうのは良いんでこの書類にハンコください」

 

「ツッコミが事務的になってる……」

 

 

 実際事務作業中だから仕方ないのかもしれないけど、サクラっちのツッコミに冷たさを感じてしまった。やっぱりタカ君の事を私が話すのが気に入らないのかしら……




それでも慣れないのは仕方がない事なのだろうか……

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