桜才学園での生活   作:猫林13世

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五月蠅いのは困りますからね


天草家へ

 今日は生徒会作業が多いので集中しなければ終わらない。だが学校の近くで工事をしているので、さっきから凄い音が聞こえてくる。

 

「前から決まっていたことだから仕方ないが、この工事の音では作業に集中出来ないな」

 

「そうだね~」

 

「誰かの家でやりますか?」

 

 

 タカトシの提案に、私たちはその方が作業が捗るだろうと思った。だが――

 

「んー、ウチは都合が悪いな」

 

「ウチも今日はお客さん来てて……」

 

「タカトシの家は?」

 

「コトミが義姉さんに泣き付いて必死になって勉強中です」

 

「あぁ……」

 

 

 この間流れで私がぽろっと言ってしまった事が原因で、コトミは次のテストで平均七十点以上採らないとゲーム没収になってしまったんだっけか……

 

「じゃあ私の家に来るか? ウチは防音対策バッチリだからな」

 

「そうなんですか?」

 

「あぁ! 完璧すぎて『そんなに激しくされたら隣に聞こえちゃう』プレイが出来ないって、昔母が愚痴っていたくらいだ!」

 

「え、何だって?」

 

「あっいや……何でもないぞ」

 

 

 ついウチにみんなが来るのが嬉しくて昔の癖が出てしまった……というか、相変わらずタカトシの視線は鋭過ぎるなぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何時もならタカトシの家で作業するんだろうけども、今日は会長の家にやってきた。考えてみれば、会長の家に来るのって初めてかもしれない……

 

「津田家や七条家にはいったことありますが、何故会長の家は来た事無かったんでしょう?」

 

「ウチの両親は在宅の仕事をしているからな。何時もなら家にいるんだが、今日は出かけていないから招くことが出来たんだ」

 

「そうだったんですね」

 

 

 ご両親がいたからと言って部屋で作業するのだから問題ないと思うんだけどな……でもまぁ、ウチで作業した場合、お母さんが部屋にやってきて余計な事を言ったりするから、会長の家でもそうなんだろうって事で納得しておこう。

 

「シノさん、なんだかテンション高いですね」

 

「フフフ。鍵っ子って自立心刺激されてカッコいいだろう?」

 

「そうですかね?」

 

「というか、会長以外家の鍵を持ち歩いていますし、気持ちを共有出来ないんですが」

 

「私は持ってないよ~?」

 

「いや、アリアさんは出島さんが迎えに来てくれるんですから、必要ないでしょうが……」

 

 

 お嬢様である七条先輩が家の鍵を持ち歩いてるとは思ってないから気にしなかったんだけど、どうやら仲間外れにされて不満の様子……

 

「というか、萩村だって母親が家にいるんだから、鍵を持ち歩くことなんて無いんじゃないのか?」

 

「いえ、ウチの親はしょっちゅうどこかに行くので、鍵を持ってないと締め出しを喰らう事があるので」

 

「何処に出かけてるんだ?」

 

「さぁ……」

 

 

 恐らくろくでもない事をしてるんだろうけども、それを知りたいと思った事はない。一度ボアの散歩途中で出くわして知りたくもない事を聞かされたこともあるし……

 

「てっ、会長アヘマルシリーズのぬいぐるみ持ってるんですね」

 

「あっ! 片付けるの忘れてた……」

 

 

 別に恥ずかしいものではないと思うんだけど、会長はぬいぐるみを見られて恥ずかしそうにしている。

 

「シノちゃん、可愛いのに目がないからね~」

 

「そうだったんですね」

 

「あ…あ…恥ずかしいからもっと見て……あ、いや、見ないで!!」

 

「……今、本音でた?」

 

 

 つい本音が出た会長を、タカトシが呆れた顔で見つめていたのが印象的だったな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かなりの量だったので、終わった頃にはだいぶ時間が過ぎていた。

 

「もうこんな時間だったんですね」

 

「ホントだ~」

 

「せっかくだから夕食を食べていくと良い」

 

「でも迷惑では?」

 

 

 ウチのようにしょっちゅう来客がある家ではないだろうから、食材に余裕があるとは思えないし……

 

「言っただろ? 今日は私しかいない。気を遣う事はない」

 

「ひょっとして、一人じゃ寂しいんじゃ……」

 

 

 アリアさんのセリフに、俺とスズは納得した。シノさんは意外と寂しがりやなところがあるからな……

 

「いーから食べてくの!!」

 

 

 シノさんの勢いに負け、俺たちは夕食をご馳走になる事にした。といっても、作るのは俺なんだが……

 

「シノさん、冷蔵庫の中にある物は使ってもいいんですよね?」

 

「あぁ。特に使ってはいけないものはないから、タカトシの好きに使ってくれ」

 

 

 シノさんから許可をもらい、俺は冷蔵庫の中を見てメニューを考える。

 

「(最低限のものは揃っているから、とりあえず人数分を作るには困らないな……)」

 

 

 これがウチの冷蔵庫なら、どれが何時買ったものか分かるんだが、人の家の冷蔵庫じゃそこまでは分からないしな……ましてや冷凍してある食材もあるし……

 

「(まっいっか……何かテキトーに作れば)」

 

 

 栄養バランスを考えて必要な食材を出したところで、玄関から音が聞こえてきた。

 

「あれ、母さん。帰り早いね……あっ、今キッチンには後輩のタカトシが……いやいや、二人きりじゃないから!」

 

「(さすがシノさんの母親なだけあるな……)」

 

 

 何やら盛大な勘違いをしているようだが、ここで顔を出して面倒に巻き込まれるのもあれだし、さっさと作ってしまおう……

 料理が完成して食卓に運ぶと、お母さんから「何時でも婿に来てくれていいから」と言われ、シノさんは真っ赤になり、アリアさんとスズは不機嫌さを隠そうともしなかった……




母も盛大に勘違い……

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