桜才学園での生活   作:猫林13世

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気遣ってるのかどうかは微妙


コトミの気遣い

 タカ兄とお義姉ちゃんが同時にバイトの日だったので、私の課題の監視は生徒会メンバーが担当する事になった。別に監視なんていなくてもちゃんとやるのに……

 

「かいちょー、ここなんてすが」

 

「あぁ、そこはだな――」

 

 

 まぁ、こうして会長たちがいてくれるから、分からない場所を聞けるんだけどね。

 

「それにしてもコトミ、最近は頑張ってると聞いていたが、あくまでもタカトシやカナがいるお陰なんだな」

 

「勉強しようと思うだけ成長だと思ってくださいよ~。前までの私だったら、課題なんてやらなくても何とかなる! とか考えてたでしょうし」

 

 

 自分で言っていながら、過去の私は本当に考えなしだったんだな~って痛感する……タカ兄が私の事を見捨てようとするのも何となく理解出来る……

 

「……よし! 終わりました~!」

 

「お疲れ様~」

 

「コトミの事だから、もう少しかかると思ってたわ」

 

 

 スズ先輩の言葉に疑問を覚えた私は時計を見る。確かに課題を初めてまだ三時間ちょっとだし、前までの私なら夜になっても終わってなかっただろう。

 

「ありがとうございました! それじゃあ、後は一人で留守番出来ますから」

 

 

 課題が終わったのでもう会長たちにいてもらおう必要は無い。あんまり遅いとスズ先輩のお母さんはお赤飯を炊くらしいから、早いところ帰ってもらった方が良いだろう。

 

「いや、外猛吹雪で電車停まってるんだ」

 

「私が知らない間にっ!?」

 

 

 会長に言われて窓の外を見て、私は随分と自分が集中していたんだと思い知る。まさか、ゲーム以外でもここまで集中出来るなんて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何とか帰ってこれたが、コトミの面倒を見ていたシノさんたちは無事に帰れたのだろうか。そんな事を考えながら玄関に入り、三人の靴があるのを見て状況を理解した。

 

「あっタカ兄、お帰り~」

 

「ただいま。先輩たちは帰れなくなったのか」

 

「課題が終わったのが五時前だったからね。私の知らない間に猛吹雪になってたみたい」

 

「そこまでなる前に帰ってもらえれば良かったんだがな……さすがに今から帰れとは言えないし」

 

 

 義姉さんもこっちに来たがってたけど、あそこからならこっちより義姉さんの家の方が近いので送り届けてから帰ってきたからな……さすがに三人を送り届けるのは大変だし、今日は泊まってもらった方が良さそうだ。

 

「それで、先輩たちは?」

 

「冷蔵庫の中をのぞいて何を作るか話し合ってたよ。私は戦力外だって言われて……」

 

「まぁ、今のお前を台所に入れたところで、役に立つとは思えないが」

 

 

 課題で疲れ切っているので、何時も以上に気怠そうなコトミを見て、先輩たちの判断を支持する。しかし普通ならよそ様の家の冷蔵庫を開けるのは躊躇われると思うんだが、先輩たちも随分とウチに慣れているという事か。

 

「先輩たちに今日は料理を任せて、タカ兄も休んだら? この吹雪の中を帰ってきたんだし」

 

「そうだな……風呂の準備をして部屋の掃除をしてエッセイの手直しが終わったら休むとするか」

 

「全然休んでないじゃん! お風呂の準備と部屋の掃除は私がするから、タカ兄は自分の部屋で休んでて!」

 

「あ、あぁ……」

 

 

 まさかコトミに怒られるとは思わなかった……心配させてしまったのは反省するとして、コトミが自分から手伝うと言い出したことを喜ぶとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 玄関からコトミの剣幕が聞こえてきたかと思ったら、掃除機を持ったコトミがリビングを掃除し始める。

 

「どうかしたの?」

 

「吹雪の中帰ってきたタカ兄が掃除をするとか言ったので、私が代わりにやるから部屋で休んでてってお願いしたんです」

 

「朝からバイトだったから仕方ないかもしれないけど、リビングを散らかしてるのってコトミよね?」

 

「反省します……」

 

 

 タカトシならバイト前に掃除くらい済ませられそうだけど、掃除した後にコトミが散らかしたのを見通してたから掃除するといったのではないだろうか……

 

「あっ、タカ兄から料理はお願いしますって伝言があります。本当なら自分がやるべきなのにって、凄く気にしてましたが」

 

「アイツはいろいろと背負い過ぎなのよ」

 

 

 たまには私たちを頼ってくれればいいのに、こちらから申し出ないと頼ってくれないのだ。そりゃ私たち三人が束になったところで、主夫であるタカトシに敵わないのは分かってるけどさ……

 

「それで、そのタカトシは?」

 

「タカ兄なら、部屋でエッセイの手直しをするって言ってました。身体を動かさなくてもいい作業なので許可しましたけど、本当なら何もせずに休んでもらいたかったんですけどね。エッセイだけはファンが大勢いるので、私個人の感情で止めるわけにはいきませんから」

 

「畑さんの収入源になってるのが気になるけどって言ってた気がするけど、タカトシは律儀だからね」

 

 

 私たちもタカトシのエッセイのファンなので、発行中止になると悲しい気分になる。だからコトミちゃんの配慮に感謝しているのだが、確かにタカトシには完全に休んでもらいたいって気持ちもあるのよね。

 

「それじゃあ、私は料理に戻るわね」

 

「はい! あっ、お泊りは許可してもらってますけど、さすがに今日は三人とも客間でお願いします」

 

 

 タカトシを休ませたいという気持ちが強いのか、今のコトミちゃんからは有無を言わせない感じが強い。まぁ会長たちには私から事情を説明しておきましょう……




まだ台所には入れない

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