桜才学園での生活   作:猫林13世

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はしゃぐ気持ちが分からない


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 冬休み明けのテストも無事合格して、私はほっとした気持ちでお昼休みを過ごしていた。

 

「まさか私にあんな点数を取るポテンシャルがあったとは」

 

「津田先輩が必死になって詰め込んでくれたお陰でしょ? コトミだけの力ならきっと、また赤点ギリギリだったと思うよ?」

 

「最近マキも手厳しくなってきたよね……私だって少しは成長してるんだから、私だけの力だって――」

 

「思わない」

 

「せめて最後まで言わせてよ……」

 

 

 親友にぶった切られて、私は机に突っ伏す。まぁマキとは長い付き合いだから、私がどれだけ不真面目かを知られてるから仕方ないんだけどさ……

 

「あれ? トッキーは?」

 

「部活のミーティングがあるって言ってたけど。そう言えばコトミって柔道部のマネージャーじゃなかったっけ?」

 

「ミーティングは放課後だけど?」

 

 

 私は手帳に書かれたミーティングの予定をマキに見せる。そこには確かに「放課後ミーティング」と書かれており、マキも首を傾げた。

 

「……もしかして、何時ものドジっ子?」

 

「それか、コトミが予定を書き間違えたか」

 

 

 その可能性を考えてなかった私はすぐに主将に電話で確認する。

 

『はい?』

 

「ムツミ先輩、ミーティングって放課後ですよね?」

 

『そうだよー。それがどうしたの?』

 

「いえ、トッキーが昼休みにミーティングだっていって何処かに行っちゃったんで……あっ、帰ってきた」

 

 

 ムツミ先輩と電話してすぐトッキーが帰ってきたので、私は先輩にお礼を言って電話を切る。

 

「トッキー、私に確認してくれれば良かったのに」

 

「いや、コトミほど信頼出来ない奴もいないだろ……この間の遠征の弁当だって、兄貴に作らせてたし」

 

「わ、私だって手伝ったんだよ! ……まぁ、卵割ったり焼き具合を確認したりだけだけどさ」

 

「相変わらず津田先輩にマネージャー業をさせてるのね」

 

「私だって頑張ってるけど、料理だけは一向に成長しないんだよ……」

 

 

 そもそも何度も匙を投げられた分野だから、大失敗しなくなっただけでも成長なんだけど、それで満足してたら駄目だって事は私だって理解してるつもりだ。

 

「まぁとりあえず、トッキーはドジっ子だな~」

 

「うるせぇよ! というか、マネージャーなら私の勘違いを正せよ」

 

「だって、気付いたらトッキーいなかったし」

 

 

 ドジっ子を私の所為にされても困るんだけどな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 津田家の大掃除を手伝った時から、カナの携帯の待ち受け画面がタカトシの幼少期の写真に変わっている。携帯の待ち受けは個人の自由かもしれないが、何となく抜け駆けされている気がしてならない……

 

「――というわけで、もう一回あのビデオを見て、私たちも写真に収めようじゃないか」

 

「私は前に畑さんに幼少期の写真のデータを貰って持ってるから~」

 

「そういえばそんな事もあったな……」

 

 

 あれは確か、生徒会役員の幼少期の写真を新聞に載せるとかいう企画でタカトシが持ってきた写真をデータとして保存し、裏で販売していたんだっけか。

 

「そもそも何度も見せるものじゃないと思うんですが」

 

「だがな、タカトシ。カナばっかりお前の子供時代を楽しめるなんてズルいと思わないか!」

 

「いや、それを俺に問われても……」

 

 

 タカトシとしてはあまり見られたくない物のようだし、本人に聞いても仕方無かったか……だがこの気持ち、萩村なら分かってくれるだろう。

 

「萩村だってもう一度観たいよな!」

 

「わ、私はどっちでも……」

 

「視線が明後日の方を向いているぞ? 普段物事をはっきり言うお前らしくないじゃないか」

 

「み、観たい…です……」

 

「もっとはっきりと! 萩村はいったい、何を観たいんだ?」

 

「た、タカトシのちっちゃい頃のビデオ、もう一度観たいです!」

 

「(ロリ会計、副会長のちっちゃいモノを視たい、っと……)」

 

「アンタは懲りないですね?」

 

 

 私が萩村をからかって遊んでいると、どうやらドア越しに聞き耳を立てていた畑をタカトシが捕まえていた。

 

「畑、何だこのメモは! そもそもタカトシのが小さいわけ無いだろ!」

 

「そうだよ~。見た事無いけど、タカトシ君のは立派だってコトミちゃんが言ってたし」

 

「何の話をしてるんですかね?」

 

「あっ……とにかく畑! 今後新聞部を潰されたくなければ、捏造記事を書くのは止める事だな」

 

「分かりました。さすがに部活を潰されてしまったら何も出来ませんから……」

 

 

 畑を追いやって誤魔化そうとしたが、タカトシからは鋭い視線が向けられ続けている。私は何とか話題を変えようと頭をフル回転させる。

 

「な、なにか別の案が降ってこないものか……」

 

「あっ、会長。雪が降ってきました」

 

 

 窓の外に視線を向けると、確かに白い物が空から降ってきている。

 

「そうだ! 確か雪合戦大会があったな!」

 

「もしかして参加するつもりなんですか?」

 

「地域の人との交流も出来るし、運動にもなる。寒くて引き篭もりがちで運動不足な今の状況にピッタリのイベントじゃないか! 早速積もったら練習だ!」

 

「おー!」

 

「……こうなった会長は止まらないからなぁ」

 

「諦めましょう……」

 

 

 ノリノリなアリアとは対照的に、タカトシと萩村は何処かめんどくさそうな感じだが、私は参加する事を決めたのだ。これは変更しないからな。




コトミの何処を信用しろというのか……

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