学園祭当日、眠い目を擦りながら開催の宣言を済ませた私は、ウオミーとの待ち合わせ場所に向かった。
「会長、目の下に隈が出来てますよ」
「そう言う津田こそ、随分と眠そうじゃないか」
私の隈を指摘した津田だが、私以上に濃い隈があった。
「実は昨日作業が間に合わないって事で遅くまで借り出されてまして……その後家でコトミの勉強を見てたら何時の間にか朝になってまして……」
「す、スマン!」
「会長?」
私は楽しみで眠れなかっただけなので、前日まで忙しく働いていた津田の隣に居るのが恥ずかしくなって、私はウオミーのところまで駆け出した。
「おやシノッチ、そんなに急いでこなくても良かったですけど」
「今日はよろしくお願いしますね」
待ち合わせの場所には既にウオミーと森さんが来ていた。
「よし! それじゃあ行くとしようか!」
「あの、津田副会長は?」
「津田なら萩村と見回りをしてるはずだが」
「そうなんですか……」
「後で合流出来る……と言うか今から合流してしまおう!」
「さすがシノッチ! 分かってる~」
ウオミーと盛り上がってると、何故だか森さんが困った表情を浮かべていた。あの表情、偶に津田がしてるのと似てるな……
風紀に反してる出し物が無いかを萩村と見回っていたら、何故だか会長たちが合流してきた。まぁ邪魔しなければ良いんだけれども……
「って、萩村行き過ぎ、ここだよ」
オバケ屋敷を通り過ぎて行く萩村を呼び止める。
「……ああ! 私、背が低いから見えなかったわ」
「………」
自らタブーに触れるほどここが嫌なのだろうか……
「シノッチ、オバケ屋敷の楽しみ方と言えば」
「うむ」
「「暗闇の中でのセクハラ!」」
「「そんな訳ありません」」
ツッコミが森さんと被る……彼女も普段から苦労してるんだろうな……
結局私は会長と魚見さんを見張る事になって、見回りには津田と英稜の森さんが行く事になった。
「何だか津田と森さんがデートしてるみたいだな」
「つまりNTR状態を楽しんでるんですね」
「さすがはウオミーだ」
……津田についていけばよかったな。
「あれ~、天草会長じゃないですか」
「コトミ? お前も来てたのか」
「はい! 来年受験するからその下見に」
そう言えば津田の妹、コトミちゃんは来年桜才を受験するんだったわね……
「ところで会長、私の記憶違いじゃなければ、会長ってもっと巨乳だったような……」
「奇遇だな、私もお前はもう少し貧乳だったと思ってたんだが……」
何この空気……会長とコトミちゃんの間で火花が散っている中、魚見さんが余計な事を言った。
「私は両方で巨乳ですけどね」
「「あぁん?」」
誰か助けて……
何故か見回りを任された私は、桜才学園の副会長と二人でオバケ屋敷の中に居た。
「何かスミマセン、来て早々にご迷惑を……」
「いえ、ウチの会長も早速アクセル全開でしたし……」
出口に差し掛かり、互いに頭を下げていると、外が随分と騒がしいのに気がついた。
「何でしょう?」
「さぁ……でも、あまり良い感じでは無さそうですね」
津田さんは何となく予想がついてるようで、早くも頭を押さえていた。
「何してるんですか、全く……」
廊下に出てすぐ、津田さんは三人に声をかけました。天草会長と魚見会長、それと……誰でしょうあの子は?
「コトミ、何でお前まで居るんだよ……」
「見学だよ~。来年通うかもしれないんだし」
「それで、何で鈴なんて持ってるんだ?」
「タカ兄、これはただの鈴じゃ無い。鳳凰の絵が描いてある鈴だよ」
津田さんの事を「タカ兄」と呼ぶからには、彼女は津田さんの妹なんでしょうね。でも何故鈴……
「そして会長は何で箒なんかを……」
「これはただの箒ではない! 私の私物だ!」
「ほう、それで?」
「つまりは、シノの箒だ!」
「……魚見さんのそれは短剣ですか? でも、そのタイプなら普通は楯があるんじゃ……」
「私に楯は必要ないんですよ、津田さん。魚見に楯は無しです」
天草会長の武器は箒、魚見会長は短剣、そして津田副会長の妹さんは鈴……何か意味があっての事なのでしょうか……
今にも戦いが始まりそうだったのですが、それぞれ一発ずつ、津田さんに拳骨を喰らって沈みました……
「スミマセン森さん、見回りを続けましょう。萩村も行くぞ」
「あっ、はい」
「分かった……」
三人を沈めた津田さんは、何事も無かったかのように見回りを再開した。
出し物で喫茶店をする事になったのだが、何でこんな格好をしなくてはいけないんだろう。
「カエデ、二番におかわりお願い」
「分かった」
そう言われて二番テーブルに行くと、そこには……
「こっちこっち!」
「ッ!?」
なんと他校の男子生徒が手を振っていた……接客しなくてはいけないんだけど、あまり近づけないし如何すれば……そうか!
「はいー!」
「うおぅ!?」
中国のパフォーマンスで見た遠距離からのお茶汲みを実戦し、私は何とか接客をこなした。その後で廊下の方に視線を向けると……
「頑張るわね……」
「あの人、何か事情があって男子生徒に近付かないんですか?」
「若干男性恐怖症なんですよ、五十嵐さんは」
津田君と萩村さんが見た事無い女子生徒と一緒に私を見ていた……呆れられちゃったかもしれないわね……
萩村と別れ、再び森さんと二人で行動する事になった。
「外も活気付いてますね」
「そうですね。皆忙しそうです」
露天もやってるので簡単な食事ならここで済ませる事が出来る。
「チョコバナナ頂戴な」
「はい、ありがとうございます」
視界にあの問題教師が……
「津田、その人は?」
「英稜高校の生徒会副会長の森さんです。会長の魚見さんと、ウチの会長は訳あって別行動中なんです」
「ふ~ん……」
興味を失ったのか、横島先生がチョコバナナを食べ始める。
「これ食べるのも久しぶり……!」
「如何かしたんですか?」
森さんが横島先生に話しかける。どうせろくな事じゃねぇんだろうな……
「久しぶりのはずなのに、最近口にした覚えがある!」
「あ~、口にしたんじゃね?」
事務的に流して、俺は森さんを連れて体育館に移動する事にした。七条先輩から絶対に劇は見てほしいと頼まれてるんだよな……
「あの、津田さん」
「はい?」
「その……手を」
「手? あっ、スミマセン」
無意識に森さんの手を握っていたようで、俺は慌てて離した。だけど、森さんの表情は妙に恥ずかしそうだったんだけど、もしかして森さんも男性恐怖症だったんだろうか……
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