桜才学園での生活   作:猫林13世

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危険な奴らが……


チャリティーオークション

 いよいよ文化祭当日となり、我々生徒会はチャリティーのオークションを開くことになっている。

 

「――って、何で横島先生が開催してる風に言ってるんですか?」

 

「私は生徒会顧問だ。私が開催してると言っても問題ないだろ?」

 

「ありまくりでしょうが……」

 

 

 壇上には天草をはじめとする生徒会メンバーがオークションの趣旨を説明しているが、私は客席の最前列でその光景を見ているのだ。

 

「まぁ、私が関わっているかはともかくとして、最前列に座れてラッキーだ」

 

「見やすいですもんね」

 

「ライブとかだと汗飛んでくるしね」

 

「なに言ってんの?」

 

 

 ここ最近小山先生のツッコミが容赦なくなってきたが、これはこれで快感だと思える。

 

『まずは桜才指定の新品上履きを百円から』

 

「おっ、オークションが始まったな」

 

 

 客席から落札額が飛び交う中、少し後ろに座る畑が質問を投げ掛けた。

 

「サイズいくつですか?」

 

『えっと……あれ? 書いてない』

 

『どれどれ~23センチだね、私の足にピッタリ』

 

 

 サイズが分からなかったようだが、七条が履いてサイズが判明した。アイツの足のサイズは23センチなのか。

 

『一万』

 

『上履きと一番縁が無い人が落札しないでください!』

 

「相変わらずあの人はぶっ飛んでるな~」

 

「彼女も貴女には言われたくないと思いますよ」

 

「いや、あの人は私以上にぶっ飛んでると思う」

 

 

 津田から言わせればどっちもどっちなんだろうが、私から言わせてもらえば、私はあくまでも若い男専門で、女には興味ないからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 順調にオークションが進む中、次とその次は今回の目玉商品と言えるものが出品される。

 

「続いては、今日の為に書いてもらった、人気アイドルトリプルブッキングの直筆サイン!」

 

「こちらはサインが入った封筒もついてきます」

 

 

 客席――主に男子たちが声を上げて驚いている。トリプルブッキングのサインはそれなりに値が張るものらしいのだが、転売は禁止だと思う。

 

「先輩、切手がはがれかけてます」

 

「あっ」

 

 

 封筒からはがれた切手の裏をアリアが舐めて張り直す。

 

『五万』

 

「ファン以外の落札はご遠慮ください!」

 

 

 アリアに対する変態行動で脱線しかかったが、出島さんの落札を禁止したお陰で、高校生の常識の範囲内の金額で落札された。

 

「そして、こちらも大注目! 新聞部から提供された、津田タカトシ先生のエッセイを纏めた本!」

 

「ん?」

 

「今までの全てのエッセイがこの一冊に詰まっております。これさえあれば、かさばる新聞を処分でき、何時でも感動する事が出来るでしょう」

 

「そんなもの、俺は聞いてないんですが」

 

 

 タカトシが横から鋭い視線を向けてきているが、こればっかりは私だって欲しいと思い、畑の出品を認めたのだ。

 

「こちらは三千円からスタート」

 

『五千!』

 

『一万!』

 

『三万!』

 

 

 あっという間に十倍の値が付いたが、まだまだ収まる様子が無い。私も欲しかったが、予算は二万までだったから無理だな……

 

『十万!』

 

「おっと、十万円です! 十万円! 他にいませんか?」

 

 

 ここまで値が上がるとは思っていなかったが、本人が払うと言っているのだから進めるしかない。しかしこれ以上値が上がると、ぼったくりの感じがしてくる気が……

 

「他にいませんね? では十万円でハンマープライス!」

 

 

 落札者が決定し、客席からは割れんばかりの拍手が起こった。中には悔し涙を流している女子生徒も見受けられる。

 

「普通に増刷すれば、かなり売れそうだな」

 

「俺は新聞部の利益の為に書いてるわけじゃないんですがね」

 

 

 興奮に包まれる会場の中で唯一冷めた雰囲気のタカトシに、私たちは畑に増刷の提案をする事を諦めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オークションが無事に終わったタイミングで、客席にいたはずの横島先生が舞台裏に現れた。どうやら緊急の用事らしい。

 

「えっ、遅れる!?」

 

「先方から電話があって、渋滞に捕まったらしい」

 

「どうします? もう二時ですし」

 

 

 トリプルブッキングのライブ予定時間は二時から三時だったのだが、渋滞では仕方がないだろう。こればっかりは彼女たちの所為ではない。

 

「我々で時間を稼ぐしかあるまい」

 

「でもどうやって?」

 

「本番前からトークで時間稼ぎするタイプの風俗嬢のようにすればいいんじゃね?」

 

「アンタは黙っててもらえますか?」

 

 

 おかしなことを言いだした横島先生を黙らせて、俺はシノ会長に意見を求める。

 

「アリアやタカトシが練習していた手品で時間を稼ぐのはどうだ? 私や萩村もフォローするし」

 

「でも私は兎も角タカトシ君が前座をやったら、本番のライブより盛り上がっちゃうんじゃないかな?」

 

「いや、そんな事ないでしょ……」

 

 

 本職のアイドルと少しかじった程度のマジックを比べる事自体失礼だと思うんだがな……

 

「とにかく、トリプルブッキングが到着するまでの間、我々で時間を稼ぐしかないんだ!」

 

「そうなると人手が必要ですよね? コトミたちにも声をかけてみましょうか」

 

「そうだな。コトミが来ても役に立つとは思えないが、何かに使えるかもしれないしな」

 

「俺もそう思いますが、会長がそれを言わんでください」

 

「す、すまん……」

 

 

 俺だって思ったけど言わなかったんだから、会長にも我慢してもらいたかったな……




コトミの評価は相変わらず

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