桜才学園での生活   作:猫林13世

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ここのタカトシはほっといてどっかいきそうだったので、アリアの手品は真面目にしました


手品の練習

 文化祭の準備中に不純な事をする輩がいないか見張る為に、風紀委員では準備期間中の見回りを強化する事にした。生徒会の方でも手伝ってくれているので、今のところ順調に準備が進んでいると思う。

 

『ねぇ聞いた? 今度の文化祭にトリプルブッキングが出演してくれるのって、生徒会が直接交渉したからなんだって』

 

『私が聞いたのは、トリプルブッキングが出演しているCMのスポンサーが七条グループで、七条先輩がお願いしたらOKがもらえたってやつだけど』

 

『私が聞いたのは、交渉に行った生徒会――というか津田君にメンバー全員が一目惚れして出演を承諾してくれたって話だけど』

 

 

 トリプルブッキングが出演してくれることになった流れは、英稜との合同体育祭の件で知っているはずなのに、何でこんな噂が流れているのかしら……

 

「言っておきますが、私ではありませんからね?」

 

「きゃっ!? ……何も言って無いじゃないですか」

 

「いえ、私の事を疑ってるような顔をしていたので」

 

「疑われるような事をしてる貴女が悪いんでしょうが」

 

 

 いきなり現れた畑さんに、私はとりあえず注意しておく。

 

「あれだけ派手に争っていたというのに、お熱だったのは両会長だけだったという事ですね」

 

「単なる合同イベントだと思われていたんですね」

 

 

 確かに天草さんと魚見さんはバチバチしてた感じだったけども、両校の生徒たちは割とどうでもいいといった感じだったものね……まさか合同体育祭の趣旨が知られていなかったとは思わなかったけども……

 

「ところで、先ほど津田副会長が七条さんに手錠を掛けていたんだけど、どう思う?」

 

「今度はどんな勘違いをさせたいんですか、貴女は」

 

「さすがに引っ掛かりませんでしたか……七条さんが手品の練習をするという事で、津田副会長が七条さんの手を後ろに回して手錠を掛けただけなんですけどね」

 

「何故手品……余興でもするんですか?」

 

「生徒会の方々も、色々と考えなければいけない事が多いのでしょう」

 

「貴女が盗撮しないように見張らないといけませんからね」

 

「な、何のことでしょう?」

 

「さすがに現役アイドルの盗撮写真なんて出回らせたら、お説教だけじゃ済まないですからね?」

 

「そ、そんな事するわけないじゃないですか~……では!」

 

 

 慌てて逃げ出したところを見るに、釘を刺しておかなければやっていた可能性が高いわね……

 

「タカトシ君が心配してた時は『さすがにそんな事しないわよ』って言ったけど、まさか本当にしようとしてたとは……」

 

 

 タカトシ君のお陰で桜才学園から犯罪者を出さずに済んだのかもしれないけど、畑さん自身で踏みとどまってほしかったわね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回の文化祭の目玉は間違いなくトリプルブッキングなのだが、我々生徒会でも何か準備しなければいけないという事で、アリアの提案で手品を披露する事になった。

 

「とはいっても、私たちは手品なんて出来ないぞ?」

 

「大丈夫。出島さんから『初心者でも出来る手品』って本を借りてきたから」

 

「あの人が貸してくれたって事に目を瞑れば安心なんだが」

 

 

 あの人は多才でいろいろな事が出来ると分かっているのだが、どうも余計な事をする傾向にあるんだよな……まぁ、昔の私も大差なかったのかもしれないが。

 

「さっきやってみたけど、確かに上手くいったよ~」

 

「本当か?」

 

「うん。タカトシ君に見てもらってたから聞いてみて~」

 

 

 タカトシならこんな本に頼らなくても何か出来そうだな……ではなく。

 

「タカトシと一緒に練習してたのか?」

 

「さっきちょうどタカトシ君しかいなかったから、その時に見てもらったの~。シノちゃんも見る~?」

 

「ちょっと見てみたいな」

 

「じゃあこの手錠を掛けてくれる?」

 

 

 手渡された手錠を後ろに回したアリアの腕に掛ける。それにしても、最近の手品グッズは良く出来ているんだな。

 

「見ててね~」

 

「おぉ!」

 

 

 しっかりと鍵を掛けたはずなのに、アリアの腕はするりと手錠から抜け出しているではないか。

 

「シノちゃんってどんな手品をやってみたいの~?」

 

「昔物体浮遊の手品をしたが、あれは透明な糸を吊るしてあるだけだしな……コトミに『じゃあパンツに糸引かせてみればいいんですよ!』って言われた事があったが」

 

「それだと別の『糸』になっちゃうんじゃない?」

 

「……タカトシがいないとどうもブレーキが利かないな」

 

「基本的には私たちは変わってないって事だね」

 

「とにかく、本番までに何か一つくらいはマスターしておきたいものだ」

 

 

 出島さんから借りた本に目を通していると、ふと気になることが出てきた。

 

「タカトシは兎も角として、萩村は何をやるんだ?」

 

「あれは? 耳が大きくなるマジック」

 

「あれはただの小道具だろ? というか、萩村は耳よりも背を大きくしたいんじゃ――」

 

「なかなか面白い話をしてますね?」

 

「は、萩村っ!? べ、別に悪口じゃないだろ?」

 

「えぇそうですね。ですが、人に言われると倍気に障るんですよ! この貧乳会長!」

 

「人が気にしてる事を! ……なるほど、確かに倍気に障るな」

 

 

 私と萩村の不毛な争いを、丁度生徒会室に戻ってきたタカトシが呆れた顔で眺めていたのだった。




不毛な争いが……

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