桜才学園での生活   作:猫林13世

532 / 871
ウオミー暴走気味


浴衣の着付け

 今日は近所で花火大会があるので、魚見会長が私たちの浴衣の着付けをしてくれるらしい。しかしなぜ集合場所が津田家なのだろう……

 

「コトミ、浴衣出しておいたぞ」

 

 

 ちなみに、タカトシ君は私たちの昼食を用意するために買い出しに出かけているので今は不在。つまり、天草さんや七条さんのストッパーが外れる可能性が高い。

 

「ふぁーい」

 

「こらこら、歯磨き中に口をあけるな」

 

 

 しかしここの住人のコトミさんが浴衣を用意してもらっているのはどうなんだろう……

 

「兄が口内に出されたやつ見せつけフェチだったらどうする」

 

「いないからって言っていい事じゃないだろ!」

 

「おぉ、森か……これくらい普通の冗談だろ?」

 

「それが普通だと思ってる時点で、貴女は普通じゃないと思いますが……」

 

「次、サクラっちの番だよ」

 

 

 七条さんと萩村さんの着付けを済ませた会長が、部屋から顔をのぞかせて私を呼ぶ。とりあえず天草さんは大人しくなったので、私は浴衣を持って部屋に入る。

 

「七条さんも萩村さんも、浴衣お似合いですね」

 

「ありがと~。でも着こなしには立ち方も大切なんだって」

 

「そうなんですか」

 

「うん。今日のミニ丈浴衣の時は、裾を抑えて恥じらい感を出す」

 

「ためにならねぇ……というか、誰がそんな事を言っていたんですか?」

 

「ん? 出島さん」

 

「やはりか……」

 

 

 七条家のメイドである出島さんは、タカトシ君に怒られたいと思っているようで、このように碌でもない事を七条さんに吹き込んだりしている。まぁ、それを信じる七条さんにも問題があるのかもしれないけど……

 

「サクラっち、じっとしててね」

 

「分かりました」

 

 

 会長に着付けてもらっているのだけど、さっきから接触が多い気が……

 

「あ、あの……くっつきすぎでは?」

 

「そう? 分かった」

 

 

 良かった……いくら同性とはいえ、あんなにくっつかれたら落ち着かないし……

 

「フェザータッチの方がお好みなんだね」

 

「全然分かってない!?」

 

 

 むしろ事態は悪化したようにも思えてきた……タカトシ君、やっぱり私一人じゃこの人たちをいっぺんに相手出来ないよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 買い出しから戻ってきたら、リビングでサクラがぐったりと倒れていた。

 

「何かあったのか?」

 

「あっ、タカトシ君……お帰りなさい」

 

「あぁ、ただいま……」

 

 

 彼女の疲労感漂う表情から、おおよその事態を理解し、何となく申し訳ない気持ちになる……

 

「大変だったようだな」

 

「タカトシ君がいない所為で、皆のストッパーが外れちゃって……私には魚見会長一人を相手するだけで手一杯だって思い知らされたよ」

 

「義姉さんも俺がいる時は大人しくなってきてるんだけどな」

 

 

 会話をしながら、俺はサクラの前にアイスティーを差し出す。ぐったりしているので、何時もより甘く作った。

 

「ありがとう」

 

「気にするな」

 

 

 とりあえず人数分の食事を作らなければいけないので、俺はキッチンに移動して調理を開始する事にした。といっても、屋台で沢山食べると宣言してる人がいるので、昼食は軽めの物を作るつもりなので、さほど手間ではない。

 

「タカ兄、お義姉ちゃんがタカ兄も浴衣を着たらどうだって言ってるけど」

 

「俺も? まぁ俺だけ洋服じゃ浮くかもしれないが、何で義姉さんが?」

 

「タカ兄の着付けもしたいって言ってたけど」

 

「着物じゃないんだ……浴衣くらい自分で着られる」

 

「あれ? タカ兄って着物も着られるんじゃないの?」

 

「一応は、な……だが、義姉さんに確認してもらった方がいいかもしれないが」

 

 

 相変わらずのハイスペックさが窺い知れる会話だなぁ……タカトシ君なら何でもありかな……

 

「何だ、残念……せっかくタカ君の胸板をぺたぺたしようと思ってたのに」

 

「カナ! 抜け駆けは駄目だって言ってるだろうが!」

 

「というか、陰で隠れてたんじゃないんですか? まぁ、気配で気付いてましたけど……はい、野菜多めのヘルシーそうめんの完成です」

 

「おくらにトマトにナス、コーンに刻んだネギか。美味そうだな」

 

 

 タカトシ君が作ってくれた昼食は、シンプルだけど実に美味しそうなものだった……私ももう少し料理出来るようにならなきゃ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 花火大会という事で、それほど屋台は出ていないけども、皆無というわけではない。私たちはタカトシに場所取りを頼んで、食べ物を買い込みタカトシを探す。

 

「しかし凄い人だな……」

 

「地元の花火大会という事で油断してましたね」

 

「ところで皆さん、タカ兄と何か進展無いんですか?」

 

「っ!? そ、そんなものあるわけ無いだろ!」

 

 

 コトミの言葉に、思わず買ったトウモロコシを落としそうになったが、何とか堪えて声を荒げる。

 

「このままじゃサクラ先輩かカエデ先輩が、私のもう一人のお義姉ちゃんになりそうだなーって思ったんですけど、その反応じゃ、やっぱりその二人の争いですかね~?」

 

「私が本当のお義姉ちゃんになってあげてもいいよ?」

 

「うーん……でもお義姉ちゃんの場合、もう完全にタカ兄と義姉弟って感じになっちゃってますし」

 

「それは私も感じてるよ」

 

 

 カナが脱落したのは良いが、まだ強敵が残ってるんだよな……というか、タカトシ抜きでこんな話をしたところで、私たちの仲が進展するわけじゃないんだが……




タカトシに聞かれたら怒られそうだな

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。