桜才学園での生活   作:猫林13世

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高校でオール2って……


コトミの成績表

 一学期も今日が最終日。成績表が返され、私は普段通りの成績を見てとりあえず胸を撫で下ろす。

 

「うわっ! 相変わらずマキの成績は凄いね」

 

「コトミ、勝手に覗きこまないでよ」

 

 

 背後から近づいて来ていたコトミに成績を覗き込まれたので、私は慌てて成績表を胸に押し付ける。

 

「公衆の面前でオ○ニー?」

 

「見られないように隠しただけだ! というか、アンタそのネタまだ言ってたんだ」

 

「さすがにタカ兄の前では言わないけどね」

 

 

 津田先輩に散々怒られた結果、コトミのエロボケはだいぶ減ってきているけど、津田先輩がいないところでは偶に言ってるのよね……

 

「それで、コトミの成績はどうなの? 津田先輩や魚見さんたちが苦労した結果は出たの?」

 

「まぁ、だいぶ2は減ったかな……」

 

「それでもまだあるんだ……」

 

「オール2からは進歩したんだから、タカ兄も納得してくれると思うよ」

 

「あれだけ勉強を教わってるのに、何で2があるのよ……」

 

「点数は兎も角、授業中に寝ちゃったり、宿題を提出し忘れたりしてるからかな」

 

「忘れ物は減らしなさいよ……さすがにそこまで津田先輩に面倒を見てもらうのは恥ずかしいでしょ?」

 

 

 高校生にもなって忘れ物が無いかチェックされるなんて普通なら恥ずかしい。少なくとも私はそんな事されたくない。

 

「あっトッキー、成績どうだった」

 

「逃げるな」

 

 

 どうやら恥ずかしいと思っていなかったようで、コトミは露骨に話題を逸らそうとトッキーのところに逃げた。私もそれを追いかける。

 

「まぁ普通だよ」

 

「トッキーとなら、いい勝負が出来る気がする」

 

「別に勝負なんてしねぇよ。そもそも、お前は兄貴に面倒見てもらって点数も上がってるんだから、私より成績良いんじゃねぇの?」

 

「トッキーだってタカ兄に面倒見てもらって、だいぶ点数上がってるでしょ? だからいい勝負だと思うよ」

 

 

 そう言ってコトミはトッキーに成績表を手渡し、トッキーも渋々コトミに成績表を手渡す。

 

「えっ……トッキーがオール3以上だと……」

 

「何でお前は2があるんだよ」

 

 

 漏れ聞こえた限りでは、どうやらトッキーが勝ったようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 終業式だからといって、生徒会業務が無いわけではない。むしろ顧問の横島先生が忘れていた仕事が発覚した所為で、何時も以上に忙しいと言える。

 

「いやー、終業式の日に悪かったな」

 

「前々から言っていますが、仕事はしっかりと把握しておいてください。期限ぎりぎりに思い出すの、これが初めてではないですよね?」

 

「面目ない……」

 

 

 この人が生徒会顧問で大丈夫なのだろうかと、何度思った事か……まぁ、タカトシがしっかりしているから、何かあってもどうにかなっているから大きな問題に発展していないが。

 

「お詫びと言っては何だが、これをプレゼントしよう」

 

「へ?」

 

 

 そう言って横島先生は、タカトシのズボンのポケットに手を突っ込もうとした。

 

「何をするつもりなんですかね?」

 

「萩村、このロープで縛ろう」

 

「ご、誤解だ! プレゼントはポケットに忍ばせるものだろ?」

 

「忍んでなかったでしょうが! それで、なんですかそれは?」

 

 

 横島先生が持っていたのは、何かのチケットのようだ。

 

「こ、これは……トリプルブッキングのライブチケット!?」

 

「知人から貰ってね」

 

「トリプルブッキングって確か、以前古谷さんが文化祭に呼んでた人たちですよね」

 

「それだ!」

 

「っ!? か、会長……いきなり大声を出さないでくださいよ」

 

 

 私の声に萩村が驚いたようで、私に非難めいた声で抗議してくるが、今はそれどころではない!

 

「うちの文化祭にも、トリプルブッキングを呼ぼうじゃないか!」

 

「来てくれますかね? 彼女たちも忙しいと思いますが」

 

「握手会の時に直接参加依頼を渡せばいいだろ」

 

「学園を通した方がいいと思いますよ? それに、直接渡したところで読んでくれますかね?」

 

「大丈夫だ! 読みたくなるように一工夫したから」

 

 

 取り出した手紙には、『絶対に中を見ないで!!』と一筆添えてある。これなら好奇心から読みたくなるに違いない。

 

「そんなことして、本当に中を見なかったらどうするのさ?」

 

「……その可能性は考えてなかった! くそぅ! 作戦の練り直しだ」

 

「シノちゃん、さっきから大声出してどうしたの? 廊下まで聞こえてたけど」

 

「おぉ。他用で外に出ていたアリアか」

 

「なんだか説明クサくない?」

 

「気にするな」

 

 

 生徒会室に戻ってきたアリアにも事情を話し、私はいい案が無いか相談する。

 

「この一文は書かずに、直接手渡してお願いすれば良いんじゃないかな? それかスズちゃんが言ったように、学園を通してオファーをした方がいいと思うけど」

 

「だが、それだと面白くないだろ?」

 

「別に面白さは必要無いと思うけどな。タカトシ君はどう思う?」

 

「そうですね……アリア先輩が仰るように、学園を通じてオファーした方がいいとは思いますが、それではシノ会長は納得しないでしょうから、直接オファーすればいいのではないでしょうか? もちろん、余計な事はせずに、普通にオファーするのが前提条件ですがね」

 

「では、握手会の時にオファーしようじゃないか!」

 

 

 こうして、我々四人はトリプルブッキングのライブと握手会に行くことになった。オファー、引き受けてくれるといいな。




そもそも3すらなかったな……オール4以上だった

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