桜才学園での生活   作:猫林13世

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それを感じるのはツッコミ側の人間だけ……


ツッコミ不足の恐怖

 じゃんけんの結果、今日の見回りは私とタカトシ君のペアとシノちゃん・スズちゃんペアになり、私は少し浮かれ気分で見回りをしていた。

 

「何かいいことでもあったんですか?」

 

「うん。こうしてタカトシ君と一緒に見回りが出来た」

 

「はぁ……」

 

 

 それの何処がいい事なんだと言いたげなタカトシ君の態度だけども、恋する乙女にとって好きな人と二人きりでいられるのは、何物にも代えがたいものだと言えるんだけどなぁ……

 

「一緒に見回りが出来るだけで嬉しいのなら、いくらでも付き合いますが」

 

「っ! もう! そんな事言って、本気にしちゃったらどうするつもりなの?」

 

「どうする、とは?」

 

「シノちゃんやスズちゃんが嫉妬に駆られて鞄からナイフを――」

 

「最近はそういう類いの小説がブームなんですか?」

 

「出島さんから勧められて、ちょっとヤンデレを研究中なんだ~」

 

「よく分かりませんが、物騒な事だけはしないでくださいね? 対処が面倒なので」

 

 

 確かにタカトシ君なら、ナイフ程度じゃ大人しくならないだろうけど、それで済ませられるって凄いな……

 

「ん? 会長とカエデ先輩が一緒にいるのは珍しい気もしますね」

 

「ほんとだ~。あれ? スズちゃんがいない」

 

 

 確かシノちゃんはスズちゃんと一緒に見回りをしていたはずなのに、スズちゃんは何処に行っちゃったんだろうな……

 

「それじゃあ明日」

 

「えぇ、楽しみにしてます」

 

「どこかに出かけるんですか?」

 

「おぅ、タカトシか。最近銭湯にはまっていてな。五十嵐も一緒にどうだと誘ったところだ」

 

「銭湯か~。それって私も行って良いの?」

 

「あぁ、もちろんだ!」

 

「ところで、スズは何処に行ったんですか?」

 

「萩村なら、轟に連れていかれたぞ」

 

 

 シノちゃんに言われ、タカトシ君はスズちゃんの気配がロボ研にあるかを確認したようで、小さく頷いて視線をシノちゃんに戻した。

 

「さすがに俺は付き合いませんが、くれぐれも暴走しないでくださいね」

 

「……お前は私たちを何歳だと思ってるんだ」

 

「年相応に思われたいのなら、日ごろの言動を気を付けてください」

 

 

 若干呆れ気味に言われ、シノちゃんは気まずげに視線を逸らしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天草会長に誘われて銭湯に来たけども、冷静に考えたら今日ってタカトシ君がいないのよね……ツッコミの手が足りないなんてことにならなければ良いけど……

 

「これで全員だな」

 

「シノちゃん、私、カエデちゃん、スズちゃん、轟さんの五人だね!」

 

「今日はお誘いいただきありがとうございます」

 

「たまには違うやつとも交流を深めないとな」

 

「五十嵐先輩、私はネネ一人で精一杯ですからね」

 

「わ、私だって二人相手は無理ですから」

 

 

 どうやら萩村さんもタカトシ君がいない事に不安を覚えているようだ……しかしよくよく考えたら私たちって、随分とタカトシ君に頼りっきりだったんだ……

 

「ではまず身体を洗う事にしよう」

 

「そうですね」

 

「でも何でバスタオルって太ってるように見えるんだろうね」

 

「………」

 

 

 何度か見た事あるとはいえ、相変わらず七条さんのボディラインは凄いわね……私だけじゃなく、天草さんや萩村さんも言葉を失ってしまってるし……

 

「さすが七条先輩ですね~。校内男子のおかずランキング上位なだけあります」

 

「ありがと~。でも、そんなランキング聞いたこと無いよ?」

 

「畑先輩が裏で企画してたんですけど、津田君に見つかって潰された企画ですからね」

 

「そうなんだ~」

 

 

 さすがタカトシ君……発行前に潰せるのは彼しかいないわね……私だったら企画を聞かされた時点で気絶してたかもしれないし……

 

「ちなみに、五十嵐先輩もランクインしてましたよ」

 

「わ、私もっ!?」

 

 

 知りたくなかったことを聞かされ、私はその場で軽く意識を失ってしまったのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 柔道部の練習も午前中で終わり、午後はゆっくり休もうと思ってたんだけど、生憎今日は家にタカ兄とお義姉ちゃんが揃っているのだ。私がのんびりできるわけがなかった……

 

「――というわけだけど、ちゃんと聞いてた?」

 

「ほへぇ……少し休憩しましょうよ~」

 

「まだ二時間しかやってないよ?」

 

「私の勉強に対する集中力は一時間もてばいい方なんですよ」

 

 

 最近は一応我慢してるけども、前は授業中に寝ることだってあったのだ。二時間も勉強してたことに私が驚くくらいだ。

 

「仕方ないね。タカ君が作ってくれたクッキーがあるから、お茶にしようか」

 

「タカ兄がクッキー……ですか? 何だか珍しいですね」

 

「どうせすぐ音を上げるだろうから、お菓子で釣れば少しはやる気になるだろうって言ってたよ」

 

「なんだか見透かされてる気が……」

 

 

 私からしてみれば二時間頑張ったんだけど、タカ兄たちから見れば二時間程度じゃ頑張った内に入らないのだろう。

 

「まぁコトちゃんも始めたころと比べればだいぶマシになってきてるから、もう少し頑張れば平均には届くと思うよ」

 

「これだけ頑張って漸く平均……タカ兄やお義姉ちゃんたちがいかに凄いか改めて思い知らされたよ」

 

「コトちゃんだってやれば出来ると思うけどね」

 

「それは買いかぶり過ぎですよ~」

 

 

 昔の私なら、ここで「皮被り過ぎ」ってボケたかもしれないけど、少しは成長してるってところを見せておかないとね。




コトミ、緩やかに成長中

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