桜才学園での生活   作:猫林13世

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酷い勘違いだ……


勘違いと錯覚

 リビングでテレビを見ていると、電話が掛かってくるシーンが流れた。

 

「はい、津田です……?」

 

「テレビですよ、お義姉ちゃん」

 

「何だ……それにしても、随分とボリュームが大きくない? もう少し小さくした方が耳に優しいと思うんだけど」

 

「そうですかね? 私はこれくらいが普通なんですが」

 

 

 タカ兄がバイトでいないため、お義姉ちゃんが今日もウチに泊まっている。勉強もノルマはこなしたし、お義姉ちゃんが作ってくれた小テストでも八割正解したので、今日はもう勉強しなくてもいいし。

 

「それじゃあ私はお料理の続きをするけど、あんまりだらけてたら駄目だからね?」

 

「分かってますよ~」

 

 

 私だって自堕落な生活に戻った時点で留年、あるいは退学という事実を忘れてるわけではないので、そこまでだらけるつもりは無い。そもそもだらけて留年でもしたら、この家から追い出されるんだし……

 

「(この前お母さんたちに脅されたばっかだしね……)」

 

 

 珍しく帰ってきた時に、お母さんとお父さんに散々脅されたのだ。私だってついこの間の事を忘れる程残念な頭をしているわけではないのだ。

 

「おっ、お蕎麦美味しそ~」

 

 

 考え事をしていたが、テレビに映ったお蕎麦に意識をとられ、私は考えを放棄した。

 

「誰のをバキューム○ェラしてるの!」

 

「お義姉ちゃんも大概ですよね~」

 

 

 一切の迷いなくキッチンからやってきたお義姉ちゃんに、私にしては珍しくツッコミを入れた。

 

「そもそもこの家に今いるのは私とお義姉ちゃんの二人だけですし、したくても出来ませんよ~」

 

「それもそうね。そろそろご飯だから、コトちゃんも運ぶの手伝って」

 

「分かりました~」

 

 

 料理を手伝えとは言われなくなったけども、このくらいの手伝いなら私だって出来る。なので私はテレビを消してお義姉ちゃんのお手伝いをする事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨日の勘違いを思い出して、私は生徒会室で顔を覆った。

 

「会長? 何かあったんですか?」

 

「サクラっち……テレビの音と現実の音との区別が出来なかった事を思いだして、少し恥ずかしくなっただけですので」

 

「たまにありますよね」

 

 

 私が恥ずかしがっている理由を聞き、サクラっちがフォローしてくれた。

 

「そうだよね。蕎麦を啜る音と、○ェラ音を聞き間違える事もあるよね!」

 

「ありませんね、そんなこと」

 

 

 ついさっき同意してくれたばかりだというのに、サクラっちはあっさりと私の言葉に否定の返事をしてきた。

 

「同意してくれたばっかりじゃない!」

 

「電話の音とか、チャイムとかなら分かりますが、そんな事で勘違いはしません」

 

「そうかな……シノっちに聞いてみよう」

 

 

 そう思って私は携帯を取り出し、シノっちにメールを送る。暫くしてシノっちから返信が着た。

 

「シノっちも勘違いした事あるって」

 

「いったいどんな状況で……」

 

「お父さん膝枕でお母さんがテレビを見てるときに――」

 

「あー、それ以上言わなくて良いです」

 

「子供心に思ったって書いてあります」

 

「言わなくて良いと言っただろうが!」

 

 

 サクラっちのカミナリが落ちたのに、青葉っちは気にした様子もなく作業を続ける。この子も意外と豪胆というかマイペースと言うか……

 

「とにかく、くだらない事を考えてる暇があるなら作業してください。今日は結構量があるんですから」

 

「サクラっちもかなりシビアだよね」

 

「会長がどうでもいい事で作業を中断させるからです」

 

 

 サクラっちにまともに相手をしてもらえなかったので、私は仕方なく作業を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カナからのメールに返信してる間に、萩村が錯覚の実験を始めていた。

 

「同じサイズの大福も、小さい皿に乗せると大きく見えるんですよ」

 

「錯覚って面白いね~」

 

「……!」

 

 

 その原理を利用すれば、些か慎ましやかな私の胸も、小さなブラをする事で大きく見えるのではないだろうか。

 

「シノちゃん、どうかしたの?」

 

「気にするだけ無駄ですし、アリア先輩が聞くと嫌味で、俺が聞くとセクハラになるでしょうし」

 

「ん~?」

 

 

 私の心を読んだであろうタカトシがそういうと、アリアは胸の前で腕組みをしながら首を傾げる。そのポーズがまた色っぽく、私の視線はアリアの胸に向けられる……

 

「ん? 何でこんなところにラップがあるんだ?」

 

 

 てっきり大福にラップをかけるのかと思ったが、これはお茶菓子だしな……

 

「あー、それ私のー」

 

「古谷先輩の? 何に使うんですか?」

 

 

 勝手に校内に入ってきてる事に対するツッコミは、今更なのでしなかったが、この人が来てたの忘れてたな。

 

「これを使うとキレイになるっしょ」

 

「美容ですか。先輩も気を使ってるんですね」

 

 

 化粧っ気は無いし、ケアなどしてないと思ってたんだが、ラップでパックをするとは先輩もちゃんと女子大生してるんだな~。

 

「え? リモコンに巻くんだけど?」

 

「おばあちゃんの知恵!? ていうか、それならここに持ってくる必要あったんですか?」

 

 

 せっかく女子大生っぽいって思ったのに、結局はそういうオチか……私だけでなく、アリアと萩村も驚いているのを見れば、先輩の考えの方がおかしいんだろうな……




またタカトシの出番が無かったな……

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