桜才学園での生活   作:猫林13世

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めずらしくタカトシの出番なし


桜才パワースポット巡り

 桜才学園のパワースポットを紹介する記事を書くためという名目で、我々生徒会役員と畑はその場所をめぐる事になった。

 

「ここが、男子生徒の背筋が良くなると言われているパワースポットです」

 

「背筋が?」

 

「窓を開けていると偶に強い風が入り込んで――」

 

「きゃぁ!?」

 

「――このようにパンチラが拝める場所です」

 

「没だな」

 

 

 このように碌なスポットではないので、タカトシは途中から見回りに行ってしまい、萩村も予算委員会との話し合いに行ってしまったので、畑と一緒に回っているのは私とアリアの二人だけなのだ。

 

「これもダメですか~? せっかくいろいろと話を聞いて作ったのに」

 

「だいたいこんなものを記事にしたら、タカトシに怒られ萩村に予算を削られるという事が分かりそうなものだが」

 

「そうだね~。私個人としては面白いって思う場所もあったけど、それを紹介するのはタカトシ君に怒られるだろうね~」

 

「そもそもパンチラスポットなんて、紹介したらチャンスが減るだろうが」

 

「それもそうですね」

 

 

 タカトシも萩村も不在という事で、私の中のストッパーが外れている。何故男子生徒目線で畑を注意したのか自分でも分からないが、密かなパワースポットとして残しておいた方がいいと思ったのだ。

 

「それじゃあ最後は恋愛成就のパワースポットに向かいましょう」

 

「なにっ!? そんな場所があるのか?」

 

「先ほどまでとは随分と違う食いつきよう……誰か告白したい相手でも――あぁ、津田副会長ですか」

 

「ち、違うぞ?」

 

 

 今更誤魔化したところで、畑やアリアには私の気持ちは知られているので、あまり意味のない否定になってしまった。だがまぁ、本人に聞かれなかったという事でセーフという事にしておこう。あいつがそんな勘違いをするとは思えんが、私が否定した事で私の気持ちまで否定されてしまうのではないかと少し不安になった。

 

「それで、恋愛成就のパワースポットって~?」

 

「七条さんもノリノリですね。ここが恋愛成就のパワースポット、放送室です」

 

「「放送室?」」

 

 

 私もアリアも、何故放送室が恋愛成就のパワースポットなのか見当がつかず、首を傾げる。

 

「この放送室から告白をすれば、必ず成就すると言われています」

 

「……そんな話、聞いたこと無いんだが」

 

「私も」

 

 

 この学園に三年通っているが、そんな噂も、そもそも放送を使って告白したという話も聞いたことが無い。アリアと顔を見合わせ、私たちは畑を問い詰める。

 

「本当にそんな話があるのか? またいつものように捏造なんじゃないだろうな」

 

「……まぁ、そんな大胆な告白が出来るようなら、パワースポットになんか頼りませんよね」

 

「やはりか」

 

 

 畑が目標としている『自分の掌の上で民衆を転がしたい』という考えから出来た嘘だという事が判明し、結局パワースポット巡りは全て没となった。

 

「でも、実際にやれば嘘も本当になるわけですから、試しに会長、告白してみてください」

 

「なにっ!? そんな事出来るわけ無いだろうが!」

 

「まぁまぁ、とりあえず中に入りましょう」

 

 

 畑に背中をぐいぐいと押され、私とアリアはとりあえず放送室の中に入る。

 

「ここに来るのって、ボイスドラマを放送した時以来かな~」

 

「そういえばそうだな。あの時は畑が仮病を使った所為で、しなくて良いドキドキをした気がするぞ」

 

「あれはあくまでもフィクションですから、実際に津田副会長がお三方の誰かに告白するわけではなかったんですがね~。それなのになぜ、会長たちはドキドキしたのでしょうか?」

 

 

 畑がにんまりとした笑みを浮かべながら迫ってきたので、私は何とかして話題を変えようと辺りを見回す。

 

「そういえばこの部屋、完全防音で外には声が聞こえないんだったな」

 

「ですから、ここでエロい事をしてもバレないと、以前横島先生が何かを計画しているようでした」

 

「またあの人か……」

 

「前も思ったけど、そこはあえてスイッチを入れたまま、バレるかバレないかのスリルを楽しむんじゃない?」

 

「なかなか上級者な楽しみ方だと思うぞ……」

 

 

 私はそんなスリルを味わいたくないので、やるならまずスイッチがちゃんと切ってあるかを確認――ではなく!

 

「放送室の不適切使用は認められないな」

 

「資料室を不適切使用している教師がいるんですから、少しくらい大目に見てくれたって良いんじゃないですか?」

 

「あの人は注意しても治らないから仕方がないだろ! そもそも、タカトシにこっ酷く怒られたんだから、少しくらい大人しくなってもらいたいものだ」

 

「どうやら津田副会長の怒声が快感に変わるまでになっているようです」

 

「……私たちの想像を超える変態だな」

 

「まぁ、横島先生だし」

 

「横島先生ですからね」

 

 

 その一言で納得してしまうのもどうかと思うが、確かにあの人ならそれくらい出来そうだ。

 

「しかし、全て没になってしまったので、来月の桜才新聞はどうしましょう……」

 

「何かネタは無いのか?」

 

「天草会長が生徒会室でバストアップの為にマッサージをしていた写真を載せるしか――」

 

「新聞部は当分の間活動休止だ!」

 

「冗談ですよ」

 

 

 私は結構本気だったので、畑は慌てて頭を下げてネタを探しに放送室を去って行った。




捏造ばっかり……

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