桜才学園での生活   作:猫林13世

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何で騙されるかなぁ……


SP三葉ムツミ

 新聞部の畑先輩にインタビューさせて欲しいと頼まれて、私は先輩からの質問に答えていった。

 

「――以上で終わりです。インタビューお疲れ様でした」

 

「はー、緊張した~」

 

 

 柔道の試合ではこんなに緊張する事も無いんだけど、やっぱりインタビューって緊張するんだな~。

 

「さて次は、津田君のスクープを……」

 

「タカトシ君がどうかしたんですか?」

 

「彼はいろんな人物に狙われているという噂があってね」

 

「(ねらわれてる!?)」

 

 

 タカトシ君は十分に強いけど、いろんな人物にねらわれているとなると、一人で対処しきれないんじゃないかな。

 

「――というわけで、私が君のボディガードになる!」

 

「え?」

 

 

 生徒会室で作業していたタカトシ君にそう宣言すると、タカトシ君は意味が分からないという顔で私の事を見て、すぐに隣に視線を移した。

 

「今度は何を言ったんですか?」

 

「私が原因ですか~?」

 

「畑先輩は、タカトシ君がいろんな人にねらわれてるって教えてくれたんだよ」

 

「はぁ……まぁ今は急ぎの仕事があるわけじゃないですし、三葉も暇なら別に構わないが」

 

「?」

 

 

 タカトシ君が何を気にしてるのか分からなかったけども、とりあえずボディガードとして認めてもらったからにはしっかりと護らないと。

 タカトシ君が生徒会室から出て行くので、私もその後をついていく。なんだか親鳥についていく雛のように思われてる気もしないでもない……

 

「三葉、何処までついてくるつもりだ?」

 

「だってボディガードだし」

 

「トイレに行くつもりなんだが」

 

「あ」

 

 

 確かに男の子のタカトシ君と一緒にトイレに入る事は出来ない。

 

「でもボディガードとしては片時も離れるわけには……」

 

「おっ、三葉に津田。何してるんだ?」

 

「横島先生」

 

 

 女子トイレから出てきた横島先生に、今の状況を説明する。

 

「そんなの簡単だろ。温泉浣腸すればいいんだよ」

 

「? よしやろー」

 

「意味が分からない事を言うな! それと三葉、別に危険なんて無いから気にしなくて良い」

 

 

 そう言ってタカトシ君は一人で男子トイレに入っていってしまった。

 

「というか、何で三葉が津田のボディガードなんてやってるんだ?」

 

「それはですね――」

 

 

 私が横島先生に事情を説明していると、タカトシ君が黙ってトイレから生徒会室へ戻っていってしまった。私と横島先生は慌ててタカトシ君の後を追い掛け、そのまま生徒会室に入る。

 

「三葉……と、横島先生ですか。一応関係者以外立ち入り禁止なんだが」

 

「今の私はタカトシ君のボディガードです」

 

「私はそもそも関係者だろ!?」

 

 

 天草会長の言葉に、横島先生が声を大にして抗議したけども、誰もちゃんと相手にはしてなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 作業中ずっと三葉が側にいたけども、特に意識を割かれることは無かった。むしろ会長たちが途中でイライラし始めた所為で作業が遅れた気もするが……

 

「タカくーん!」

 

「彼女が津田副会長を狙う一人」

 

「っ!」

 

 

 三葉が勘違いしているのをいいことに、畑さんがまた余計な事を三葉に吹き込む。というか、三葉もいい加減気付いてもよさそうなんだがな……

 畑さんに嘘を吹き込まれた所為か、三葉は俺と義姉さんの間に立って両手を広げた。それを見た義姉さんは、三葉に抱き着いた。

 

「な、なんの真似ですかっ!?」

 

「えっ? ハグじゃないの?」

 

「義姉さん、ちょっとこっちへ」

 

 

 勘違いをした義姉さんに、三葉がどうしてあのような行動を取ったのかを説明する。

 

「――という事らしいです」

 

「なるほど、タカ君の命を狙う人がいっぱいいるって勘違いしてるんだね。というか、あの子もタカ君の事を少なからず想ってるのなら、そんな勘違いするとは思えないんだけどな~」

 

「三葉は勉強が苦手ですし、純真なんですよ」

 

「確かに、ピュアな感じがするね」

 

 

 それで納得するのもどうかとは思うが、義姉さんはとりあえず納得してくれた。

 

「えっと、三葉さん?」

 

「はい!」

 

「タカ君の事は私が家まで送るから安心して。それから、タカ君は貴女に護ってもらう程弱くないよ?」

 

「それは分かってますけど、大勢のヒットマンにねらわれたらさすがのタカトシ君も――」

 

「それ、貴女の勘違いよ。畑さんが意図した『狙われてる』って言うのは――」

 

 

 義姉さんが三葉の耳元で何かを囁くと、三葉の顔がみるみる赤く染まっていく。染まった原因は、勘違いに気付いたからか、それとも――

 

「そ、それじゃあタカトシ君! 私、こっちだから!」

 

「あ、あぁ……気を付けて帰れよ?」

 

「う、うん!」

 

 

 顔を真っ赤にして走り去った三葉を写真に収めていた畑さんに鋭い視線を向けると、慌てて言い訳を始めた。

 

「わ、私は別に勘違いさせるつもりはありませんでしたからね? 三葉さんが勝手に思い違いをしただけで、面白そうだから黙ってたわけじゃないですから」

 

「俺は何も言ってませんが?」

 

「あっ……」

 

「まぁまぁタカ君。タカ君が大勢の女の子に想われてるのは確かなんだし、今回は許してあげたら? もちろん、さっきの写真は消去してもらってさ」

 

「……そうですね」

 

 

 これ以上怒るのも面倒だし、畑さんからカメラを没収して隠し撮りしてた全てを消去して、俺は義姉さんと家に帰る事にしたのだった。




大抵の相手ならタカトシに勝てないだろうし……

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