桜才学園での生活   作:猫林13世

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苦労してるのは何時もの事


気苦労の度合い

 テストが近くなってきて、私はタカ兄とお義姉ちゃんに監視されながら勉強する日々を過ごしている。いい加減信用してもらいたいと思う一方で、恐らく監視されなければ勉強なんてしないだろうと分かっているので、私は大人しく二人の内どちらかの監視を受けながら勉強に励んでいる。

 

「――というわけで、最近発散出来てないんだよね~」

 

「いきなり何を言いだすんだ、お前は」

 

「まぁ、それがコトミだからね……」

 

 

 トッキーとマキに口を聞いてもらいながらお昼休みを過ごしていると、何故か教室が色めきだした。この反応はタカ兄が教室に来たのか。

 

「タカ兄、どうかしたの?」

 

「急な用事が入ったから、今日は俺も義姉さんもお前の勉強を見てやれなくなった」

 

「本当っ!」

 

 

 それじゃあ、今日は久しぶりに発散する事が――

 

「喜んでるところ悪いが、シノ会長たちがお前の面倒を見てくれることになってるから、くれぐれも迷惑をかけないようにな」

 

「私だってそれくらい分かってるよ」

 

 

 会長たちなら多少ふざけても何とかなるとは思うけど、わざわざ私の為に時間を割いてくれているのだ。その恩を仇で返すような事はなるべくしないようにと心掛けている。

 

「なるべくではなく、絶対にしないでくれよな?」

 

「また心を読んだでしょ」

 

「お前は顔に出やすいだけだ」

 

 

 タカ兄は頑なに読心術を使っている事を認めようとしないけども、周りから見ればどう考えても心を読んでいるようにしか見えないんだよね……実際、私たちの会話を盗み聞きしてたクラスメイトが驚いてるし……

 

「そういうわけだから、洗濯物は取り込んでおいてくれ」

 

「分かってるよ」

 

 

 そもそもそれくらいしかお手伝い出来ないし……最近は少しくらい手伝った方が良いんじゃないのだろうかと考えなくもないけども、手伝えば手伝うだけ余計な仕事を増やすだけだと考え大人しくしているのだ。

 

「訳の分からない事を考えてる暇があるなら、少しくらい復習したらどうなんだ? 次の時間、小テストなんだろ?」

 

「何故タカ兄がそれをっ!? って、タカ兄ならそれくらい知ってて当然か」

 

 

 タカ兄に言われてしまったから、私は仕方なく教科書を開き、何処が範囲か分からない現実に打ちのめされたのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシから頼まれたから仕方ないけど、私に会長と七条先輩、そしてコトミを纏めて相手にするだけの体力があるだろうか……

 

「(最近は会長も七条先輩も大人しくなってきているけど、それはあくまでもタカトシがいる時だけ。いない時は相変わらずの酷さだし、私がストッパーとして機能するかどうかも不安だわ……)」

 

 

 タカトシや森さんと比べれば一枚落ちる私が、三人を抑え込む事が出来るかどうか聞かれれば、微妙としか答えられない……せめてもう一人くらいまともな人がいてくれれば……

 

「あら、萩村さん? 考え事かしら?」

 

「五十嵐先輩……いえ、放課後に会長と七条先輩、コトミの三人を相手にしなければいけなくなってしまって、ちょっと不安なだけです」

 

「三人を相手に? どういう状況なのかしら」

 

 

 私は五十嵐先輩に事情をかいつまんで説明した。すると納得してくれたようで、私に同情的な視線を向けてきた。

 

「私もあの三人を纏めて相手にする自信はないわね……そんな事が出来るのは、タカトシ君か英稜の森さんくらいでしょう」

 

「そうなんですよね……そうだ! 五十嵐先輩もご一緒に如何ですか? 先輩ならタカトシも許可してくれるでしょうし」

 

「私が?」

 

 

 そんな事考えてもいなかったのだろう。私の提案に意外そうな表情を浮かべた。

 

「今日はコーラス部の活動もないし、風紀委員の活動も見回り程度しかないからいけなくはないけど……」

 

「じゃあお願いします! もし一人で相手したら、明日寝込んじゃいそうですし」

 

「それ程なの?」

 

「タカトシの前では大人しくなってますけど、あの三人は基本的にぶっ飛んでる人たちですから……」

 

「それは知ってるけど……」

 

 

 私の必死さが伝わったのか、五十嵐先輩は「一応タカトシ君に聞いてみる」と言って去って行った。

 

「(これで心労を折半できるかもしれないわね……)」

 

 

 五十嵐先輩には悪いけど、半分でも引き受けてくれる人がいないと過労で倒れる事間違いなしでしょうし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 萩村さんに頼まれ、私はタカトシ君に許可を得る為にタカトシ君の教室に顔を出した。

 

「あれ? 五十嵐先輩だ」

 

「ヒッ!?」

 

 

 男子生徒に声をかけられ、私は思わず飛び退いた。失礼な態度だとは思うけども、こればっかりは我慢出来ないのだ。

 

「どうかしたんですか?」

 

「あっ、タカトシ君……」

 

 

 ちょうど教室に戻ってきたタカトシ君に、さっき萩村さんから頼まれた事を話した。するとタカトシ君は苦笑い気味の表情で私を見据え、そして頭を下げた。

 

「ご迷惑でなければ、カエデさんにもお願い出来ますか?」

 

「もちろん。後輩の面倒を見るのも先輩の務めだし、何より萩村さんの気持ちも理解出来るから」

 

「本当に申し訳ないです」

 

 

 別にタカトシ君が悪いわけではないのに、彼は本気で申し訳なさそうにもう一度頭を下げた。相変わらずしなくてもいい苦労を背負いこんでるんだなと思う反面、やっぱりいい子なんだなと再確認させられた気持ちになったけど、タカトシ君から頼られるってなんだかいいわね。




こんな生活してたら胃に穴が開きそう……

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