桜才学園での生活   作:猫林13世

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普通なら優勝確実ですが


全国大会 一日目

 クイズキングの全国大会の為にスタジオにやってきたけど、こういう場所って普段来ないから興味があるな……

 

「あんまりキョロキョロすると目立つわよ? ただでさえアンタ、目立ってるんだから」

 

「目立つことをした覚えはないんだがな……」

 

 

 さっきからすれ違う人々見られてにいるのは分かってるんだが、何で見られているのかはイマイチ分からないんだよな……何かしたっけか?

 

「タカトシ君の見た目で制服を着てなかったら、何処かのタレントさんかと思われてるんじゃないかな?」

 

「そうなんですかね?」

 

 

 そんな理由で見られていたのかと思うと、ちょっと微妙な気分になってくるが、ライバル視されているわけじゃないなら気楽に行けそうだ。

 

「そちら、お連れさん? お連れさんはこちらからスタジオに入れないですよ」

 

「……参加者です」

 

「こ、これはどうも……失礼しました」

 

 

 スタジオに入ろうとした時にスズが警備員に止められそうになったが、彼女の眼力と持参した生徒手帳のお陰で無事に入る事が出来た。

 

「あれって、ミヤっちじゃない?」

 

「本当だ! 実際に見るのとTV越しで見るのとでは、なんだか印象が違うな」

 

「番組MCですからいても不思議ではないと思っていましたが、やっぱり実物は綺麗ですね」

 

 

 三人が盛り上がっているが、実の所俺はあんまり知らないんだよな……TVを観てる暇がないっていうのもあるけど、芸能人とかアナウンサーとかは新しい人がバンバン出てくるし、興味を持てないってのもあるんだが。あの人は辛うじて見た事あるし、芸能人だと言われても納得出来るくらいの人だとは分かるが……

 

「(前に柳本が言ってた女性タレントの事も、辛うじて知ってたくらいだし……)」

 

 

 新聞で結婚の記事が芸能面に載ってたから知っていたが、あれだって偶々目についただけだしな。

 

「とりあえずまずは一回戦だな。タカトシは温存しておくとして、我々だけで頑張るぞ!」

 

「何ですか、その『温存』って?」

 

 

 一回戦は全員参加が出来るはずだし、温存も何も無いと思うんだが……

 

「タカトシは我々の切り札だ。先に進むにつれて難しくなるであろう問題に対応してもらう為、序盤は頭を休めてもらいたい」

 

「はぁ……ですがそれならスズの方が良いんじゃないですか?」

 

「萩村は逆に、先に答えてもらって高校生であることを証明した方が――」

 

「それってどういう意味ですかね?」

 

 

 スズの纏っている雰囲気が一変し、シノさんは慌ててその場から逃げ出した。クイズ開始前に何だか目立ってしまったような気がするんだがな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いよいよ始まった大会だけど、私は今違う事が気になっている。ライバルチームの女子メンバーの視線が、タカトシ君に向けられているような気がするのともう一つ。

 

「アリア、何を見ているんだ?」

 

「モニターに映ってる私、裸リボンしてるように見えるな~って」

 

「余裕があるのは良いですが、ふざけたことは言わないでくださいね」

 

 

 タカトシ君が笑顔で私の事を見詰めているけど、この笑顔は出来る事なら見たくない笑顔だよね……

 

『それでは第一問!』

 

 

 タカトシ君と二人で後ろに下がり、まずはシノちゃんとスズちゃんが答える。別に順番とかは決められていないんだけど、全員で均等に答えられるようにとシノちゃんが提案したのだ。

 

「B?」

 

『残念。お手付きは一回休みです』

 

「す、すまん……」

 

 

 シノちゃんは緊張からか、普段なら答えられそうな問題を間違えてしまった。

 

「(お手付きかぁ……)」

 

 

 私はその語感から、手を穴に突き刺す光景を思い浮かべて微笑んでしまった。

 

「(勘違いされているのが幸いですが、変な事を思って笑うな)」

 

「(勘違い? なんて思われてるの?)」

 

 

 タカトシ君は読心術が使えるのではないかと言われてるくらいだし、他のチームの人が何を考えているのかが分かるのだ。

 

「(一回くらい休んでも問題ないと、余裕の表れだと思われているようです。あと、読心術など使えませんからね)」

 

「(でも、さっきから他のチームの人が何を考えているのか見てるんでしょ?)」

 

「(表情から何を考えているのかを推測しているだけです。心を読んでいるわけではありません)」

 

 

 それって限りなく読心術に近いんじゃないかと思ったけど、タカトシ君が頑なに認めようとしないのならこれ以上言っても無駄だしね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私のお手付きから流れが悪くなってしまったのか、我々は善戦したが一回戦で敗退してしまった。

 

「みんな、すまない……」

 

「悔しいんだね、シノちゃん。さぁ、私の胸でお泣き!」

 

 

 アリアが両手を広げて私を受け止めてくれたので、私はアリアの胸に顔を……

 

「(何だか別の理由で泣きたくなってきたな)」

 

 

 負けた悔しさももちろんあるのだが、同級生の胸がここまで大きいと、なんだか惨めな気持ちになってくる。

 

「そんなに泣かないの。一回戦で負けたチームも、敗者復活戦があるから頑張れ」

 

 

 泣いていた私の肩を叩きながらミヤっちがそう言ってくれた。私とアリアは顔を見合わせて頷き、タカトシたちにもそれを告げた。

 

「ならまだ気は抜けませんね」

 

「そうだな! ちょっとお手洗いに行って化粧を直してくる!」

 

「私も行くよ、シノちゃん!」

 

 

 泣いた所為で落ちてしまった化粧を直す為、私はアリアを伴ってお手洗いに向かったのだった。




暇つぶしで他人の心を読むなよ……

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