桜才学園での生活   作:猫林13世

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大変な問題が……


芸術交流会後の騒動

 芸術交流会の後、再び私とタカトシとの関係についての噂が流れ始めた。

 

「まったく、畑のヤツ……」

 

 

 噂の内容は、私が公衆の面前でタカトシにキスをする関係だという事で、私にとっては恥ずかしくもあるが、ある意味光栄な内容なのだが、アリアや萩村からの視線が鋭すぎるので、こうして畑に注意しに来たのだ。

 

「お前は反省してもすぐに別の問題を発生させるな」

 

「え~、会長も満更じゃないんじゃないですか~? 私が観察した限りですが、会長が正面から否定したという噂は入ってきてませんが」

 

「そ、そりゃタカトシとキスできる間柄という内容自体は悪くない――じゃなくて!」

 

 

 畑に乗せられて危うく本来の目的を見失うところだった……

 

「事実無根の噂を流すのは止めろ! あれはお前が狙ったSEだったんだろ?」

 

「別に狙ったわけじゃないんですけどね~。タイミングよく、会長たちがキスするフリをしたところに、森副会長がストローで飲み物を啜っただけで、私の意思が介入したわけでは――」

 

「タカトシが言ってたように、狙って近づいたんだろ?」

 

「はい」

 

 

 タカトシが気配察知で畑の動きを正確に掴んでいたのと、森が事実説明をしたお陰で噂は流れないと思っていたんだが、畑の情報操作能力を甘く見ていたようだな……

 

「本当ならここにタカトシを連れてきたかったんだが――」

 

「そ、そんなことしては新聞部が活動休止になってしまいます!」

 

「……分かってるんなら、これからは事実のみを報道するように」

 

「仕方ありませんね。これからは少し大人しくする所存であります故、今回は許していただきたく存じます」

 

「噂の収束に努めるように」

 

 

 そもそも私とタカトシの関係は会長・副会長でしかないのだから、公衆の面前でキスをするはずがないのだ。

 

「(自分で思っていて情けなくなってきたが、関係が進展していないのはアリアたちも同じだしな)」

 

 

 タカトシとの関係が進展しているのなど、森くらいだしな……

 

「兎に角今回は厳重注意で済ますが、次は無いと思えよ?」

 

「分かってます。ほとぼりが冷めるまで大人しくします」

 

「冷めても大人しくしてくれると、我々も余計な仕事をせずに済むのだがな」

 

「少しくらいの娯楽は必要だと思いますので」

 

「それは各々が見つけるべき事であって、お前が扇動する必要は無いだろ」

 

 

 私ではどうも威力が弱いのか、あまり反省している様子は見られないが、畑もこれで少しは大人しくなるだろう。もしならなかったら、次は容赦なくタカトシを新聞部に送り込めばいいだけだしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シノっち濃厚キス事件は、桜才学園よりもむしろ外部で話題になっている。桜才学園の生徒たちなら、タカ君がそんな事を許すはずもないと分かっているから、冗談めいた噂で済んでいるが、外部の人間はタカ君の為人をちゃんと知っている人ばかりではないのだ。

 

「凄い勢いでスレッドが建ってますね」

 

「何ですか、それ?」

 

 

 私が携帯でとあるサイトを観ていたら、背後からサクラっちが覗き込んできた。

 

「非公式タカ君ファンクラブサイトです」

 

「そんな物が……」

 

「サクラっちは知らなかったでしょうが、結構な会員数なんですよ?」

 

 

 誰が作ったのか、誰が運営しているのかも分からないけども、かなりの人数が登録しており、例の演劇を観てた人間がスレッドを建て、レスが付いている。

 

「あら、シノっち暗殺計画まで持ち上がってる」

 

「どれだけなんですかっ!?」

 

「まぁ、タカ君とキスしたなんて知られれば、そうなるんじゃないかな、サクラっち?」

 

「意味ありげに私の唇を見ないでください」

 

 

 サクラっちもタカ君とキスした事がある。しかも公衆の面前でだ。その時の証拠写真さえあれば、このサイトにサクラっち暗殺計画のスレッドが建っても不思議ではないだろう。もちろん、そんな事はしないけども。

 

「運営側もこのスレッドを封鎖するつもりが無いのか、黙認してるようですね」

 

「危なくないんですか?」

 

「実行するはずがないと思ってるのでしょうけども、何処にでも過激派は存在するものだと思うのですがね」

 

「あっ、封鎖されましたね」

 

 

 私たちの会話が聞こえたわけではないでしょうが、シノっち暗殺計画のスレッドは封鎖され、スレッドを建てたアカウントは凍結されたようだ。

 

「そもそも、誰がこんなアングルで写真を撮れたのでしょう?」

 

「少なくとも素人の仕事ではないですよね……」

 

「そもそも演劇中に携帯を操作してれば目立ちますし」

 

「考えても分からないですが、とりあえずシノっちの命の安全は確保されたという事でしょうね」

 

「どうなんでしょう……あれ? こっちには会長が写ってますよ?」

 

 

 サクラっちに言われて、私は自分が写ってる写真を拡大する。これはこの間腕を組んだ時の写真ですね。

 

「こっちも炎上してたようですが、私とタカ君との関係がコメントされてからは、一応は鎮火したようですね」

 

「こんなサイトがあるようじゃ、おいそれとタカトシさんと外で会話出来ませんね」

 

「いったい誰が運営してるんでしょうか……」

 

 

 さっきの写真といい、私とタカ君との腕組み写真といい、あのアングルで写真が撮れる人物など一人しかいないので、私はタカ君にこの事を報告して、運営主に説教してもらう事にしたのだった。




運営主はもちろんあの人……

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