桜才学園での生活   作:猫林13世

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イベントが多い学校だ……


学芸交流会の準備

 全国高校生クイズキングの結果は、桜才新聞で大々的に報じられているらしく、すれ違う生徒たちから応援の言葉や、期待の言葉をかけられる。

 

「おめでとうございます。全国大会は一ヶ月後でしたね」

 

「畑か」

 

 

 掲載されている桜才新聞の前で畑に声をかけられ、私たちは足を止めた。

 

「意気込みなどをお願い出来ますか?」

 

「全国大会までまだ時間があるので、それまでしっかりと勉強しておかねばとは思っている。TVの前で恥ずかしい姿は見せられないし」

 

「私はむしろ、恥ずかしい姿を見て欲しいって思ってたけどね~」

 

「さらっと何を言ってるんだ!? タカトシが別行動だからって、そういう発言は控えてくださいよ」

 

「おや~? そういえば津田副会長はどちらに?」

 

「タカトシなら、生徒会顧問として全国大会の会場に連れていけと騒いでいる横島先生の対処を頼んだので職員室だ」

 

「会場に行って何をするつもりなんでしょうね、あの人は」

 

 

 畑も何となく察しているようだが、あくまでも分からないといった感じで問いかけてきたので、私も憶測でいいならという前置きをしてから答えた。

 

「応援に来ている男子高校生を引っかけて、そのままあわよくば――なんて考えてるんじゃないか?」

 

「実に横島先生らしいですね」

 

「桜才学園の恥になるから、何としても諦めてもらわなければならないな」

 

「では、私はこの辺で。インタビューありがとうございました」

 

 

 畑と別れてからしばらくして、何故か校内で古谷先輩の姿を発見した。

 

「古谷先輩。何故先輩が校内に?」

 

「ちょっと用があってな。それより、TV観たよー。録画もしたし、永久保存版だな」

 

「ありがとうございます……? 先輩、その指どうされたんですか?」

 

 

 よく見ると先輩の指先に絆創膏が貼られてした。何処かで怪我をしたのだろうか。

 

「ちょっと爪を割っちまってな」

 

「爪、ですか?」

 

「ああ。ビデオテープのツメを折る時にさ。ちゃんと切っておけばよかった」

 

「ちょっと何言ってるか分からないですね……」

 

 

 辛うじて聞いたことはあるが、実際にやった事は無いのでどういう状況なのかイマイチ把握出来ずにいたが、とりあえず絆創膏の下は爪が割れただけだと分かり、とりあえず安心して古谷先輩と別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシ君が奮闘してくれたお陰で、横島先生は同行を諦めてくれたようで、私たちは本戦に向けての勉強に集中する事が出来るようになった。

 

「やっ!」

 

「またお前か」

 

「そんな嫌そうな顔しないでくださいよ~」

 

 

 生徒会室でクイズに向けての勉強会をしていたら、畑さんが現れ、シノちゃんはあからさまに嫌そうな顔を見せたので、畑さんが少し不満げに唇を尖らせる。

 

「それで、今度は何の用だ?」

 

「今月末にある、学芸交流会の事でちょっとご相談がありまして」

 

「あぁ、その事なら理事長から聞いている」

 

「そうですか。なら話は早いですね。お願いします」

 

「ん? まて、何をお願いされたんだ、私たちは?」

 

 

 畑さんの言葉に首を傾げ、私たちに視線で問われたけども、私もタカトシ君も、スズちゃんも首を振ってシノちゃんのが懐いたのと同じ疑問を畑さんにぶつけた。

 

「聞いていたのではないのですか?」

 

「学芸交流会があるというのは聞いているが、それ以外は何も聞かされていない」

 

「それは困りましたね。既に台本も作成済みなのに」

 

「台本? 劇でもやるのか?」

 

「その通りです。生徒会のメンバーに手伝ってもらえるという事で、既に轟さんに台本をお願いし、配役も既に済んでいるとか」

 

「えっ、ネネが脚本なの……大丈夫なんですか?」

 

 

 スズちゃんのお友達である轟さんは、今でも思春期全開だと聞いているし、ちょっとだけ興味が惹かれるわね。でもまぁ、あんまりひどかったらタカトシ君が無かったことにするでしょうし……ん?

 

「タカトシ君が脚本担当じゃ駄目だったの?」

 

「津田先生のですと、学芸交流会のレベルで収まらなくなりそうでしたので」

 

「なるほど……タカトシの脚本なら、それだけでお金が取れるだろうしな」

 

「取れるわけ無いだろ」

 

「それで、皆さんは参加してくれるのですか?」

 

 

 畑さんの言葉に、私たちは顔を見合わせ、全員が「仕方がない」といった感じで頷いた。そしてシノちゃんが代表で畑さんに答える。

 

「本来ならもう少し早く言って欲しかったが、既に決まってしまっているなら仕方ないな。私たちも手伝おう」

 

「ありがとうございます。それじゃあさっそく明日から劇の練習が始まりますので、放課後体育館にお願いします」

 

「えっ、そんなにすぐなのか?」

 

「何せ今月末ですので」

 

「ちなみに配役ってどうなってるんですか?」

 

 

 スズちゃんの質問に、畑さんは台本を取り出して説明を始めてくれた。

 

「主人公は津田副会長、ヒロインは天草会長、敵役が七条さんで、萩村さんは妖精だそうです」

 

「妖精?」

 

「まぁ身長で選ばれた感も否めませんが、詳しい事は私には分かりませんので、後で轟さんにでも聞いてください。では、私はこれで」

 

 

 現れた時も急だけど、いなくなる時も急で、畑さんはあっという間に生徒会室からいなくなり、残された私たちは、全員でため息を吐いた。




古谷さんのセリフ、分からない人もいるだろうな……ちなみに、自分もだいたいでしか分からない……

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