桜才学園での生活   作:猫林13世

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またしても誰かが勝ち組に……


クイズ大会地区予選

 普段は校内ラジオなんて気にしないんだけど、今日は何故か気になって耳を傾けていた。

 

『――というわけですね』

 

『なるほどー』

 

「今日は会長がゲストなんだね」

 

「らしいな」

 

 

 トッキーと教室でお弁当を食べながらラジオを聞いていたので、私の言葉にトッキーも相槌を打った。

 

『ゲストの天草会長は博識ですねー』

 

『いやいや、それ程でも』

 

『クイズとか得意なんじゃないですか?』

 

『あっ、クイズと言えば――』

 

 

 畑さんのセリフがフリにしか聞こえなかったけど、どうやら仕込みのセリフだったようだ。

 

『今日夜七時から放送の高校生クイズキングに、我々生徒会が出ているのでどうぞご覧ください』

 

「TVでこーゆー番宣あるよな」

 

「そういえば参加するって言ってたっけ」

 

 

 ちょうどその場にいたんだけど、今日放送だって事忘れてた。

 

「トッキー、一緒に視る?」

 

「視ねぇよ! というか、部活だし」

 

「そっか、残念」

 

 

 今日はタカ兄がバイトで家に誰もいないからゆっくり出来ると思ったんだけどな……まぁ、一人で視ようかな。

 

「あっ、コトミちゃんいた~」

 

「アリア先輩? どうかしたんですか?」

 

「今日の夜、ウチで番組鑑賞会をするから来ない? タカトシ君はバイトだって言ってたし、コトミちゃん一人なんでしょ?」

 

「そうですね。お義姉ちゃんも来れないって言ってましたし」

 

「カナちゃんなら、ウチに来る予定だよ~」

 

「あっ、そうだったんですね」

 

 

 道理でタカ兄がバイトだっていうのにお義姉ちゃんがウチに来ないわけだ……

 

「それじゃあ、後で出島さんを迎えに遣わせるね~」

 

「おぉ! 何だかお嬢様になった気分ですよ」

 

 

 家に迎えなんて、私のような庶民には縁が無いと思ってたからな~。今日はいい気分で過ごせそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカ君はバイトで来られなかったけど、アリアっちの家で高校生クイズキングの地区予選を視聴する事になったので、私とサクラっちもアリアっちの家にやってきた。

 

「普通に入って良いんでしょうか?」

 

「どうなんでしょう。そこにカメラがありますし、ちょっとくぱぁしてみたら入れてくれるんじゃないですかね」

 

「アンタは何を言ってるんですかね?」

 

「ようこそ、いらっしゃいませ」

 

「お邪魔します、出島さん」

 

 

 サクラっちにタカ君みたいなツッコミをされていたところに、出島さんが中から現れて私たちを案内してくれた。

 

「遅かったな! もうすぐ始まるぞ」

 

「サクラっちがカメラの前でくぱぁしようとしてたので――」

 

「少し黙っててくれませんかね?」

 

 

 サクラっちにセリフをぶった切られ、私は大人しくスズポンの隣に腰を下ろした。

 

「ところで、コトちゃんは結果を知らないんでしたっけ?」

 

「タカ兄に聞いても教えてくれなかったので」

 

「私が口止めしてたからな」

 

「私もお嬢様に結果を聞いたのですが、なかなか口を割らなかったので、身体に聞いたけどダメでした」

 

「もう少しで落ちるところだったけどね」

 

「………」

 

「タカトシさんがいないからって、皆さん酷すぎませんかね?」

 

 

 スズポンが開いた口がふさがらないといった感じでサクラっちを見て、サクラっちがツッコミを入れた。タカ君がいないと、サクラっちの負担増だね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 番組が始まりお喋りを止めて視ていたが、私が映ったところでコトミが口を開いた。

 

「会長、化粧してたんですか?」

 

「TVに出るから、少しだけな……」

 

「そんなことしなくても、会長たちなら目立ったんじゃないですか~? ただでさえタカ兄がいるだけで目立ったんでしょうし」

 

「まぁ、また余計なライバルが増えた気がする……」

 

 

 進行役のアナウンサーが、執拗にタカトシにインタビューしてたような気もするし……

 

「おっ、サクラ先輩だ」

 

「は、恥ずかしいです……屈辱です」

 

 

 ○×クイズで間違えた森が、粉ゾーンに顔面から突っ込んだシーンが映り、森は恥ずかしそうにテレビから顔を背けた。

 

「ま〇ぐり返しされてセルフぶ〇かけされた時くらいの屈辱感?」

 

「いい加減下ネタは止めませんか?」

 

「これくらい普通だろ? タカトシがいないんだし」

 

「いないところでも止めろって言ってんだよ!」

 

 

 森をからかって遊んでいたら、再び森がTVに映った。

 

『サクラ、頬が汚れてる』

 

『あ、ありがとう、タカトシ君』

 

「えっ、こんなところも撮られてたのっ!?」

 

『タカ君、この後タカ君のウチに行ってもいい?』

 

『構いませんが』

 

「……タカトシが視てたらTV局にクレームの電話をしそうなくらいの隠し撮りだな」

 

「というか、完全に狙ってましたよね、これ」

 

 

 こんなところ、タカトシを狙って無ければ撮れないだろうが……つまり、畑以上に隠し撮りが上手いカメラマンがいたという事か……

 

「あっ、今タカ兄がこっち睨んだ」

 

「これTVよ? そんな事あるわけ――」

 

『何撮ってるんですかね?』

 

『あっ、いえ……』

 

「……タカ兄、隠し撮りに気付いてたみたいですね」

 

「それをそのまま放送するとは……プロデューサーは死にたいのか?」

 

 

 その後は特に盛り上がりもなく、結果発表になり、無事我々桜才学園が予選を突破した。

 

「おめでとうございます! っと、スズ先輩がおねむでしたね」

 

「これで本戦に出られるから、コトミはタカトシ不在の間は頑張れよ」

 

「だ、大丈夫ですよ?」

 

 

 静かに盛り上がり、私たちは寝ている萩村を起こさないように今後の事を話し合ったのだった。




このカメラマンは畑イズムを継承しているのか……

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