生徒会室で作業していたら、横島先生がやってきた。
「夏休み明けから忙しそうだな」
「横島先生、何かご用ですか?」
この人が来てもあまり役に立たないので、生徒会顧問だけどあまり来てほしくないんだよね……
「そんなに嫌そうな顔をするなよな……」
「先生が現れると、タカトシの機嫌が悪くなる確率が高いので……」
「それを言うな……」
横島先生が項垂れ、何かに気づいたように腹部をさすりだした。
「夏太りか……ちょっとばかりお腹が出てる……」
「先生、夏の間だらだらし過ぎだったんじゃないですか?」
「シノちゃん、実は私もなんだよね」
「アリアもか?」
見た感じ、アリアのお腹は出ていない気がするんだが……
「最近はみブラ気味で」
「こらー!」
「くわー!!」
「会長も横島先生もやかましいですよ」
「す、すまん……」
ちょうど時間も来たので、私たちは生徒会室から移動する事にした。
「私たちは次体育だし、更衣室に向かうぞアリア」
「分かった~。それじゃあタカトシ君、生徒会室の戸締り、よろしくね~」
「分かりました」
タカトシに戸締りを任せて、私たちは更衣室に向かう。既に何人か着替えているので、急いでロッカーを確保した。
「しかし、夏休みも終わったばっかだというのに、もう体育かぁ……」
「まだ暑そうだよね~」
これで水泳だったらまだ良かったんだが、普通の体育だと憂鬱になってくるな……
「あれ、ブラが落ちてる」
「っ!?」
背後から聞こえた言葉に、私は肩を震わせた。
「何で私が落ちブラしてると分かった?」
「え、いや……」
五十嵐の言葉に慌てて振り返ると、本当にブラが落ちていたようで彼女の手にブラが握られていた。というか、随分と大きなブラだな……
「シノちゃん、気にし過ぎじゃないかな?」
「持ってる者であるアリアには分からないだろうが、かなりショックなんだぞ……」
「えっと……なんだかすみませんでした」
五十嵐が申し訳なさそうに去って行ったが、残された私はかなり複雑な思いを懐きながら授業を済ませた。
「はぁ……憂鬱だ」
「シノちゃん、まだ気にしてるの?」
「あれだけの物を見せられて、気にしないヤツの方が少ないと思うぞ……」
憂鬱な気分になった所為か、なんだか作業効率も落ちてきた気がするし……
「集中出来ん」
「暑いですからね。せめて涼しくなる髪型にしてみてはどうですか?」
「そうだな」
気分転換になるかもしれないし、髪型を変えるのは良いかもしれないな。
「涼しくなる髪型か……こんな感じか?」
私は後ろ髪を前に持ってきて目を隠し、口だけ見えるようにして笑ってみる。
「こわっ!? 『涼しくなる』の意味が違いますよ!?」
「ん? 何か間違ったか?」
萩村が怯えてしまい、結局今日の作業はなかなか終わらなかった。
サクラっちと廊下を歩いていて、ふと窓の外に視線を向けると、雨が降り出していた。
「急に降ってきたね。タカ君に傘を持たせてもらってよかった」
「プールも中止になっちゃいました」
「サクラっち、泳げるようになってから楽しそうだね」
タカ君に鍛えてもらって、サクラっちは漸くまともに泳げるようになったのだ。
「まぁ、全く泳げなかった時は憂鬱でしかなかったでしたから……あっ、ちょっとトイレに」
「もうすぐ会議だから、急いでね」
サクラっちがトイレに入って数分、漸くサクラっちが出てきた。
「お待たせしました」
何故か服装が乱れているサクラっちを見て、私は時間がかかった理由が理解出来た。
「(下に水着を着てきたんだね)」
「会議に行きましょう」
「そうだね」
サクラっちと共に会議室に向かい、無事に会議が終わったタイミングで外を見ると、雨が上がっていた。
「晴れたね。あっ、この後タカ君に会いに行くけど、サクラっちも来る?」
「お邪魔じゃなければ」
「別に邪魔じゃないよ。その前に、水着は脱いできたら? 雨も降って湿度も上がってるし、蒸し暑く感じると思うよ」
「うっ……」
自分が下に水着を着ているのを指摘され、サクラっちは恥ずかしそうに更衣室に向かっていった。まぁ、水着でも特に問題ないだろうけど、普通の服の方が通気性も良いし、あせもになる心配も減るだろうしね。
会長と一緒に桜才学園を訪れると、タカトシさんが校門付近の掃き掃除をしていた。
「タカくーん!」
「義姉さん? サクラも」
「こんにちは」
タカトシさんに挨拶したタイミングで、突風が吹いて私のスカートが翻った。
「サクラっち、替えのパンツ黒色だったんだね」
「か、会長!」
「何だか余計な事を言っちゃったかな? 水着のままなら見られても大丈夫だったのにね」
「た、タカトシ君……見ました?」
「……少し見えた」
申し訳なさそうに頭を下げたタカトシさんに、私も頭を下げた。
「見苦しい物をお見せして申し訳ございません」
「い、いえ……こちらこそ見てしまって申し訳ございません」
「これはまた、サクラっちがリードを広げたかな? コトちゃんとは違う義妹が出来る日も近いかな」
「何を言うんですか!」
会長の言葉に、私は顔を真っ赤にして抗議したけど、タカトシさんは何も言わなかった。
原作では水着のままでしたけどね