桜才学園での生活   作:猫林13世

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大変な人もいるな……


それぞれの一日

 部活はあるけど、それだけじゃ全国相手に戦えないので、私は夏休みの間早朝ジョギングを日課にする事にしている。他のメンバーも誘ったんだけど、全員に断られちゃったんだよね……

 

「(そういえば、タカトシ君も時間がある時は走ってるって言ってたっけ)」

 

 

 タカトシ君は学業以外にもいろいろと忙しいらしいので、無理に誘ったら悪いかなって思って誘わなかったんだけど、タカトシ君なら私のペースにもついてこれるだろうから、一緒に走るには最適な人だと思うんだよね……

 

「(人の身体って不思議だな……身体が水分を欲している一方で、身体から水分が出たがってる)」

 

 

 急に催してきたので、私は茂みで済ます事にした。本来なら何処かお店に入ってトイレを借りたいのだが、生憎近所にお店は無く、探している間に我慢の限界が訪れること必至なのでやむを得ないのだ。

 

「ふー、すっきりした~」

 

 

 人がいない事を確認して、私は土手の茂みに隠れて水分を放出した。

 

「三葉?」

 

「っ!?」

 

 

 背後から声をかけられ、私は慌てて振り返る。

 

「タカトシ君!? ……と、ボア君?」

 

 

 何でスズちゃんの家の犬であるボア君がタカトシ君と一緒にいるんだろう?

 

「スズ、今日は出かけるらしいから、ウチで預かる事になったんだ」

 

「そーなんだー」

 

 

 私の表情から何でボア君がいるのか気にしてるのを察したタカトシ君が、事情を説明してくれた。

 

「ちょっとゴメン。こいついつも、そこの草むらでマーキングを――」

 

「うわわわわ!」

 

「……どうかしたの?」

 

 

 今私が用を足した場所に行かれるのは恥ずかしいので、私は慌ててボア君の行く手を阻む事にした。それで何となく察してくれたタカトシ君が、ボア君を引っ張って土手の上に移動してくれた。

 

「それじゃあ、散歩の続きをして俺は帰るよ」

 

「うん……ありがとう」

 

「どういたしまして、で良いのか?」

 

「た、たぶん」

 

 

 具体的な事は何も言ってないけど、なんだか恥ずかしい気持ちになった……今日はこのまま家に帰ろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシにボアの相手を任せて、私は会長たちと買い物に来ていた。本当ならタカトシにも付き合ってもらいたかったんだけど、何かを察してボアの相手を申し出てくれたのよね……

 

「この服、可愛いな……」

 

 

 タカトシがいれば似合うかどうか聞いたんだけど、会長や七条先輩に聞いても仕方ないし、自分の感性を信じる事にしよう。

 

「成長期だから、大きいサイズを買おう」

 

「スズちゃん、無理しないで自分に合ったサイズの方が良いと思うよ?」

 

「喧嘩売ってるのか―!」

 

 

 確かに、あまり背は伸びていないけども、成長期なのは間違いないのだから、少しくらい見栄を張ったって良いじゃないか……

 

「このブラ、可愛いな」

 

 

 私が七条先輩と揉めている横で、会長が下着を眺めている。慎ましい胸であることを気にしている会長だが、新しいブラは必要なのだろうか?

 

「揺れブラ現象を起こす為に、大きいサイズを買おう……」

 

「(か、悲しすぎる……)」

 

 

 ちなみに揺れブラとは、自分より大きいサイズのブラを着ける事により、胸が揺れて見える事である。

 

「会長、私が間違っていました。見栄を張らずに自分に合ったサイズを買いましょう」

 

「な、なんだいきなり……」

 

 

 何だか自分もダメージを負った気になり、私は会長に合ったサイズのブラを手渡し、その気持ちを断ち切る事にした。

 

「この水着派手だね~。買ってタカトシ君に見せてあげようかな~?」

 

「っ!? 人前でこんな格好するな!」

 

「まぁ確かに、恥ずかしいかな~」

 

「(意外と純だった……)」

 

 

 昔は平気でノーパンで過ごしてた七条先輩が、頬を赤らめて視線を逸らすなんて……

 

「人前でこんな格好したら……」

 

「意外性のないじゅんだ! というか、タカトシが察したのってこの人の存在!?」

 

 

 通りすがりの横島先生が、股の辺りを濡らしているのを見て、私はタカトシの先見の明を羨むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜遅く、やる事も終わったので寝ようとベッドに寝ころんだら、何故かコトミが部屋にやってきた。

 

「どうかしたのか?」

 

 

 確かコトミは一時間前には寝たはずなんだが……

 

「怖い夢を見たので、一緒に寝ても良いですか?」

 

「しょうがねぇな……」

 

 

 昔から怖い夢を見た時は人のベッドに潜り込んできてたが、高校生にもなってやるとは……まぁ、追い返して寝不足になられても困るからな……

 

「義姉さんのところじゃ駄目だったのか?」

 

「タカ兄の方が安心出来る」

 

「そんなものか」

 

 

 客間で義姉さんが寝ているのだが、どうやらコトミの中では俺の方が良いらしい。普通同性の方が落ち着くとおもんだがな……まぁ、兄妹だからって事なのかもしれないな。

 

「ん?」

 

 

 部屋の外に義姉さんの気配を感じ、俺は首を傾げる。ちなみに、コトミは既に寝息を立てているので、音を立てずに扉に向かう。

 

「タカ君……」

 

「どうかしたんですか?」

 

 

 何故か目を潤ませている義姉さんを見て、俺は何となく嫌な予感がした。

 

「エロい夢を見たから、一緒に寝てもいい?」

 

「お帰りくださいませ。というか、変な事を言うな」

 

 

 義姉さんを客間に追い返して、俺はベッドに戻ろうとして――

 

「あっという間に占領されたな……」

 

 

 我が物顔でベッドの中央に移動していたコトミを見てため息を吐いたのだった。




主に大変なのはタカトシだった……

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