桜才学園での生活   作:猫林13世

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それくらいで風邪を引くなよ……


風邪を引いたコトミ

 コトミちゃんが風邪を引いたらしく、私は朝から津田家を訪れた。しかし学校が休みだったからよかったけど、平日だったらどうしてたんだろう?

 

「タカ君、おはよう」

 

「おはようございます、義姉さん。すみません、こんな時間から」

 

「ううん、気にしなくて良いよ。タカ君に頼られるのは嬉しいし、今のところ私以外に頼らせるつもりも無いから」

 

「はぁ……とりあえず俺は家事を終わらせますので、コトミの様子を見ておいてください。目を離すとゲームでもしそうですから」

 

「テレビはリビングにしか無いんだし、大丈夫じゃない?」

 

「いえ、ポータブルゲームです」

 

 

 今の時代、携帯ゲームも普及してるので、確かにその可能性はありそうですね……タカ君に頼まれてコトミちゃんの部屋に向かうと、中は少し静かすぎるように感じた。

 

「コトちゃん? 起きてますか? 入りますよ?」

 

『お、お義姉ちゃん!? ちょっと待ってください』

 

 

 どうやら起きていたようだが、コトちゃんは少し慌ててるように感じられた。恐らくタカ君が心配してたようにゲームでもしているんだろうと思い、私はコトちゃんの許可無く部屋の中に入る事にした。

 

「コトちゃん、風邪を引いてるんだから大人しくしてなきゃ――どうして裸なんですか?」

 

「いやちょっと……熱で頭がくらくらしてきて、ついでにムラムラしてきたから発散しようと思って……タカ兄が家事に精を出している間なら、大丈夫かなって……」

 

「タカ君には黙っててあげるから、早く服を着なさい」

 

「はい……」

 

 

 ムラムラする気持ちは分からないでもないけど、風邪を引いているのに全裸で発散しようとするとは……相変わらずコトちゃんは私の想像の上を行く変態ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見られたのがお義姉ちゃんだったからまだよかったけど、タカ兄に知られたら何を言われるか分かったもんじゃないので、お義姉ちゃんにもう一度だけ念を押してから、私は大人しくベッドの中に戻った。

 

「本当に言わないでくださいね?」

 

「大丈夫だよ。それより、今は体調、問題無いの?」

 

「少し怠いくらいですかね。最近色々と頑張ってた所為で、疲れがたまってたのかもしれません」

 

「頑張ってたって?」

 

 

 お義姉ちゃんが首を傾げて私の事を見詰めてくる。確かに私が何かを頑張ってたと言っても、パッと思いつくような事に心当たりは私にも無いので、お義姉ちゃんの反応は当然だと言えるだろう。

 

「授業中に寝ないように気を張ってみたり、手を抜いていると思われないように掃除を頑張ってみたり、柔道部に体験入部してみたりと、普段しない事をした疲れが出たんだと思います」

 

「……柔道部への体験入部以外は、割と普通の事だよね?」

 

 

 お義姉ちゃんのツッコミは、普通の人間には当てはまるかもしれないが、私には当てはまらない事なのだ。普段から不真面目な私が、授業に集中したり掃除を真面目にやったりするのは、かなり疲れる事なのだ。

 

「あんまりタカ君に負担を掛け過ぎるのは良くないよ? ただでさえコトちゃんの相手をしてるせいでタカ君が自由に使える時間が限られてるのに」

 

「それは分かってるんですけどね……どうにもこうにもタカ兄に甘えちゃうんですよ。長年の癖、ってやつですかね」

 

 

 私だって何時までもタカ兄の世話になれるとは思っていないので、自立しなければと思ってはいる。だけどどうしてもタカ兄にやってもらった方が早いという考えが頭を過ってしまうのだ。

 

「とりあえず、普通に授業と掃除はこなそうね?」

 

「善処します」

 

 

 タカ兄に迷惑を掛けているのは確かなので、私は御義姉ちゃんの言葉に力なく項垂れながらそう答えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家事が一通り終わったので、俺はコトミの様子を見る為に部屋を訪れた。中から義姉さんの声が聞こえてくるという事は、コトミは一応起きているのだろう。

 

「コトミ、何か食いたいものはあるか?」

 

「食べたい物かぁ……」

 

 

 俺の問いかけにコトミは少し考え込む。体調が悪いから何が食べられるか考えているのかと思ったが、どうやらろくでもない事を考えているようだったので、先に釘を刺しておくことにしよう。

 

「実在している物しか受け付けないからな」

 

「さすがタカ兄……マンガ肉って答えようとしてたのに、ボケを先に潰されちゃった」

 

「くだらんことに付き合ってる暇は無いからな」

 

「じゃあリンゴ」

 

「了解」

 

 

 昨日の内に買い物は済ませておいたので、果物もある程度買ってある。俺はキッチンに向かいリンゴを剥いて再びコトミの部屋を訪れる。

 

「ほら、剥いてきたぞ」

 

「食べさせて」

 

「……随分と甘えてくるな」

 

 

 自分で食べろと突っぱねようとも思ったが、今日くらいはという考えてコトミにリンゴを差し出す。

 

「もぐもぐ……王様になった気分じゃ」

 

「お前元気だろ? 後は自分で食べろ。俺はこれからバイトだ」

 

「後の事は私に任せて」

 

「すみません、義姉さん。お願いします」

 

 

 わざわざ義姉さんを朝から呼んだのは、俺が半日バイトだからだ。そうじゃなければこんな時間から義姉さんに頼る事は無かったんだがな……まぁ、最近の義姉さんなら大人しくしてくれると信じられるから頼ったんだが……




タカトシの方が倒れそうなんだけどな……

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