桜才学園での生活   作:猫林13世

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畑さんもこうなると分かっててやってるからなぁ……


他力本願

 最近暖かくなってきたので、生徒会室の窓を開けて風に当たっている。エアコンの風は涼しくて確かに良いけど、こういった自然の風もなかなか悪くないのよね。

 

「七条先輩、胸のところに虫が止まってますよ」

 

「えっ?」

 

 

 スズちゃんに言われて漸く、私はブラウスの胸のところに虫が止まっている事に気が付き、慌てて追い払った。

 

「全然気が付かなかった」

 

「胸が大きいと感度が低いっていうのは本当だったんですね」

 

「どうなんだろうね~」

 

 

 どことなく責められている感じがするのは、私の気のせいだろうか?

 

「へーそーなんだー」

 

「会長、胸ポケットの携帯鳴ってますよ? というか、分かってますよね?」

 

 

 シノちゃんが悔し涙を流しながら携帯に出る。そこまで悔しい思いをする事かなぁ……

 

「あぁタカトシか、どうした? ……そうか分かった。そっちはお前に任せるから、こっちの心配はしなくて良いぞ」

 

「どうかしたの?」

 

「あぁ。見回り前に横島先生が男子生徒を空き教室に連れ込もうとしたのを見つけたらしいから、そのまま説教する事になったらしい」

 

「相変わらず、どっちが教師だか分からない構図ですね……」

 

「まぁ、タカトシ君だしね~」

 

 

 この学園のどの教師よりも教師らしいと陰で言われているくらいだから、タカトシ君が横島先生を説教してても不思議ではないのかもしれない。だけど、立場上生徒であるタカトシ君が教師である横島先生を説教する図というのは、違和感を覚えるものなのかもしれないね。

 

「というわけで、この量の書類を我々三人で処理する事になった。ガンバロー!」

 

「会長、カタコトになってませんか?」

 

「ちょっと大変ね~」

 

 

 タカトシ君がいてくれればそれ程大変では無いだろうけども、私たち三人で処理するとなると、かなりの時間を要する事になりそうね……これは、出島さんにお迎えを頼む事も考えておいた方が良いかしら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日は特に問題なく見回りが済み、生徒会の仕事もそれほどではないので早く帰れるかと思っていた矢先、新聞部の畑が生徒会室にやってきた。

 

「桜才新聞にクイズコーナーを入れようと思っているのですが」

 

「良いんじゃないか? だが、そんな事をわざわざ報告しに来たわけじゃないだろ?」

 

「えぇ。クイズコーナーを作るにあたって、生徒会の皆さまに問題を作っていただきたいと」

 

「恐ろしく他力本願だな」

 

 

 桜才新聞の最大の売りは、タカトシのエッセイだ。ただでさえ新聞部に協力している人間がいるのに、またしても人任せとは……

 

「ねーねーおねがーい!」

 

「俺に色仕掛けをしても何の効果もありませんが」

 

「わかった! 作るから離れろー!」

 

「ふっ、計画通り」

 

「……コトミに感化されてる?」

 

 

 畑の狙い通りに問題作成を引き受けた私たちとは別に、タカトシは畑の言葉に引っ掛かりを覚えていた。確かに若干厨二臭かったし、この学園で厨二と言えばコトミだろう。

 

「しかしクイズと言っても、私たちはそういう事はあまり得意ではないんだが」

 

「昔作ったのならあるんだけどな~」

 

「……タカトシに怒られそうだから、これは没だ」

 

「やっぱり~? 私たちが一年の頃に作った問題だからね~」

 

「そっちも問題だが、簡単すぎてつまらないだろ?」

 

「……簡単?」

 

 

 萩村が首を捻ったが、私たちのように元々がそういう事を考えて生きていた人間からしてみれば、この問題は考えるまでもなく分かるだろうな。

 

「轟あたりに今度出してみるといい」

 

「全力で遠慮します」

 

「ところで津田先生、今月分のエッセイ拝見させていただきましたが、相変わらず胸打つ良い話でした」

 

「はぁ……貴女の収入源になっているのが納得いきませんが、好評なようで何よりです」

 

 

 タカトシは心底複雑そうな表情で畑と話しているので、問題作成は私たち三人で担当する形となった。結局下校時間ギリギリまで問題を考えていたので、生徒会作業はタカトシが全て終わらせてくれた。

 

「お疲れ様でーす! タカ兄、たまには一緒に帰ろうよ~」

 

「こんな時間まで何でお前がいるんだ?」

 

「えっと……ちょっと先生の手伝いを頼まれまして」

 

 

 どうやらコトミはまた何かやらかしたようで、気まずそうにタカトシから視線を逸らして頬を掻いていた。

 

「ところで会長たちは何でお疲れモード?」

 

「桜才新聞に新しくクイズコーナーを設けようと思いまして、会長たちにはその問題を考えていただいていたのです。それでは生徒会の皆さま、この問題は私の方で預からせていただきます」

 

「あぁ……」

 

 

 生徒会室から去って行った畑に軽く手を上げ、私たちはその場に突っ伏す。

 

「皆さん、お疲れ様でした。貴女たちの役目は終わりだ、ゆっくり眠ると良い」

 

「なんだその、お前は用済みだ的なボス特有のセリフは!」

 

「会長、良く分かりましたね」

 

「まぁ、このくらいなら何とかなる」

 

 

 最近カナから進められてRPGを少しだけやっていたから、コトミがそういう事を考えて言ったんだろうという事が分かってしまった。だがまぁ、労おうという気持ちがあっただけ善しとするか……相変わらず厨二全開だけどな。




そして思惑通りに動くシノたち……

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