桜才学園での生活   作:猫林13世

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ただのイチャイチャカップルにしか見えなくなってきたな……


泳ぎの練習

 シノっちからメールが届き、私はサクラっちに話しかける。

 

「桜才ではそろそろプール開きらしいですね」

 

「そうですか」

 

「ウチももうすぐプール開きですし、楽しみですね」

 

「そうですね……」

 

「サクラっち?」

 

 

 どこか憂鬱な空気を纏っているサクラっちに、私は訝し気な視線を向ける。普段ならもう少し丁寧な対応をしてくれるサクラっちが、こんな上の空な対応をするなんて、何かあるに違いないと思ったから。

 

「プールなんて無くても良いと思うんですよね……ウチや桜才にはプールがありますが、学校自体にプールが無い場所もあるんですし」

 

「……あっ!」

 

 

 その言葉を聞いて漸くサクラっちが憂鬱そうにしている事に合点がいった。

 

「サクラっち、泳ぐの苦手でしたね」

 

「い、一応泳げます! ですが、あまり長い距離を泳ぐ事が苦手で……」

 

「苦手は克服するべきだよ! 練習しましょう!」

 

「で、ですが……他の人に見られるのは恥ずかしいですし……」

 

「そう……」

 

 

 私はサクラっちと話しながら、携帯でシノっちと連絡を取り合っている。サクラっちがそうやって逃げる事は想定済みなので、私は次の手を既に打ってあるのだ。

 

「シノっちから許可を貰えたから、明日桜才学園のプールで泳ぎの練習だね! もちろん、タカ君も来てくれるそうだから」

 

「またタカトシ君に迷惑を掛けちゃう……」

 

「……タカトシ『君』?」

 

 

 サクラっちは確かタカトシさんと呼んでいたはずだけど、いつの間にか関係が進展している……これは近々サクラっちが私の新しい義妹になる日が近づいたという事なのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カナに頼まれ、私たちは休日の学校のプールサイドに集合していた。

 

「英稜学園生徒会副会長の森サクラです! 今日はお願い致します!」

 

「気合いが入っているのは良いが、これは没収だ」

 

「あぅぅ……」

 

 

 森が抱えていた浮き輪を回収し萩村に手渡す。べ、別に何か意図があって萩村に渡したわけではなく、偶々近くにいたのが萩村だっただけだからな!

 

「……会長、表情に出てますよ」

 

「なにっ!?」

 

 

 タカトシに耳打ちされ、私は萩村に視線を向けた。すると物凄いジト目で私の事を睨んでいる萩村がそこにいた。

 

「……と、とりあえずだ! どのくらい泳げるのかチェックしておく必要があるな!」

 

「シノちゃん、急に早口になってない?」

 

「なってない! アリア、お前も手伝え」

 

「は~い」

 

 

 萩村から逃げ出すように、私はプールの中に入る。もちろん準備運動はしっかりとしたし、飛び込むなどという事もしないので安全だ。

 

「まずは軽く泳いでみろ」

 

「わ、分かりました……」

 

 

 森が水の中で目を開けていられるかどうかを確認する為に、私たちはとある行動を取った。だが、それに対してのツッコミは無かったので、どうやらまずはそこを克服させる必要があるようだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 途中から遊び始めたシノさんたちを無視して、俺はサクラの泳ぎの特訓に付き合っていた。

 

「ぜ、絶対に手を放さないでね!?」

 

「大袈裟じゃないか? 足がつくんだし、そこまで怯える必要は無いと思うんだが……」

 

「タカトシ君は泳げるから良いけど、私は泳げないんだから! 足がつくつかないの問題じゃないんだよ!」

 

「そうなのか……」

 

 

 未だに違和感をぬぐえないが、下着を見てしまった事を許してもらう為にこちらから交換条件を申し出たのだから、慣れるしかないか……

 

「ところで、タカトシ君は子供の頃から泳げたの?」

 

「どうだったかな……その辺りはよく覚えてないが、泳げなくて苦労した覚えはないから、泳げたんだと思う」

 

「羨ましい……」

 

「サクラだって、全く泳げなかった時と比べればだいぶ成長しているんじゃないのか?」

 

 

 慰めになるかは分からないけど、ここで落ち込まれたら練習が滞ってしまうから、何とか絞り出してそう言うと、何となく複雑そうな表情を浮かべながらもこちらの意図を察してくれたようで、再び気合いを入れ直していた。

 

「それじゃあ、もう一度お願いします!」

 

「お願いと言われても、俺は手を持ってるだけなんだが」

 

「それがあると無いとじゃ大違いだから、気にしなくていいよ」

 

「はぁ……ところで、あっちで遊んでる連中は放っておいて良いのだろうか?」

 

 

 一応泳ぎの練習をする為という名目でプールを使わせてもらっているのだから、遊んでるところを見られたら怒られるんじゃないだろうか……

 

「あの三人は兎も角として、スズさんまであっちに加わるとは思いませんでした……」

 

「いや、スズは足がつかないらしいから」

 

「なるほど……」

 

 

 サクラから回収した浮き輪を使って浮かんでいるスズを見て、俺たちは同時にため息を吐いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシ君との練習のお陰で、恥ずかしくない程度には泳げるようになった私は、自信をもってプールの授業に臨めるようになった。

 

「去年より成長した私の姿を見せてやります!」

 

 

 気合を入れてプールの授業に向かうと、男子だけでなく、女子の視線も私の身体の一部に向けられていた。

 

「「(確かに去年より成長してる)」」

 

「何処見てるんですか!?」

 

 

 全員の視線から逃れるように、私は身体をよじってその一部を隠した。

 

「(タカトシ君はそんな事なかったのに)」

 

 

 とても同い年とは思えないくらいの差が、クラスメイトたちとタカトシ君との間にあると、私は改めて思い知らされたのだった。




男子も女子も見てたけど、気になるものなのか?

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