桜才学園での生活   作:猫林13世

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何故あんなことをしたんだろう……


乙女心

 今回の交流会は桜才学園で行われるため、私たちは桜才学園へと足を運ぶ、私たちと言っても、メンバーは私と会長の二人だけだが。

 

「………」

 

「どうかしました?」

 

 

 私の事をジッと見つめてくる会長に、私は素直に問い掛ける。この人が何を考えているかなど、私には分からないから直接聞いた方が早いのだ。

 

「サクラっち、私の事をしっかりと見てないんだね」

 

「はぁ……何かあったんですか?」

 

「私の変化に気づかないの?」

 

「変化、ですか?」

 

 

 髪を切ったわけでもなければ、薄らと化粧しているわけでもない。新しいカーディガンにしたわけでもないし、装飾品を付けているわけでもなさそうだし……

 

「駄目です、全然分かりません」

 

「そう……まぁ、タカ君なら分かってくれるだろうから良いけどね」

 

「最初からタカトシさんに気付いてもらいたいだけだったのでは?」

 

 

 あの人なら会長が何を考えているか読むことも出来るでしょうし、何よりちょっとした変化にも目敏く反応してくれるのだ。だから女子からの人気が高いんでしょうけどね。

 

「お待ちしていました」

 

「シノっち、タカ君、今日もよろしくお願いします」

 

「……何故さらしを巻いているのですか?」

 

 

 タカトシさんの視線が会長の胸に向けられているのを見て、私は漸く会長の胸がいつもより小さくなっていることに気が付いた。

 

「ちょっとシノっちの気分を味わいたくて」

 

「喧嘩売ってるなら買うぞ? 今なら底値で買い叩いてやる」

 

「冗談です。ちょっとした間違い探しだったのですが、サクラっちは気付いてくれなかったので」

 

「女心的に『胸小さくなった?』とは聞けませんって……というか、タカトシさんだから普通な感じになってますけど、他の男子だったらセクハラ発言ですよ?」

 

「タカ君だから大丈夫だよ」

 

 

 何の根拠もない発言ですけど、タカトシさんだからという理由で納得出来るのは、私も心のどこかでそう思ってるからなんでしょうね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 交流会を終え、カナたちを校門まで送る途中、PTAの集まりが目に入った。

 

「あ、母さんだ」

 

「タカトシのお母さん、PTAだったのか?」

 

「殆ど参加出来ない、幽霊だと言っていましたけどね」

 

「というか、お母さん日本にいたんだね」

 

「昨日帰ってきました。まぁ、また来週にはいなくなるのですが」

 

 

 タカトシのご両親は忙しいらしく、めったに家にいない。ここは挨拶をしてポイントを稼いでおくか。

 

「ご挨拶しておいた方が良いな。しょっちゅう家に泊めてもらってるわけだし」

 

「そうですね」

 

 

 私と一緒に動いたのはカナだった。こいつは普段から津田家に入り浸ってるから、今更挨拶も必要ないと思うんだが……

 

「「こんにちは――」」

 

 

 同時に声をかけたのは良いが、挨拶の後に続いた言葉に、私は驚愕した。

 

「小母さん」

 

「お義母さん」

 

 

 私たちの挨拶に、津田母は軽く手を上げて応えたが、私はカナの口から出た単語に目を見張る。

 

「お義母さんと呼んでいるのか!?」

 

「まぁ、殆どそういう関係ですからね。タカ君とコトちゃんのお母さんなら、私にとってもお義母さんだから」

 

「どんな理屈だ! お前たちは遠縁なだけだろうが!」

 

 

 私が苛立っているのを見て、カナは楽しそうに胸を張った。何時もより小さい胸だが、私より揺れているのは考えない事にしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 母さんとの挨拶で義姉さんと会長がもめているようだが、下手に首を突っ込んで疲れるのは避けたいから放置しよう。

 

「私もご挨拶しておいた方が良いでしょうか?」

 

「サクラさんの事はウチの母さんも知っているので、会釈だけでいいんじゃないですか? 無理に声をかけようとすれば、二人の会長に睨まれるでしょうし」

 

「そ、そうですね……」

 

 

 サクラさんが会釈をすると、母さんも手を上げてそれに応えた。相変わらずちょっと男らしい母親なのはどうしてなんだろうか……

 

「それにしても、タカトシさんのお母さん、スタイル良いですよね……何か特別な事でもしてるんでしょうか?」

 

「別にしてないと思いますが……というか、女性はそういう事気になるんですね、やっぱり」

 

「当たり前ですよ。ちょっと太ったかもとか、あの子更に綺麗になったとか、女子の間ではそういう話題ばっかりですから」

 

「そうなんですね。まぁ、男子の間でも変わったという事は話題になってるみたいですが」

 

 

 あまりそういう話題に誘われないので、聞いただけだが、あの子が可愛くなったとか彼氏が出来たらしいとか、そういう話は男子の間でも飛び交っているらしいのだ。

 

「私だって、もう少し細かったらとか考えますし」

 

「サクラさんは十分に魅力的だと思いますが。というか、女子ってそんなに細い方が良いとか思ってるんですか?」

 

「違うんですか?」

 

「あんまり細いと、男は逆に引いてしまう方が多いですね。無理してると思われる可能性もあるでしょうし、自然体が一番だと思いますよ」

 

「じゃあ、タカトシさんから見て私の身体、どうでしょうか?」

 

「適度に引き締まっていて、それでいて不健康さを感じさせない、綺麗な身体だと思いますが」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 

 何だか急に恥ずかしくなってきたけど、タカトシさんに褒められて悪い気はしませんね。




うーん……乙女心は難しい

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