桜才学園での生活   作:猫林13世

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コトミ以上に問題ではあるが


別の問題児

 最近は津田さんの遅刻も減ってきているので、風紀委員としてタカトシ君に話す内容が無くなってしまい、なかなかお話が出来なくなってきてしまっている。もちろん、津田さんが成長してきているのは嬉しいんですけど、タカトシ君とお話し出来なくなると考えると、津田さんはあのままで良かったのかもしれないわね……

 

「おんや~? 何やらアンニュイな風紀委員長を発見」

 

「畑さん……貴女は何時まで経っても変わらないんですね」

 

「それが私ですから。それで、何を考えていたんですか? 津田副会長のクラスメイトが大量のエロ本を学校に持ち込んだ件ですか?」

 

「何それっ!? そんな報告受けてませんけど」

 

「そりゃ仕入れたてほやほやな情報ですから。ついさっき、生徒会室に呼び出されてましたから、その後で風紀委員に報告されるんじゃないですかね」

 

「……何で畑さんは知ってるんですか?」

 

 

 生徒会室に呼び出されただけなら、何が原因でかなんて分からないはずなんだけど……というか、タカトシ君なら畑さんの気配で盗み聞きしてたのが分かるはずだけど……

 

「連行している津田副会長に何事かと尋ねましたから。ですから、貴女が心配するような事はしてませんよ」

 

「心配? 私が何を心配してるっていうんですか?」

 

「私と津田副会長が特別親密な間柄だという――」

 

「間違ってもそんな考えは起こしませんので」

 

 

 まぁ、ある意味親密だと言えなくもないだろうけど、タカトシ君と畑さんはあくまでも生徒会役員と新聞部部長という、事務的な関係だしね。

 

「からかい甲斐が無くなってきましたね……じゃあ、これを見てもらえるかしら?」

 

「それは?」

 

「天草会長と津田副会長のデート写真」

 

「で、デートっ!?」

 

 

 慌てて畑さんから写真を受け取り覗き込むと、そこには備品の買い出しの為に文房具店を見て回る二人の姿が写っていた。

 

「凄い反応速度でしたね~。やっぱり貴女も一般女子みたいにデートしてみたいとか思うんですね」

 

「騙しましたね?」

 

「見ようによっては買い物デートですから。騙したのではなく曲解しただけです」

 

「殆ど一緒じゃ無いですか!」

 

「ではっ!」

 

「待ちなさい!」

 

 

 逃げ出した畑さんを追いかける為、私は出来る限りの速さで歩き追いかけたが、廊下を走っている畑さんを捕まえる事は出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私たちの前でみっちりと説教をしていたタカトシが風紀委員に男子を引き渡し一息ついたので、アリアがすかさずお茶を差し出した。

 

「お疲れ様~。凄い迫力だったね~」

 

「すみません。一冊二冊なら兎も角、あれだけ持ち込んでたら怒りたくもなりますよ」

 

「でも思春期の男の子だもん。多少は大目に見てあげた方が良いんじゃないかな~? ましてやここは元女子高だし、あんまり抑制すると爆発して女子を襲っちゃうかもしれないよ?」

 

「そんな事をすれば、社会的制裁を受けるだけですから。退学させられたうえ、一生『そういう事をした』という目で見られるわけですし」

 

「タカトシは厳しいな……エロ本くらい持ってるんじゃないのか? まぁ、お前の部屋で見た事は無いが」

 

 

 何回もタカトシの部屋に入っている私たちは、タカトシがそういう本を持っていないのを知っている。だから最後に付け加えたのだ。

 

「生憎普通の男子が当たり前なのかどうか分かりませんので」

 

「アンタがそういう本を持ってたら、コトミや魚見さんが知ってるでしょうしね」

 

「というか、この前コトミの部屋からそういう本が出てきたって義姉さんが」

 

「何をやってるんだ、アイツは……」

 

 

 生活態度や成績面で成長してるかと思っていたが、そういったところは成長してないようだな……

 

「ちょっと匿ってください!」

 

「畑さん、廊下は走っちゃ駄目ですよ」

 

「風紀委員長に追われてるんです!」

 

「またですか……それで、今度は何をしたんですか?」

 

 

 最初から畑が悪いと決めつけた聞き方をするタカトシだが、過去の事例からそれも仕方ないだろう。

 

「別に大したことはしてませんよ? 貴方と天草会長のデート写真を見せただけです」

 

「何それっ!? タカトシ、どういう事!」

 

「デート? ……この前の備品の買い出しの時の写真ですか? 遠くから盗み見てるのは気付いてましたが、そんな曲解をしてカエデさんに教えたんですか?」

 

「私は見られてるのすら気づかなかったぞ……」

 

 

 あの時はアリアも萩村も別の買い出しに行ってもらっていたからタカトシと二人きりで、夢見心地だったからな。

 

「畑さんっ!」

 

「さて、五十嵐も来た事だし、じっくりと言い訳を聞かせてもらおうか? もちろん、どんな言い訳をしても許すつもりは無いがな」

 

 

 畑に詰め寄る私と、アリアと萩村が鋭い視線を向けた事で、畑は大人しく頭を下げた。

 

「ゴメンなさい。最近会長と副会長の絡みが減ってきているから、ここら辺でこの写真を使えば盛り上がるんじゃないかと思って……ただでさえ出遅れてるんですから」

 

「何の話をしてるんだ、お前は」

 

「だって、武器となるモノがない天草会長じゃ、この出遅れ感を取り戻せるとは――」

 

「タカトシ。今日は先に帰ってくれ。私たちで畑を訊問する」

 

「はぁ……お疲れさまでした」

 

 

 盛大に私の地雷を踏み抜いた畑を取り押さえて、とりあえずタカトシには聞かれたくない話をするからタカトシを追い返し、私たちは畑から情報を聞き出すのと並行して説教をしたのだった。




自爆というかなんというか……

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