桜才学園での生活   作:猫林13世

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複雑な乙女心……


生徒会合宿 中編

 食事の席で、まず誰がタカトシさんの隣に座るかで揉めてしまった。

 

「カナは普段からタカトシと食事をしてるんだし、今日くらいは譲ったらどうなんだ?」

 

「私は普段、タカトシ君の正面に座る事が多いので、たまには隣に座ってみたいです」

 

「私は正面でも良いな~。タカトシ君にずっと見てもらえるわけだし」

 

「ですけど、逆に食べにくくないですかね? タカトシにいろいろ見られるわけですし」

 

「スズちゃんは恥ずかしいって思うかもしれないけど、私はタカトシ君の顔を見ていたいんだよね」

 

「じゃあ、アリアっちがタカ君の前で良いですよ」

 

 

 何だか魚見会長が主導権を握っているような感じもしますが、タカトシさんとの関係が一番深いのは会長だから仕方がないのかもしれませんね……

 

「サクラっちはさっきから黙ったままだけど、タカ君の隣じゃなくても良いの?」

 

「私は別に何処でも大丈夫ですよ?」

 

「本妻の余裕?」

 

「ち、違いますよ!?」

 

 

 だいたい本妻って何ですか……私は別にタカトシさんと結婚してるわけでも、ましてやお付き合いしてるわけでも無いんですから……

 

「森が脱落したので、タカトシの隣は私かカナか萩村の内二人という事になるな」

 

「というか、シノっちやスズポンは、生徒会の時にしょっちゅう隣に座ってるんじゃないんですか? そういう意味では、アリアっちは何時もタカ君の正面に座ってる事になると思いますが」

 

「学校と旅館とでは雰囲気が違うんだよ~」

 

「まぁ、その感覚は分かりますが」

 

 

 結局じゃんけんの結果、タカトシさんの隣に座るのは天草さんと魚見会長になった。その所為で萩村さんが少し不機嫌になったけど、私ではどうしようもないのでタカトシさんにお任せしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 他のメンバーが卓球場から戻ってきたので、俺は横島先生をシノさんたちに任せて少し外に出た。

 

「何で旅行に来てまで横島先生の面倒を見なければいけないんだ……」

 

 

 あの人は一応「引率」のはずなんだがな……

 

「ん? コトミから電話だ」

 

 

 さすがに家に一人コトミを残してくるのは不安だったので、時さんと八月一日さんが泊りに来てるはずなんだが、何かあったのか?

 

「どうかしたのか?」

 

『ううん、別にどうもしてないよ? ただマキとトッキーがタカ兄にお礼を言いたいからって』

 

「お礼? 別に何もしてないと思うんだが」

 

 

 時さんからは既に勉強の手伝いをしたお礼は受け取ってるし、八月一日さんも一緒となると、いよいよ何のお礼なのか分からなくなってくる。

 

『タカ兄が作り置きしておいてくれた料理がおいしいからって』

 

「何だその事か。別にお礼を言われる事ではないと思うんだが」

 

『タカ兄は分からないかもしれないけど、女子として複雑なんだよ、ここまで美味しい料理を作る男子って』

 

「そう思うなら、お前も少しは出来るようになったらどうなんだ?」

 

『勉強で手一杯で、そっちまで努力する気にはなれません……というか、タカ兄やお義姉ちゃん、会長たちに習っても一向に成長しないのを見れば、私に料理の才能が無いのはタカ兄だって分かるでしょ?』

 

「勉強だって続けてやって漸く成果が出るようになってきたんだから、料理だって続ければ成長するかもしれないだろ?」

 

『生産者たちに失礼なので、これ以上食材を無駄にしないと心に誓ってるんだよ』

 

 

 まぁ、アイツの料理は化学実験に近い結果にしかならないし、確かに生産者に失礼かもしれないな。

 

「お礼は確かに受け取ったと、二人に言っておいてくれ。それから、俺や義姉さんがいないからといって、あまり夜更かししないように」

 

『分かってるって。タカ兄、お兄ちゃんを通り越してお母さんみたいだよね』

 

「お前がもう少し立派になれば、俺だってこんな事言わなくなるだろうな」

 

『そうすれば、タカ兄は誰かと付き合ったり出来るのかな?』

 

「さぁな……考えたことも無い」

 

 

 そもそもコトミが手のかからないまでに成長するとは思えないんだよな……そりゃ多少は結果が出てきているが、油断するとすぐに元に戻りそうだし。

 

『それじゃあタカ兄、お休み』

 

「こっちはまだ食事前だけどな」

 

 

 コトミとの電話を終え、俺は部屋に戻る事にした。元々特に目的があって外に出たわけではないので、無理に外にいる必要は無いからな。

 

「――で、これは何があったんですかね?」

 

「えっと、横島先生が泥酔して、そのまま萩村さんと天草さんに絡みだして、そのお酒の匂いで天草さんと萩村さんが酔っぱらい、それを介抱しようとして七条さんも潰れちゃったという感じですかね……」

 

「はぁ……義姉さん、布団を敷いてもらえますか? 四人を寝かせます」

 

「起こさなくて良いの?」

 

「一食抜いただけで死ぬわけではありませんし、下手に起こして吐かれても困りますから」

 

「まぁ、タカ君がそう判断したなら、お義姉ちゃんは何も言いませんけど」

 

 

 義姉さんが何を考えたのか気になったけど、無理をしてまで聞き出す必要は感じなかったので、そのまま酔い潰れた横島先生と、巻き込まれた三人を布団に運ぶ。

 

「津田先輩って、力持ちなんですね」

 

「タカトシさんは不本意だって言うかもだけど、こういうシーンを何度も見てきたから、慣れもあるんだと思うよ」

 

 

 背後で青葉さんとサクラさんが話してる声が聞こえたけど、本当に不本意だよな……




何処にいても苦労するタカトシであった

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