桜才学園での生活   作:猫林13世

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長期休暇は家で休みべきだと思う……あまり縁がないですけど


冬休みの予定

 タカ兄とお義姉ちゃんのお陰で、今回の試験は手応えがあった。普段の私なら終了のチャイムと共に机に突っ伏していたところだが、今回はなんだか充実感に満ち溢れているのだ。

 

「コトミ、今回のテストどうだった?」

 

「トッキーになら勝てる自信はあるよ! もしかしたら、過去最高点をたたき出すかもしれないくらいの手応えだよ」

 

「津田先輩と魚見さんが必死になった結果でしょ? 自分一人で勝ち取ったみたいに言うのは二人に失礼じゃない?」

 

「分かってるって、マキ。私がこうしてテスト終わりにピンピンしていられるのは、常日頃から私に勉強を教えてくれたタカ兄とお義姉ちゃんのお陰だってことはね!」

 

 

 サムズアップしてみせると、マキは苦笑いを浮かべながら頷いてくれた。

 

「津田先輩もだけど、魚見さんだって自分の勉強があったり、バイトだったり生徒会の仕事だったりで忙しかったんだろうし、ちゃんとお礼を言った方が良いよ」

 

「今日帰ってからタカ兄が採点してくれるから、その結果を見てからお礼を言うつもりだよ。もちろん、お義姉ちゃんも来るみたいだから、そこで一緒にね!」

 

 

 しっかりと問題用紙にも答えを書き込んでいるので、これでテストが返ってくる前にだいたいの点数が分かるのだ。テストが終わってすぐに結果が分かるというのも何だか怖いけど、ずっとビクビク過ごすよりかは健康的だと割り切る事にしたのだ。

 

「ただいまー!」

 

「コトちゃん、お帰り。その様子だとバッチリだったみたいだね」

 

「お義姉ちゃんとタカ兄が私を導いてくれたお陰だと思ってます。タカ兄の採点が終わったら、改めてお礼を言うね」

 

「タカ君ならまだ帰ってきてないから、それまでゆっくりしてたら? 昨日までコトちゃん、死にそうな顔してたし」

 

「そりゃ、あれだけ厳しく教えられたら死にそうにもなりますって」

 

 

 普段ふざけてしまうから仕方ないんだけど、タカ兄もお義姉ちゃんもかなり厳しく私に勉強を教えてくれたのだ。その事は今でこそありがたく思ってるけど、昨日までは何度恨み言を心の中で呟いたことか……

 

「タカ君が用意しておいてくれたお菓子があるから、それでお茶にしましょう」

 

「さすがタカ兄!」

 

 

 私とお義姉ちゃんは、タカ兄が帰ってくるまでの間、タカ兄が作ってくれたお菓子とお茶でうちあげをしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会の仕事を終わらせ家に帰ると、既に義姉さんとコトミがリビングで寛いでいた。

 

「その様子だと、手応えがあるみたいだな」

 

「タカ兄に言われた通り、問題用紙に答えを書き込んだから、さっそく採点してください」

 

 

 コトミから手渡された問題用紙に目を通し、俺はペン入れをしていく。普段なら間違いだらけなのである意味単純作業なのだが、今回はバツを付けていけばいいだけではない。

 

「………」

 

「ごくり」

 

「この結果なら補習は無いだろう」

 

「本当っ!?」

 

 

 平均七十一点という結果に、俺は内心驚いていた。確かに七十点以下は小遣いを減らすと脅したりもしたが、六十点以上なら許すつもりだったのだ。しかし、コトミは俺の予想を大きく上回る結果を残したのだ。

 

「この調子でいけば、その内ブラックリストからも外されるだろうし、成績上位者に名を連ねる可能性も出てくるんじゃないか?」

 

「いやいや、そこまで高望みされても困るって。とりあえず、この結果はタカ兄とお義姉ちゃんのお陰です。本当にありがとうございました」

 

 

 妹に深々と頭を下げられて、俺と義姉さんは少し気恥ずかしさと居心地の悪さを覚え、コトミを労ってその場をごまかしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 定期試験も終わり、来週からはいよいよ冬休みだが、私にとっては憂鬱なものでしかないんだよな……

 

「(休みって言っても、どうせ一人だしな。また今年も一人で年末を過ごすのか……)」

 

 

 そんな事を考えていると、大門先生と理事長の会話が耳に入ってきた。

 

「冬休みは柔道部の合宿ですわ」

 

「部活の指導も大切ですが、家族サービスもしなければいけませんぞ。大門先生はまだ新婚なのですから」

 

「(合宿か……そうだ!)」

 

 

 その会話がヒントとなり、私は生徒会室へ駆け込んだ。

 

「合宿しようぜ!」

 

「何ですかいきなり……というか、教師が廊下を走らないでください」

 

「あ、あぁ……すまんすまん」

 

 

 津田に注意されたのでとりあえず謝ったが、私の意識はそんな事に向けられていない。

 

「合宿といっても生徒会で何をするんですか?」

 

「合宿を通して、我々が背負っている責務を見詰め直すのだ!」

 

「「おぉー!」」

 

「ちなみに、おやつは五百円までだ」

 

「遠足か!」

 

「オカズは五千円から受け付けるぞ?」

 

「確かに見つめ直した方が良さそうな人がいますね」

 

「おいおい、そんな残念な人を見る目でこっち視るなよな……興奮して垂れてくるだろ」

 

「何で穿いてないんですかね?」

 

 

 津田に蔑みの眼で見られ、天草と七条からはちょっと同情的な眼で見られ、萩村からは嫌悪感むき出しの眼で見られて、私は思わず絶頂しそうになってしまったが、ここで絶頂すればまた蔑まれてエンドレス絶頂になりそうだったので、合宿の約束だけを取り付けてトイレに駆け込んだのだった。




ホントに、ダメだこの教師……

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