桜才学園での生活   作:猫林13世

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気にし過ぎな気も……


気になるシミ

 生徒会室で作業をしている役員共を労おうと、生徒会室にやってきたが、何やら冷ややかな視線を向けられてしまった。

 

「おいおい、興奮するだろ」

 

「何しに来たんですか」

 

 

 津田に冷めた目で見つめられながら問われると、思わず濡れてしまいそうだ。

 

「シミが気になる……」

 

 

 そんなやり取りをしていると、萩村がそんな事を呟いた。

 

「え、ないよ~?」

 

「違います」

 

「そんなの無いぞ!?」

 

「だから、違います」

 

 

 天草と七条が服と顔を確認してシミがない事をアピールするが、萩村が気にしてるのは別のところのようだ。

 

「まさか、そんなに目立つのか!?」

 

「そんなところのシミを気にするわけ無いだろうが!」

 

 

 私が前を隠すようにすると、萩村がため口でツッコミを入れてきた。ロリっ子にため口でツッコまれるのも、なんだか新しい快感が……

 

「それでスズ、何処のシミが気になるの?」

 

 

 グダグダやってる私たちをまるっと無視して、津田が萩村に問いかける。こいつはいつも冷静で頼りになるな。

 

「この壁のシミ……人の顔に見えません?」

 

「ふむ……確かにこの三つの点を見ると、人の顔を連想してしまうな」

 

「ですよね!!」

 

 

 天草に同意されたのが嬉しいのか、萩村が必要以上に大声を出した。

 

「私は三つの点を見ると、人の身体を連想するな。上二つが乳首で、下が臍」

 

「くだらない事言ってないで、用がないなら出ていってくれます?」

 

 

 津田が私を追いだそうとしたので、私は持っていたポスターを萩村に渡した。

 

「これ、生徒会室用のポスターなんだが、これでシミを隠せばいいだろ」

 

「そ、そうですね。別に怖くはないですが」

 

 

 私が差し出したポスターを素早く受け取り、萩村がシミの上からポスターを貼る。

 

「萩村は本当に怖いのが苦手なんだな。津田はどうなんだ?」

 

「俺は割と好きですよ。ホラー映画とか」

 

「やはりな。夜中にトイレ付き添いシチュを楽しめるからな」

 

「貴女とは永遠に分かり合えないようですね。それから、用が済んだなら出ていってください」

 

 

 津田に背中を押され、そのまま生徒会室から追いやられてしまったが、邪険に扱われるのもこれはこれでありだな……

 

「私Sだと思ってたんだが、実はMだったのか!?」

 

『廊下で変な事を大声で叫ぶな!』

 

 

 扉越しからツッコまれ、私は反省しながら職員室へと戻ることにしたのだが、途中でどうしても我慢出来なくなりトイレで発散してから戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先生の手伝いをしていたら下校時間になっていたので、私はトッキーと一緒に帰るべく柔道場へと向かった。

 

「トッキー、一緒に帰ろ――あれ?」

 

 

 柔道場を覗き込むと、柔道部員ほぼ全員がその場に倒れ込んでいた。

 

「少し休ませてくれ……練習がキツすぎて……」

 

「ありゃ」

 

 

 答えるのもやっとのようなトッキーを見て、私はその中心へと歩み寄る。

 

「ふっ」

 

「お前が無双した感じを出すな……」

 

「さすがトッキー。分かってくれた~?」

 

「分かりたくも無かったがな……」

 

 

 力なくツッコミを入れてくれたトッキーだったけど、本当にお疲れの様でその後が続かない。

 

「ほらほら、みんな何時までも寝てないで立った立ったー」

 

「何でアンタは平気なのさ……アンタが一番動いてたのに」

 

「怪物か……」

 

「酷いなー。これくらいは普通でしょー?」

 

 

 ムツミ先輩が部員に声をかけ無理矢理立たせる。確かにムツミ先輩は体力お化けだからな~。

 

「下校時間ですよ」

 

「あっ、タカ兄」

 

「!」

 

 

 タカ兄の声を聴いたからか、ムツミ先輩がその場に倒れ込んだ。

 

「みんなお疲れだな」

 

「(男子にはそう思われたくないのだろうか? それとも、タカ兄だから?)」

 

 

 私がそんな事を考えていると、タカ兄が私を見つけて首を傾げた。

 

「柔道場で何してたんだ?」

 

「トッキーと一緒に帰ろうと思って」

 

「そうか。それで、こんな時間まで何でお前が残ってたんだ?」

 

「先生に手伝いを頼まれてたので」

 

 

 本当は内申を稼ごうと申し出たのだが、その辺りを正確に伝える必要は無いだろうと思って、私は少し嘘を吐いた。

 

「……そうか」

 

 

 タカ兄は信じてない様子だったけど、とりあえず追及はしてこなかった。

 

「ねぇねぇ、ムツミちゃんの理想の男の子ってどんな人~?」

 

 

 私がタカ兄から疑いの視線を向けられている横で、アリア先輩がそんな事を聞き始めた。

 

「そりゃもちろん、私より強い人!!」

 

「強い人ですか~。タカ兄は?」

 

「さすがに三葉には勝てないかな」

 

 

 タカ兄も十分強いけど、やっぱりムツミ先輩の方が強いんだな……

 

「やっぱり、私より弱い人!!」

 

「軟弱で良いのか!?」

 

 

 すぐに答えを変えたムツミ先輩に、シノ会長が驚きの声を上げた。

 

「(やっぱりムツミ先輩もタカ兄の事を……)」

 

 

 前々からタカ兄にだけ態度が違ったから「ひょっとして」とは思ってたけど、この反応で確信した。ムツミ先輩はタカ兄の事が好きなんだ。

 

「(それにしても、さすがはタカ兄だよね……これだけのフラグを建てておきながら放置なんて。普通の高校生男子なら、ハーレム状態でウハウハだろうに)」

 

「くだらない事を考えてないで、さっさと帰れ」

 

「読心術っ!?」

 

 

 最後の最後でタカ兄に怒られちゃった……




タカトシも十分強いんですけどね……

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