桜才学園での生活   作:猫林13世

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成長してない人も……


彼女たちの成長

 定期試験も無事に終わったけど、私の内申がよろしくない状態なのには変わりはないので、最近ではタカ兄と一緒に登校する事にしている。

 

『コトミ、準備出来たか?』

 

「タカ兄? 今日はなんだか早くない?」

 

 

 何時もの時間より大分早い時間にノックされ、私は首を傾げながら扉を開いた。

 

「昨日の夜言っただろ? 服装チェックがあるから早く出るって」

 

「それって今日だっけ? それじゃあ急がないとね」

 

 

 タカ兄は生徒会役員なので、今日のように早く出なければいけない日が多々ある。別に私は後で行っても問題ないのだが、タカ兄に置いて行かれたそのまま寝落ちして遅刻確定になるだろうから、こうして同行する事にしたのだ。

 

「最近はタカ兄のお陰で先生たちから怒られる回数も減ってきてるよ」

 

「高校生なんだから、自力で出来ればなお良いんだがな」

 

「その辺りは、今後精進していきます……」

 

 

 さすがにタカ兄に対して迷惑を掛け過ぎていると、この間鍵を失くしたときお母さんに怒られたので、それを機に少しでもタカ兄への負担を減らそうと努力をし始めたのだから、まだまだなのは仕方がないと思うんだよね……

 

「おはようございます」

 

「おはようございます、タカトシ君。コトミさんも早いですね」

 

「タカ兄と一緒に登校すれば、遅刻する事なんて無くなると思いまして」

 

 

 既に校門前でスタンバイしていたカエデ先輩に挨拶をして、私はそのままタカ兄たちと別れ教室へ向かう。こんな時間に登校してる生徒など、生徒会メンバーや風紀委員以外では部活の朝練がある人たちくらいだろうな……

 

「誰もいない教室……特にする事がないのが問題なんだよね……」

 

 

 遅刻しなくなった代わりに、こうした時間をどう過ごせばいいのかが全く分からないので、たまに教室で寝てしまう事があるのだが、それもここ最近は減ってきたと自負している。まぁ、マキやトッキーに叩き起こされる事もあるんだけどね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最近めっきり暑くなってきたせいか、何を触っても熱く感じてしまう。

 

「例えばこの車のボンネット」

 

「何ですかいきなり」

 

「太陽光で熱されて鉄板のようだと思わないか?」

 

 

 そう言いながら私は、ボンネットの上に手を置いた。

 

「熱っ!?」

 

「自分で鉄板のようだとか言っておきながら、何で触るんですか……」

 

「好奇心に勝てなくてな……」

 

 

 熱そうだと分かっていながらも触ってしまったので、私は大げさに叫んでしまいタカトシに心配されてしまった。

 

「火傷してませんか?」

 

「あっ……」

 

 

 タカトシが私の事を心配して掌を見てくれている……

 

「(な、なんだか体の芯から熱くなってきたような気が……)」

 

「少し赤いですね」

 

「な、何っ!?」

 

「いえ、ですから掌が赤いって……冷やしてきた方が良いのでは?」

 

「そ、そうだな」

 

 

 タカトシに顔が赤いと指摘されたのかと思って焦ってしまったぞ……まったく、タカトシは無自覚ラブコメ野郎だから困ったものだ……

 

「あんな姿を畑に見られたら――」

 

「やっ」

 

 

 見られたっ!? いや、別に私の掌をタカトシが見てただけで、別に疚しい事は何もないんだが、何でか焦ってしまうな……

 

「会長が照れて頬を染めてくれたお陰で、いい写真が撮れました。タイトルは『副会長に手を取られて照れる会長の図』というのは如何でしょう? これを発表すれば、潜在的タカトシハーレム要員はだいぶ減ると思いますが」

 

「こ、こんな写真恥ずかしくて見せられるわけないだろ!」

 

「そうですか~? 一昔前は平気で下ネタを言っていた会長が、このくらいで恥ずかしがるんですか?」

 

「あ、あの時の事は忘れろ! というか、そんなことすればタカトシに怒られるだけだぞ」

 

「大丈夫です。発行してしまえばこっちのものですから!」

 

「何を、発行するんですかね?」

 

「つ、津田副会長……」

 

 

 ゆらり、という感じで傍の背後に現れたタカトシは、明らかに怒ってる風だった。私はその場から離れ、掌を冷やすべく水道に向かった。

 

「シノちゃん、さっきの見たよ~」

 

「アリア」

 

「タカトシ君に手を握られて恥ずかしかったの~?」

 

「ま、まぁ……」

 

 

 すっかり純情少女になってしまったと自覚しているが、タカトシを前にするとどうしても照れてしまうのだ。

 

「でも、ちょっと羨ましいな~」

 

「何がだ?」

 

「タカトシ君に心配してもらう事が」

 

「アリアだって、タカトシに心配された事くらいあるだろ?」

 

「以前は性癖を心配されてたかな~」

 

「それは私もだ」

 

 

 根本的には私もアリアもそれほど変わっていないのだが、タカトシの前では以前のようにしないようにしようと心掛けているお陰で、最近はそっち方面を心配される回数も減ってきている。

 

「そう言えば、カエデちゃんがカンカンに怒ってたから、後で何か言われるかもよ~」

 

「怒る? 何を怒るんだ?」

 

「校内で堂々とラブコメを展開してたから『風紀が乱れる!』って」

 

「ら、ラブコメっ!? 別にそんな事してないだろ」

 

「タカトシ君は素面だったけど、シノちゃんは顔が真っ赤だったから」

 

「うっ……そんなにか?」

 

「うん」

 

 

 言われるまで意識してなかったが、意識すると凄く恥ずかしい事だったんだな……今更ながら顔が熱くなってきたような……




シノが純情乙女になりかけてるな……

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