桜才学園での生活   作:猫林13世

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コトミのではありませんよ


金欠の理由

 夏休みが終わってもまだまだ暑い日は続いているので、私はトッキーとマキと一緒に自動販売機でジュースを買いに行くことにした。

 

「最近金欠だな」

 

「トッキーが金欠なんて珍しいね。何か買ったの?」

 

「部活の物を色々とな……」

 

 

 トッキーの答えに私は親が出してくれるものじゃないのかなと思ったけど、他所の家では違うんだろうという事で納得した。

 

「というか、コトミの財布、随分とパンパンだね。何時もスカスカで泣きそうなのに、今月はあまり使ってないの?」

 

「いや……これお(さつ)じゃなくてお(ふだ)……」

 

「また何かに影響されたんだ……」

 

 

 トッキーとマキに呆れられながら、私はジュースを買う為に小銭を取り出して、自動販売機の下に落としてしまう。

 

「あぁ!? なけなしのお金が!?」

 

「もうちょっと計画的に使いなさいよね……」

 

 

 マキが棒状の物を取ってきてくれたお陰で、何とかお金は取り出せたけど、マキの小言は私の耳に痛かった。タカ兄やお義姉ちゃんに散々言われている事をマキにも言われたのだ。

 

「そんなことは耳に胼胝ができるくらい言われてるよ」

 

「なら少しくらい反省しなさいよ」

 

「てか、早く戻らないと遅刻扱いになるぞ」

 

 

 トッキーが指差している時計を見て、私たちは早足で教室に戻ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夏休み明けの試験の結果が貼りだされ、私は順位を見て首を傾げた。

 

「ネネ、最近成績悪くなってない?」

 

「あはは……付け焼刃じゃどうにも出来なくなってきちゃってね」

 

 

 ずっと学年三位をキープしていたネネが、最近では上位に名前がないくらい点数が取れなくなってきているのだ。

 

「これじゃあネネも、コトミたちと一緒に勉強会をしなきゃいけなくなりそうね」

 

「さすがに補習にはならないだろうけど、勉強会はありがたいかな。スズちゃんだけじゃなく、津田君も教え方上手いんでしょ?」

 

「まぁタカトシはあのまま教師になれるんじゃないかってくらい、出題される問題を的確に当てたり出来るし、問題児相手にも慣れてるから、ネネくらいならすぐに更生させられると思うわよ」

 

「別に悪さをしたわけじゃないんだけど?」

 

「あんたの趣味は、十分更生させるに値すると思うんだけどね?」

 

 

 最近は七条先輩が大人しくなってるから、ネネだけがぶっ飛んだ趣味を大っぴらにしているのだ。タカトシとはそれほど交流がないから気にされてないが、私からすれば大問題なのである。

 

「スズちゃん用のちっちゃいのも作ってるんだけど、いる?」

 

「いらん! ……いらん!」

 

「何で二回言ったの?」

 

「念を押しただけ」

 

 

 ネネの事だから、一回断っただけじゃ諦めないだろうから、私は二回断って念を押したのだ。これで間違っても肯定の返事だとは思われないだろうからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夏休みの最後の方でコトミが迷惑を掛けたので、俺はアリア先輩にお礼の言葉と気持ちのお菓子を渡した。

 

「愚妹がご迷惑をおかけして、大変申し訳ございませんでした」

 

「そんなに気にしなくても良いよ~。お泊り会みたいで楽しかったし」

 

「そう言っていただけるのはありがたいのですが、あんまり甘やかすのはアイツの為にもなりませんので」

 

 

 ちなみに、この気持ちのお菓子はコトミの小遣いから天引きしているので、お礼と同時にコトミへの罰でもあるのだ。

 

「じゃあもし何か私が困った時に、タカトシ君が助けてくれる事で納得してあげる」

 

「そのくらいでしたら」

 

 

 さすがに無茶ぶりだったら困るが、だいたいの事なら何とか出来るだろうし、ここ最近の言動からあまりぶっ飛んだ事も言ってこないだろうという事で、それで手を打つことにした。

 

「それにしても、まさかカナちゃんもお見合いを持ち出されるなんてね~」

 

「そう言えば以前、アリア先輩もありましたね」

 

「ウチはいろいろとあるから仕方ないけど、カナちゃんは普通の家の子じゃない? 今のご時世お見合いを持ってくる親戚がいるとは思わなかったよ」

 

「俺も思いませんでした」

 

 

 まぁ正確には、前の集まりの際に義姉さんを見て、気に入った人が親戚の人を使ってお見合いを仕組んだらしいのだが、断ったのでその辺りは気にしなくても良いだろう。

 

「カナちゃん一人だったら、今頃話を進められてたのかな?」

 

「どうですかね。義姉さんも最初から断るつもりでしたので、無理矢理話を進めたところで途中で必ず頓挫したでしょうし」

 

「私たちはまだ高校生だもんね~。結婚とか考える年齢じゃないしね」

 

「高校生以前に、俺はまだ十七ですから結婚出来ませんよ」

 

 

 意思云々ではなく、法律で結婚出来ない俺とは違い、義姉さんやアリア先輩は法律的には問題ではないのだから厄介なのだろうな。

 

「そう言えば最近お見合いの申し込みがめっきり無くなったんだけど、魅力無くなっちゃったのかな?」

 

「出島さんが断ってるんじゃないですか? あの人、アリアさんが乗り気ではないのを知ってますし」

 

「そのまま出島さんのお得意様になってるのかな?」

 

「それも問題だと思いますけどね……」

 

 

 あの人の前職は聞いているので、何とも言えない気持ちになったが、とりあえずはアリア先輩に困った事態が起こらない事を祈るとしよう。




アリアのこれは後のフラグです

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