桜才学園での生活   作:猫林13世

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その発想が出てくるのが凄い……


斬新な宿泊施設

 今日はタカ兄がお義姉ちゃんの家の用事に付き合う事になっているので、私が家の鍵を持っている。どうやらタカ兄は泊りがけで出かけなければいけないらしいけど、何でお義姉ちゃんの家の用事にタカ兄が駆り出されたんだろう。

 

「おや? コトミじゃないか。何してるんだ、こんな所で」

 

「あっ、会長! アリア先輩にスズ先輩も。先輩たちこそ何してるんですか?」

 

「私たちは買い物だ」

 

「私も一緒です。今日はタカ兄もいないから、自分でご飯を用意しないといけないので」

 

「そうなのか? なら私たちが作ってやろう」

 

「本当ですかー!」

 

 

 正直、私は料理が得意ではないので、出来合いの物で済ませるつもりだったので、会長たちの美味しい料理が食べられるならぜひお願いしたい。

 

「それじゃあ荷物を持ってウチに帰りましょう」

 

「ところで、タカトシがいないってどうしたんだ? バイトならお前のご飯を用意していくだろうし」

 

「何でも親戚の集まりにお義姉ちゃんが呼ばれて、タカ兄はその手伝いで出かけてるんですよね」

 

「それで、何でコトミは留守番なんだ?」

 

「よく分からないんですけど、私が行くとややこしくなるらしいんですよね」

 

 

 会長たちとお喋りしながら歩き、家の前に到着して私は大問題に気が付いた。

 

「あれっ!? 鍵がない」

 

「何してるのよ……」

 

「鍵屋さんに電話したら~?」

 

「持ち合わせが無いんですよね……タカ兄に徹底管理されてるので」

 

 

 不在の間のお金は、タカ兄が必要最低分しか置いていってくれなかったので、ここで鍵屋を呼ぶと残り数日の私のご飯が無くなってしまうのだ……

 

「アリアの家に泊めてもらうのは?」

 

「生憎今日はお父さんのお客さんが大勢きてて、客間も空いてないんだよね……あっ、そうだ!」

 

 

 アリア先輩が何かを思い出したように手を叩き、そのまま七条家へと連れていかれた。

 

「キャンピングカーならあるよ~」

 

「斬新な宿泊施設ですね」

 

 

 とりあえず、今日の寝床は決まったようで、私はホッと一安心した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシは帰ってこれないようだが、両親に連絡がついたようで、明日には帰ってこられるとの事。まぁ、またすぐに出かけなければならないらしいから、忙しい合間を縫って戻ってきてくれるんだなと分かった。

 

「ちゃんと両親に謝るんだぞ」

 

「分かってますよ~。それにしても、この車の中広いですね~」

 

「車内にあるものは好きに使って良いよ~」

 

「この下着、可愛いですね~」

 

「コトミちゃんには少し大きいんじゃないかな?」

 

「さすがにアリア先輩程はありませんからね」

 

「「くそぅ!」」

 

 

 私と同時に萩村も悔しがったのを見るに、どうやら同じことを思ったようだな……

 

「ところで、この車ガソリンは入ってないんですね」

 

「あんまり使わないからね~」

 

「ガソリンが無くても、車体を揺らせばエンジンがかかる場合があるらしいぞ」

 

「へー、実験してみよう」

 

 

 ノリノリで実験したは良いが、結局エンジンはかからなかった……

 

「残念でしたね」

 

「まぁ、確率は低いらしいからな……」

 

「そう言えばアリア先輩、この車ベッドが見当たらないんですが」

 

「あぁ。ソファを組み替えればベッドになるよ~。二段ベッドになるから、好きなところで寝られるよ」

 

「私は絶対、二段ベッドの上が良いです」

 

 

 コトミが高らかに宣言する。まぁ、何とかは高い所が好きだっていうしな……

 

「私は御手洗いから近ければ何処でも」

 

「私も何処でも良いぞ」

 

「あれ? みんな泊まるんですか?」

 

「せっかく女子しかいないからな。女子だけしかいないお泊り会というのを楽しもうじゃないか!」

 

「というか、タカ兄がいてもあまり変わらないと思いますけど」

 

 

 コトミはそういうが、私たちからすればタカトシがいるといないとでは大違いなのだ。発言にビクビクする必要もないしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 親戚に呼び出された義姉さんの付き添いで田舎に舞い戻ってきたのは良いが、どうやら義姉さんにお見合いの話が出てきたらしいのだ。それを断るのを手伝うという理由で、俺はわざわざ田舎に連れてこられたらしい。

 

「タカ君のお陰で助かっちゃった。今時親戚がお見合いをセッティングするなんて無いと思ってたからびっくりしちゃって……」

 

「まぁいきなり言われれば驚きますよ、普通は。でも、納得してくれて良かったですね」

 

 

 義姉さんの相手とされた人は、三十過ぎのサラリーマンで、明らかに義姉さんと釣り合いが取れていない。それに義姉さんは進学するつもりなのに、向こうは家の事を全てやってもらいたいと思っていたらしく、明らかに主義主張が合わないお見合いだったので、潰すのに力を貸したのだった。

 

「ん? コトミから電話だ。どうかしたのか?」

 

『あっ、タカ兄? 私は今何処にいるでしょうか?』

 

「知るわけないだろ。家じゃないのか?」

 

『私は今、車の中にいます』

 

「車?」

 

 

 アリア先輩に会って何処かに出かけたんだろうか?

 

『そして今、おしっこ中です』

 

「は?」

 

 

 さすがにお漏らしという事は無いだろうし、そうなると可能性は絞られてくるな……

 

「お前、鍵失くしただろ」

 

『うっ!?』

 

「後でアリア先輩にお礼の電話をしなきゃいけなくなったようだな」

 

『ご、ごめんなさい……』

 

 

 どうやら当たりだったらしく、俺はため息を吐いて電話を切ったのだった。




察しの好いタカトシでした

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