桜才学園での生活   作:猫林13世

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少しは大人も手伝えよ……


帰省先でも

 私たち兄妹とお義姉ちゃんは、親戚の集まりで田舎の祖母の家にやってきていた。

 

「大人たちは昼間からお酒に酔っちゃってさー」

 

「偶の集まりなんだから、別にいいんじゃないか?」

 

 

 タカ兄も家事から解放されて、今は私と一緒に縁側でのんびりしているけど、何処か呆れ気味なのは私と同じ思いを懐いているからだろう。

 

「学生の私たちはかき氷でも」

 

「さっすがお義姉ちゃん!」

 

「すみません、義姉さん。俺がやるべきでしたね」

 

「タカ君は良いの。この集まりの目的は、タカ君を休ませることでもあるんだから」

 

「そうだよタカ兄。この間熱を出して寝込んだばかりなんだから」

 

「この間って程最近じゃないだろ?」

 

 

 タカ兄は気にしていない様子だけど、私とお義姉ちゃんは本気でタカ兄の体調を心配しているのだ。まぁ、心労の大半を占めている私が心配するのもお門違いなのかもしれないけど。

 

「とりあえず、かき氷を食べよう!」

 

「あんまり急ぐと、アイスクリーム頭痛になるぞ」

 

「あのキーンってやつだね」

 

 

 タカ兄とお義姉ちゃんが注意してくれたのにも拘わらず、私はかき氷を掻っ込んであのキーンというやつに襲われた。

 

「くっ、頭が!?」

 

「まさか、封印された記憶がっ!?」

 

「君たちはいつも楽しそうだね……」

 

 

 タカ兄が呆れながら私たちにツッコミを入れ、かき氷を一口食べる。家事から解放されてもツッコミからは解放されないのは、やっぱりタカ兄がそう言う星の下に生まれてしまったからだろうか。

 

「お茶でも淹れてくるから、大人しくしてろ」

 

 

 そう言ってタカ兄が台所に向かったのを見送って、私はその場に転がり込んだ。

 

「田舎って何にもすることが無くて暇ですね。こんなならゲーム持ってくればよかった」

 

「じゃあ、あや取りでもする? ちょうどここにひもがあるから」

 

「私、良く知らないんですよね~」

 

 

 子供の頃もやらなかったし、お義姉ちゃんにルールを教わりながらあや取りを始める。

 

「お茶持ってきたぞ――って、何してるんだ?」

 

 

 ルール説明を聞いていると、タカ兄がお茶を持ってきてくれた。なので私は、タカ兄に現状を伝える事にした。

 

「お義姉ちゃんの指から糸引かせる遊び――あれ?」

 

 

 私の説明を聞いて、タカ兄が襖を閉め去っていった。私、何か間違えたかな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず誤解だという事をタカ君に分かってもらい、何とか部屋に戻ってきてもらった。

 

「何だ、あや取りだったんですか」

 

「ゴメンね、タカ兄。私、何か間違えたみたいで」

 

「全くだ」

 

 

 タカ君が呆れながらコトちゃんの頭を軽く小突き、その場に腰を下ろした。

 

「女子はこーゆーの好きですよね。一人遊びって言うんですか?」

 

「でも、男の子もあや取り好きでしょ?」

 

「いえ、俺は特に」

 

「取り出しましたは予備のパンツ。これをこうして――パンツあや取り」

 

「義姉さんはもっと羞恥心を持った方が良いですよ?」

 

「大丈夫。タカ君の前でしかやらないから」

 

「俺も一応男なんですが?」

 

 

 タカ君のツッコミに、私は笑みを浮かべるだけだった。もちろんタカ君が男の子であることは知っているし、私の周りで一番男らしいのはタカ君だろう。だがそれと同時に、タカ君は主夫なので穿いていないパンツで興奮しない事も知っているのだ。

 

「お義姉ちゃん、お風呂一緒に入りましょー!」

 

「良いですね。タカ君も一緒に入る?」

 

「入りません」

 

 

 冗談でこの場を誤魔化して、私はコトちゃんと一緒にお風呂に向かった。

 

「あら? コトちゃん、それ……」

 

「タトゥーシールだよ。夏休みの間だけだけどやってみたんだ~」

 

「シールでもよくないよ?」

 

「ヤンチャしたい年頃なんだよー」

 

 

 コトちゃんの気持ちも分からなくはないけど、うっかり学校が始まってもそのままだとよくないし……よし!

 

「入れ墨をしたければ、健全な入れ墨にしなさい」

 

「でも、どうやって?」

 

 

 コトちゃんの疑問に答えるべく、私はカミソリを取り出した。

 

「――でね、陰○でハート作ったんだよ」

 

「見る?」

 

「いや、結構です」

 

 

 タカ君に呆れられたけど、コトちゃんはタトゥーシールを止めてくれたからこれで良かったのかな? コトちゃんに陰○生えてないけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシたちが田舎に帰省している間、私たちは私の家で宿題を片付けていた。

 

「ん、コトミからメールだ」

 

「タカトシ君たち、田舎に行ってるんだっけ? 魚見さんも」

 

「コトミのヤツはちゃんと宿題をやっているんだろうか……何々『昨夜は家族と川の字になって寝ました』か」

 

 

 添付されている写真を開き、私は危うく携帯を落としそうになった。

 

「シノちゃん?」

 

「会長?」

 

 

 アリアと萩村が私の携帯を覗き込み、二人ともそのまま固まってしまった。

 

「これは、どう見れば良いんだ?」

 

「普通に考えて、タカトシが寝た後で魚見さんとコトミが近づいて写真を撮ったんでしょうが……」

 

「タカトシ君が目覚めたの!?」

 

「それは無いと思うが……」

 

 

 タカトシなら寝ていても相手の気配を掴むことが出来るだろうし、こんな悪戯を許すとは思えない。だがアリアが言ったような事があるとも思えないし……

 

「カナからメールだ……『疲れ切って眠ったタカ君の隙を突いて撮りました』か……田舎でも苦労してるんだな」

 

「そうみたいですね……」

 

 

 帰省中も大変な思いをしてるタカトシに、私たちは同情の念を懐いたのだった。




休ませようとする意志は汲むけどさ……

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