桜才学園での生活   作:猫林13世

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どんな妖怪だよ……


リア充殺し

 夜になり臨海学校定番の肝試しをする事になったのだが、昼間足をつったスズは参加するかどうか微妙だという事で確認の為に、俺と横島先生と大門先生の三人でスズの足の具合を確認する。

 

「まだちょっと痛いですかね」

 

「なら無理をしない方が良いな」

 

「残念だが、萩村は留守番という事で」

 

 

 大門先生と横島先生の判断を聞いて、スズは何故か嬉しそうな表情を浮かべた。

 

「参加出来ないですか、残念です」

 

「嬉しそうだけど?」

 

 

 そう言えばスズは、こういった事が苦手だったな……多分参加出来なくてラッキーとか思ってるのかもしれない。

 

「それじゃあ、安静にしておくんだな」

 

「誰もいないからってソロ活動を――」

 

「アンタじゃないから大丈夫ですよ」

 

 

 余計な事を言いそうになった横島先生の首根っこを掴んで部屋から退場する。最近会長たちが大人しくなった分、この人の奇行が目立つんだよな……

 

「お帰り。萩村の様子は?」

 

「まだちょっと難しそうなので、留守番を頼みました」

 

「そうか。ならちょうどだな」

 

「何がですか?」

 

「肝試しのペアが」

 

 

 そう言って会長が余ってるくじを俺に渡してきた。つまり俺は残り物というわけか……

 

「それではくじを開けてくれ」

 

「あっ、タカトシ君とペアだね」

 

「よろしく」

 

 

 何だか久しぶりに三葉とペアになった気がするが、三葉ならおかしなことにはならないだろうから安心出来る。

 

「トッキー、驚いてパンツ濡らさないようにね」

 

「濡らすか!」

 

 

 相変わらず変な事を言ってる妹が視界に入ったけど、時さんに対応を任せよう……

 

「それでは、各自時間になったらスタートしてくれ! くれぐれも腰を抜かさないように」

 

「気絶しても知らないからね~」

 

「………」

 

 

 厄介な二人が脅かし役になったな……あそこに畑さんなんかも加わってるから、余計に面倒な事になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 久しぶりにタカトシ君と二人きりで行動する事になったけど、タカトシ君は特に気にした様子も無くすたすた歩いて行ってしまう。

 

「三葉、足下気を付けて」

 

「あっ、うん。ありがとう」

 

 

 ちょっとした段差があったので、タカトシ君は私の足下にライトを向けてくれた。こういった些細な気遣いが出来るから、タカトシ君はモテるんだろうな……

 

「(それにしても、ちょっと怖いかもしれない……普通の人間なら何とでもなるけど、もし本当のお化けが出て来たらと思うと……)」

 

 

 会長たちが脅かし役に決まってると分かってるのにこんなことを考えてしまう私って、ちょっと子供っぽいのかもしれない……

 

「(タカトシ君は怖くないのかな……もし怖くないなら手を握ってもらいたいけど、ちょっと子供っぽいよね)」

 

 

 もしスズちゃんみたいな見た目なら問題ないのかもしれないけど、私が言ったらタカトシ君に呆れられるかもしれない……

 

「(そうだ! ズボンならセーフだよね。でも恥ずかしいから少しでも大人っぽく聞こえるように漢字で表現しよう)」

 

 

 私は少ない脳みそをフル回転して、何とかして大人っぽい表現にしようと頑張った。

 

「タカトシ君、下半身握ってもいいかな?」

 

「は?」

 

「……あれ?」

 

 

 何だか変な表現になったような……

 

「怖いの?」

 

「ちがっ!? ……はい」

 

「ほら」

 

 

 タカトシ君が手を差し出してくれて、私は一瞬何のことか分からなかったけど、すぐにその意味を理解してタカトシ君と手をつないだ。

 

「ゴメンね、タカトシ君。普通の変質者とかなら何とかなるんだけど……」

 

「普通、変質者の方が怖いと思うんだが」

 

「そうなの?」

 

「まぁ、三葉だからな」

 

 

 何だか呆れられたような気がするけど、繋いだ手が暖かいから良しとしよう。

 

「っ!?」

 

 

 ほっこりしてたのも束の間、草陰から誰かが飛び出してきて私はタカトシ君の腕にしがみついた。

 

「シノ会長? 何してるんですか?」

 

「いや……妖怪リア充殺しを演じてみた」

 

「そんなのいるんですか?」

 

「何だかいいムードだったから、そのムードを壊そうと思って……」

 

「ムード?」

 

 

 タカトシ君と会長が話してる内容が高度過ぎて、私にはよくわからなかった。でもタカトシ君が呆れてるのを見ると、分からなくてもいいのかなって思えてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全チームがゴールに到着したので、私たち脅かし役もゴールへと集合した。

 

「全員いるか確認してくれ」

 

「分かりました」

 

 

 横島先生に言われるまでもなく、私は人数を数え始めていた。まぁ、はぐれた人がいるとも思えないから、形だけの確認なんだけどな。

 

「……あれ?」

 

「どうかしたのか?」

 

「始めた時より一人多いような……」

 

 

 そんなはずがないともう一回数え始めるが、やはり始めた時より一人多い。

 

「まさか、本物の幽霊が……」

 

「あっ、お疲れさまです」

 

「は、萩村……何故ここに?」

 

 

 足をつった影響で宿舎で留守番をしているはずの萩村が混じっていたのだ。そりゃ一人多いわけだ……

 

「いえ、宿舎に一人でいるのも怖かったので……」

 

「あぁ……無人の部屋とか、結構怖いもんな」

 

「会長! トッキーが足を滑らせたので宿舎に戻っていいですか?」

 

「大丈夫、トッキー? 私がおんぶしていこうか?」

 

「いえ、大丈夫です……」

 

 

 最後まで騒がしかったが、これはこれでいい思い出になったな……タカトシと一緒に周れなかったのが残念だが。




スズはやっぱりこどm……

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