桜才学園での生活   作:猫林13世

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追われる原因は畑さんにある……


追われる畑

 タカ君がバイトの為、家事一切を任された私は、服を脱ぎ散らかしているコトミちゃんにお説教をする事にした。

 

「きちんと畳まないと駄目でしょ」

 

「ごめんなさーい」

 

「まったくコトミちゃんは……」

 

 

 普通に怒っても全く反省しないコトミちゃんの為に、私は怒り方を変える事にした。

 

「例えばベッドの前に服を畳まないで置いて、こうやってベッドに潜り込んだら――」

 

「何だかすっごくエロいです!」

 

「でしょ? こんなところをタカ君に見られたらなんて言われると思う?」

 

「……大目玉必死ですね」

 

 

 ただでさえこの間怒られたばかりなのだから、コトミちゃんはもぞもぞと動き出し服を畳み始めた。

 

「というか、年頃の女の子として、何時までも兄に服を畳んでもらうのはどうかと思うよ?」

 

「タカ兄が普通の兄だったら自分で畳んだかもしれませんけど、タカ兄は妹の服や下着で興奮するはずありませんから。むしろ私がタカ兄のパンツで興奮しちゃいますし」

 

「それは分かります」

 

 

 タカ君が普段穿いているパンツを見るだけで、お義姉ちゃん大興奮ですからね……そういう邪な気持ちに気付いているのか、普段は触らせてくれませんけどね。

 

「兎に角、コトミちゃんはもう少し自立する事を目標にした方が良いよ? 私やタカ君も、何時までもコトミちゃんの面倒を見てあげられないんだし」

 

「分かってはいるんですけどね~」

 

 

 全く反省してない様子だけど、これ以上強く言うと反発して何もしなくなっちゃうかもしれないので、今日のところはこれくらいで勘弁しておいてあげましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシが職員室に報告に行っている間、私たちは生徒会室で談笑していた。するといきなり畑が生徒会室に飛び込んできた。

 

「匿ってください!」

 

「どうしたんだ?」

 

「追われているんです! 追手が来ても誤魔化してください」

 

 

 そう言って畑は、テーブルの下に潜り込んだ。

 

「何だかサスペンスドラマを観てるみたいだね~」

 

「私はフェチ系AVを観てる気分です」

 

「追い出すぞ、こら」

 

 

 人のパンツを覗き込んでいた畑にそうツッコミを入れたタイミングで、生徒会室の扉がいきなり開かれた。

 

「ここに畑さんが逃げ込んで来ませんでしたか!?」

 

「五十嵐……急いでいるのは何となく分かったが、せめてノックはしてくれ。もし着替え中とかだったらどうするつもりだったんだ」

 

「あっ、申し訳ありません……ですが、緊急事態なんです」

 

「そうか……悪いが畑はこっちには来てないぞ」

 

「そうですか……相変わらずすばしっこい人で困っちゃいます……」

 

 

 肩を落として生徒会室を去った五十嵐の足音が聞こえなくなってから、畑が机の下から顔を出した。

 

「助かりました」

 

「まったく。急に『机の下ではエロい事が行われていたプレイ』をするんじゃない」

 

「会長のポーカーフェイスはさすがですね」

 

「タカトシがいないからって、なにやってるんだよ!」

 

 

 萩村にツッコまれて、私はとりあえず反省の気持ちを懐いたが、それよりも気になることがあるのですぐに表情を改める。

 

「それで、何をして五十嵐に追われてたんだ?」

 

「そう言えば、何も聞いてなかったね~」

 

 

 アリアも同じ疑問を懐いたのか、私の言葉に同意して畑に視線を向けた。

 

「話すと長くなるのですが、風紀委員長に密着取材(無許可)をしていたらなんやかんやありまして」

 

「なるほど、そういう事か」

 

 

 私はアリアと萩村に目配せをして、二人は頷いて私の考えに同意してくれた。

 

「没収だ」

 

「あーれー」

 

 

 アリアと萩村が畑を取り押さえ、私が畑のカメラを取り上げる。機械音痴なので弄ったりはしないが、後で五十嵐に渡しておこう。

 

「畑さん! やっぱりここにいた!」

 

「げっ! 風紀委員長……何故ここに舞い戻ってきた!?」

 

「タカトシ君に畑さんの気配を探ってもらったんです!」

 

「何があったんですか?」

 

 

 職員室から戻ってきたタカトシが、不思議そうに扉の向こうから顔を覗かせて尋ねてくる。

 

「畑さんが五十嵐さんに密着取材(無許可)をしてたらしいのよ」

 

「なるほど、そういう事か」

 

 

 それだけで全てを察したタカトシは、チラッと私が持っているカメラを見て、すぐに視線を畑に移した。

 

「あれだけ言っても止めないなら、やはり新聞部は活動休止にするしかないですかね」

 

「それは困ります!? そうなったら私のお小遣い――じゃなかった! 津田先生の大勢のファンが悲しみますので」

 

「畑さん、ゆ~くりと話し合いましょうか?」

 

「あっ……」

 

 

 五十嵐の事を忘れていたのか、畑は血の気の引いた顔で五十嵐の方へ振り向き、そのまま連行されていった。

 

「というか、何で畑さんを匿ったんですか?」

 

「理由を聞いてなかったから、とりあえず匿ったんだが……理由を聞いて五十嵐に引き渡そうとしてたところにタカトシと五十嵐が戻ってきたんだ」

 

「そうでしたか。またシノ会長が悪ふざけでもしたのかと思いましたよ」

 

「そ、そんなわけ無いだろ?」

 

 

 実はちょっとだけ悪ふざけしたので、私は視線を明後日の方へ向けて答えた。その所為でタカトシの視線が痛いが、追及してくることは無かったので安心したのだった。




タカトシがいないと相変わらずだなぁ……

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