桜才学園での生活   作:猫林13世

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何か天気が今一つ……


シノの通訳

 私は風紀委員長の五十嵐カエデ、より良い学園作りの為に毎日校舎の見回りをしています。

 

「あら、萩村さん」

 

「五十嵐先輩、こんな所で何を?」

 

「校内の見回りです」

 

「そう言った仕事もされてたんですね」

 

「あら、生徒会役員でしたらそれくらい把握していて欲しいですね」

 

 

 萩村さんと津田君はしっかりしてると思ってたけど、萩村さんも意外とそうでも無いのかしらね。

 

「いやだって、一年のフロアで五十嵐先輩を見かけた事が無いもので」

 

「……男子が居るから」

 

 

 見回りだけとは言え、男子生徒と接近する恐れがある一年のフロアの見回りは他の風紀委員に任せているのよね……

 

「会長、七条先輩」

 

「おう萩村」

 

「カエデちゃんもこんにちは」

 

「どうも」

 

 

 萩村さんと雑談していたら廊下の向こう側から天草会長と七条さんがやって来た。

 

「はぁ……」

 

「シノちゃん、ため息は幸せ逃がしちゃうわよ」

 

「そうは言ってもだなアリア、出てしまうものはしょうがないだろ」

 

「じゃあため息吐けなくすれば良いんだね! 良いものがあるよ!」

 

「良いもの?」

 

 

 そう言って七条さんが鞄の中から何かを取り出した。

 

「これなら息は吐けてもため息にはならないよ!」

 

「すぴー」

 

「何て物学園に持ち込んでるんですか!」

 

「あらカエデちゃん、これが何だか分かるようね」

 

「そ、それは……」

 

 

 明らかに普通の生活で使うものでは無いし、だってあれってそう言うプレイで使うものですよね……萩村さんだって分かってるようだし、これくらいの知識は私にだってありますよ。

 

「皆さん、お疲れ様です……って、会長? 何咥えてるんです?」

 

「すぴー」

 

「ため息防止? それなら普通にため息を吐かないように心掛ければ良いだけでは?」

 

「すぴ~」

 

「癖になりつつあるのでこれで調整してるですか? でも効果あるんですかね?」

 

「すぴぃ~~」

 

「なるほど、やる前から諦めたくないんですか、会長らしいですね」

 

「ちょっと待って!」

 

「はい?」

 

 

 津田君が普通に天草会長と会話してたのだけれど、会長は息を吐いているだけで何も言ってなかったと思うんだけど……

 

「津田君は天草会長が何を言ってるのか分かったの?」

 

「ええまぁ。会長って顔に出やすいですし、息の感じもそんな風でしたし」

 

「相変わらず妙な特技を持ってるわね、アンタって」

 

「そうかな? 妹が似たような事してたからかな」

 

「妹ってあの変な?」

 

「変って……まぁそうだけど」

 

「すぴー! すぴすぴー!!」

 

「分かりましたよ。生徒会室に行けば良いんですね」

 

「すぴ!」

 

「それじゃあ五十嵐さん、俺たちはこれで」

 

 

 津田君に通訳され、天草会長は嬉しそうだった。それにしても津田君、相変わらずハイスペックなんだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会長も咥えていたものを外して普通に話すようになったし、生徒会室での作業も滞りなく進んでいる。

 

「あら? シノちゃん、蛍光灯が切れ掛かってるんだけど」

 

「本当だ」

 

「予備の蛍光灯ありました」

 

「それじゃあ誰かが交換するんだな、津田を使って」

 

 

 使うって……てか横島先生、居たんですね。全く気付きませんでしたよ。

 

「脚立とか無いんですか?」

 

「わざわざ取りに行く時間がもったいないだろ」

 

「そうね、でも津田君に負担を掛けない為にも軽い人が乗った方が良いわよね」

 

「そうですね。津田ばかりに負担を掛けるのは可哀想ですし」

 

「軽い人……軽い女か……」

 

 

 あれ? 意味合い変ってないか?

 

「横島先生、お願いします」

 

「おし任せろ! ……あれ? 私って軽い女なのか!?」

 

 

 会長たちに抗議してる姿を見て、何故この人が生徒会顧問なのかと考えてみた。顧問とは指導する立場の人であり、生徒会もまた例外ではないはずなんだが……あっ!

 

「そうか、そうだったんだ……」

 

 

 改めて生徒会の面子を見て理解した。完璧超人の天草会長、優秀なお嬢様で此方も完璧超人の七条先輩、帰国子女でIQ180の天才の萩村、つまり顧問は必要無かったからこの人が選ばれたんだろうな……ってあれ? もしかして俺って生徒会でういてないか?

 

「何だ津田その目は……興奮するだろ」

 

「そう言うのがダメなんじゃね?」

 

「何がよ?」

 

 

 やっぱりこの人は必要無いから生徒会顧問にされたんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 廊下で柳本と話していたらふと気になった事があった。

 

「柳本、ズボンのボタン取れかかってるぞ」

 

「え? ……あっ、本当だ」

 

「針と糸があれば直せるんだが……」

 

「私もってるよー」

 

「三葉、ちょっと貸してくれないか」

 

「良いけど、タカトシ君って裁縫も出来るんだねー」

 

「昔から妹の服が綻びたら直してたから」

 

 

 両親共働きだしそれくらいは出来るようになっていてもおかしく無いくらいコトミが派手にやらかしてたからな……

 

「へー津田君って器用なんだねー」

 

「七条先輩、こんにちは」

 

「なっ! 七条先輩だと!?」

 

 

 何だか柳本の様子がおかしいんだが、何があったんだ?

 

「こ、こ、こ、こんにちは!」

 

「こんにちはー、それじゃあ津田君、後でね」

 

「分かりました、それでは」

 

 

 いったい何をしに来たんだあの人は……

 

「津田! 後でって如何言う事だ!」

 

「何だよ急に……生徒会で会うからって意味だよ」

 

「そうだよな……良かった」

 

「何が……ほい、終わり。三葉、ありがとうな」

 

 

 針を三葉に返し、柳本の身体を軽く叩いてもう動いても良いと合図を送った。それにしても何だか嫌な予感がするのは何故だろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 急に津田に用事が出来てしまったのだが、生憎携帯の電源が切れてしまった……さて、何処に居るんだ……

 

「シノちゃん、如何かしたの?」

 

「アリア、良い所に!」

 

「ん~?」

 

「津田を探してるんだが何処かで見かけなかったか?」

 

「見たよ~」

 

「本当か!」

 

 

 良かった、これで余計な場所を探さずに済むぞ。

 

「向こうで男友達の下の世話をしてたよ」

 

「!?」

 

 

 まさか、津田がそっちの趣味だったとは……しかも堂々と!?

 

「ズボンのボタンが取れかかってたんだろうねー。それにしても凄く器用だったよー」

 

「……ズボンのボタン?」

 

 

 何だそう言う意味か……相変わらずアリアの冗談は破壊力があるな……




タカトシの新たな凄さが出た回でした

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