桜才学園での生活   作:猫林13世

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タカトシはいません


第一回女子会

 タカ兄に言われて待ち合わせ場所に行くと、そこには桜才学園生徒会役員の三人と、英稜高校生徒会役員の二人がやってきた。

 

「何故コトミがここにいるんだ?」

 

「えっと……タカ兄の名代? としてここに派遣されました」

 

「読まれていたというのか……」

 

「シノ会長、なんだかガッカリしてません?」

 

 

 私がこの場にいたらいけなかったのだろうか……まぁ、タカ兄なら会長が何を企んでいるかなんてお見通しだっただろうから、最初からここにタカ兄が現れるなどありえないのだけど。

 

「せっかくタカ君用に大きめの女性服とウィッグを持ってきたのに」

 

「タカトシ君男の娘作戦、失敗」

 

「先輩たちは何処を目指してるんですか?」

 

 

 そんな事しようものなら、タカ兄に怒られるに決まってるのに……というか、タカ兄がそんなものを大人しく着ると思ってるのだろうか?

 

「タカトシがいないんじゃしょうがない。私たちでコトミに淑女の心得を教え込もうじゃないか」

 

「げっ!?」

 

「というわけで、第一回生徒会役員女子による女子会としゃれこもうじゃないか」

 

「わ、私は生徒会役員じゃないので、これで失礼しま――」

 

「コトミちゃんはタカ君の名代なんでしょ? だったら問題ないよね?」

 

「……タカ兄、まさかここまで読んで私を派遣したんじゃ」

 

「タカトシならありえるわね」

 

 

 スズ先輩にがっちりと腕を掴まれてしまい、私は逃げ出す事が出来なくなってしまった。まさかタカ兄が私を派遣した理由が、会長たちの考えを潰す為じゃなく、私に女としての心得を身に着けさせるためだったとは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コトミを連れて店に入った我々は、取り合えず注文を済ませる事にした。

 

「バームクーヘンを3つください」

 

「3つも食べるのか?」

 

 

 そんなに食べたら体重が気になってしまうのではないかと思いツッコんだが、カナからはそんな心配は感じ取れなかった。

 

「3という数字は女性的なイメージがあると言われています。だから3にこだわれば女子力が上がるはずです」

 

「そうでしょうか? 数字にはそんなイメージがあるかもしれませんが、3つも食べたら大食いな女の子という印象を持たれ、逆に女子力が下がる気がするんですが」

 

「まぁ、男の子の前で3つも食べませんけどね」

 

 

 森のツッコミに、カナがあっさりと手のひらを返した。確かに3つも食べれば女子力アップなどありえないと思うし……

 

「というか皆さん、女子力って何ですか?」

 

「女子力というのは、女の子らしいと思わせられる事らしいけど、そもそも女子な私たちにはあまり関係ない気もするな」

 

 

 そういう事を気にするのは、彼氏のいないOLとからしいし、私たちにはまだ関係ないだろう。

 

「具体的には、料理上手だったり、掃除が得意だったり、洗濯する際の手際が良かったりなど、家事力とイコールとも思えるものですね」

 

「じゃあタカ兄は女子力高いですね」

 

 

 コトミの何気ない一言に、私たち全員固まってしまった。

 

「そう言われてみれば、タカトシは女子力の塊のような存在じゃないか?」

 

「ですが、タカ君はカッコいい男子です。女子力云々を言われるのは嫌なのではありませんか?」

 

「だけど、タカトシ君の家事スキルが高いのはここにいるみんなが知っている事だよ~? 下手をすれば、それを生業にしている出島さんといい勝負が出来るくらいに」

 

「そもそも、女子である私たちより女子力が高いわけですよね、タカトシは……」

 

「前々から思っていましたが、女としての自信を無くしそうです……」

 

「あ、あれ?」

 

 

 コトミだけがショックを受けていないからか、私たちの落ち込みようを見てオロオロしているが、そもそもこいつが原因でタカトシの女子力が高いんじゃないだろうか……

 

「もしや、コトミと同居すれば私たちの女子力も高まるんじゃないか!?」

 

「コトミちゃんと同居するのは、かなりの精神的ストレスが掛かりますよ? タカ君だって一時期その所為で胃痛や頭痛を覚えていましたから。現在では慣れたのか改善されたのかは分かりませんが、多少はマシになっているようですが」

 

「そうだったな……」

 

 

 コトミの受験の際に、受験生のコトミではなくタカトシの方が追い込まれていた事もあったし、赤点補習のピンチという時も、当の本人はのほほんとしていたが、タカトシはだいぶピリピリしていたしな……あれを私が受け入れられるかと考えると、コトミと同居作戦は却下だな。

 

「それに加えてタカ兄は、バイトや新聞部からの依頼などをこなしていますからね。女子力以外も相当高いと思いますよ」

 

「……とりあえず、タカトシを目標にするのは止めにしよう」

 

「……そうですね。あいつは私たちとは違う種類の人間なんでしょうしね」

 

「タカ君の凄さが証明されてお義姉ちゃん嬉しいですが、私もタカ君より女子力が低いと考えると複雑です」

 

「あの……とりあえず普通に女子会しませんか? 女子力とか気にしない方向で」

 

「そうしましょうよ。美味しそうなスイーツもあるわけですし、今日はいろいろと気にしないで食べましょう」

 

 

 森の意見にコトミが全力で乗っかったが、確かにそれが一番精神衛生上良いのかもしれないな。

 

「よし! 今日は体重の事とか気にせず食べるとするか!」

 

「おー!」

 

 

 こうして第一回生徒会役員による女子会は、ただのお喋りの場と化したのだった。




別にこだわるものではないと思うんだけど……

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