桜才学園での生活   作:猫林13世

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宿直担当の教師が一番駄目人間……


宿直 前編

 放課後の生徒会室。今日の活動が終わり、解散となるタイミングで会長が口を開いた。

 

「明日は休みだが、清掃ボランティア活動のため休日登校だ。忘れないように」

 

「はーい。でも明日寒いんだよね? いっそ学校に泊まっちゃおうかしら」

 

「アリア先輩は、出島さんに迎えを頼めばいいのでは?」

 

 

 七条先輩のボケだかマジだか分からないセリフに、タカトシは至極まっとうな答えを返した。だが一人真に受けた人間が、七条先輩に声をかける。

 

「別に泊っても良いぞ」

 

「横島先生?」

 

 

 いきなり現れて何を言いだすのかとタカトシが視線で問いかけると、先生は私たちをある部屋へと案内した。

 

「一緒に宿直やろうぜ!」

 

「一人だと寂しいんですか?」

 

「そ、そんなんじゃないわよ!」

 

 

 タカトシのツッコミに慌てる横島先生。先生は意外と寂しがりやだという事を、私たちは知っているので、生暖かい視線を向けて、一度着替えなどを取りに家に帰る事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それぞれ再び学校に戻ってきてから、私たちは宿直室に向かう。

 

「それにしても、宿直制って前時代的ですよね」

 

「まぁ古き良き何とかってことで」

 

 

 宿直室の前で待っていた横島先生に続き、私たちは室内に入った。

 

「そういえば、宿直室なんて初めて入りました」

 

「私も~」

 

「当たり前だろ。ここは選ばれし者――特殊な人間しか入れない場所なのさ」

 

「先生までコトミに感化されてるんですか?」

 

 

 厨二的な発言をした横島先生に、タカトシ君が呆れ顔でツッコミを入れる。

 

「とりあえず日誌をつけるとするか。日付、当直の名前、活動内容の報告か……九時から校舎の見回りだ」

 

「分かりました」

 

「(スズちゃん、怖がってないんだ。成長してるんだね)」

 

 

 スズちゃんの反応を見て感心していた私の隣で、タカトシ君が苦笑いを浮かべているのが気になり、私はタカトシ君に尋ねた。

 

「(どうしたの?)」

 

「(いえ、スズの考えが分かって呆れただけです)」

 

「(スズちゃんの考え?)」

 

 

 視線でタカトシ君に問うと、タカトシ君は「スズの名誉にかかわるので黙っておきます」とだけ言ってそれ以上は教えてくれなかった。

 

「それじゃあ、私たちは先に風呂を済ませるとするか。まぁ、シャワーしかないがな」

 

「それじゃあ、俺は部屋で留守番してますので」

 

「別に一緒でも構わないぜ? シャワー室は女子用しか無いんだし」

 

「遠慮しておきます」

 

 

 横島先生の誘いをやんわりと断って、タカトシ君は宿直室に残った。

 

「アイツ、本当に性欲が無いんじゃないかってくらい、誘いに乗ってこないよな~」

 

「タカトシが普通の男子高校生だったら、とっくに○貞を卒業してるでしょうし。あれだけモテてるんですから」

 

「だよな~。あっ、石鹸貸してくれ」

 

「どうぞ」

 

 

 シャワー室でシノちゃんと横島先生が話しているのを聞いて、私はその通りだなと思っていた。だって、タカトシ君が普通の男子高校生並みに性に敏感だったら、とっくに誰かと合体してるはずだし。

 

「濡れると髪の毛が絡まっちゃうんですよね」

 

「キューティクルは繊細だからな。だから自然乾燥する前にドライヤーで乾かすのがポイントだ」

 

「へー」

 

 

 シノちゃんの雑学に、スズちゃんが感心している。スズちゃんにも知らないことがあるのね――下ネタ以外で。

 

「だからパイ○ンの方が良いぞ。濡れ場でお互いの○毛が絡まるから」

 

「未経験者だからってバカにすんなっ!!」

 

 

 スズちゃんのツッコミがシャワー室に響き渡り、私とシノちゃんは顔を見合わせて苦笑いを浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 四人がシャワーを浴びている間に、晩飯の用意を済ませた。と言っても、簡単なものなのでそれほど手間はかからないが。

 

「夕飯はおでんか~、嬉しいね」

 

「着替えを取りに行ったついでに、材料を持ち寄ったんです」

 

「それにしても、相変わらずタカトシの料理は美味そうだな」

 

「おでんなんて、不味そうに作る方が難しいと思いますが」

 

「この間コトミが作ってるのを見たが、生産者に謝った方が良いんじゃないかってくらい失敗していたぞ?」

 

「アイツはまぁ……ある意味特別でしょう」

 

 

 会長の言葉に苦笑いを堪えられなかった。確かにアイツの料理は、どれをとっても不味そうだしな……

 

「って、横島先生、お酒飲んじゃって大丈夫ですか? この後見回りなんですが」

 

「一杯くらい平気だって」

 

 

 そう言っていた三十分後。

 

「あれ~? おかしい、酔いが回って……」

 

「空腹の状態で飲むからですよ」

 

「浣腸液でおなかいっぱいなんだけどなー」

 

「本当に酔って……いや、マジなのか?」

 

 

 この人の事だから、これが本気の可能性の方が高そうだな……

 

「もうダメ……」

 

 

 そう言って横島先生は机に突っ伏して寝てしまった。

 

「結局酔いつぶれちゃったね」

 

「仕方がない。我々だけで見回りをするとしよう」

 

「………」

 

「スズちゃん?」

 

 

 会長の宣言に、スズが引き攣った笑みを浮かべているのをアリア先輩が気にしている。スズが何を考えているのかは、彼女の名誉の為に伏せるが、スズは相変わらずなのかと苦笑いを浮かべてしまったのは許してもらいたい。




スズの考えてた陣形は不可能に……

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