桜才学園での生活   作:猫林13世

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あっという間に解決


ミステリーツアー 解決

 どんな事件に巻き込まれようと、お腹は空くもので、我々はひと時のディナーを楽しむことにした。

 

「洋館だけあって、ナイフとフォークか」

 

「テーブルマナーを気にする人はいませんが、普通に出来ますからね」

 

「私、ちょっと不安なんだけど」

 

「まぁ、コトミちゃんは出来なくても仕方ないかもね」

 

 

 不安そうな顔を見せるコトミに、カナがバッサリと斬り捨てるような言葉をかける。するとコトミはショックを受けるどころか、嬉しそうに食べ始めた。

 

「今の、落ち込むところじゃなかったのか?」

 

「駄目でも指摘されないと分かったからじゃないですか?」

 

「あぁ、そういう事か」

 

 

 指摘されないと分かったから嬉しそうにしてたのか……てっきりコトミがドMで、カナに罵倒されて喜んだのかと思ったが、それは言わない方が良いな、うん。

 

「それにしても、アリアはさすがだな。コトミのを見た後だからかもしれないが、ナイフとフォークの使い方が上手だ」

 

「ありがとー。私も昔は出来なかったんだけど、父の仕草を見て覚えたの~。ほら、子供は親の背中を見て育つって言うじゃない?」

 

「あぁ、言うな」

 

「でもうちの父、母にイジメられた後だったのか、無数のろうそくの痕がついてたんだよね~」

 

「あはは、それは酷いな」

 

「笑い事なんですか、それ?」

 

 

 タカトシがジト目で私たちを見てきたので、私たちは慌てて視線を逸らしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 食事を終えて一息ついていると、部屋に犯行予告らしき紙が貼られている事にシノっちが気が付いた。

 

「なになに『三つの針が一つになる時、Hな布を頂く』だと? どういう意味だ?」

 

「暗号ですかね~? 私には難しくて分からないですけど」

 

「タカ君、分かった?」

 

「えっ? えぇまぁ」

 

「おっと待った! 私にも分かったぞ」

 

 

 タカ君に答えを聞こうとした私を手で遮り、シノっちが自信満々に胸を張っていました。

 

「この針とは時計の針で、三つの針が一つになる時とは深夜零時の事だ。そしてHな布とはHカップのブラ!!」

 

「という事は、標的はHカップの人って事? 怖いねー」

 

「あぁ、怖いな」

 

「怖いですね」

 

「アリア先輩は兎も角、シノ会長とスズ先輩は怖がる必要は無いんじゃないですか?」

 

 

 空気を読めなかったコトミちゃんが、言ってはいけないことを言ったせいで、シノっちとスズポンの視線がコトミちゃんに突き刺さった。

 

「というか、もうすぐ零時ですね」

 

「こういう時、男の子のタカ君が羨ましい」

 

「何でです?」

 

「だって、ブラしてないでしょ? だから狙われる心配が無いじゃない」

 

「はぁ……」

 

「ねぇタカトシ君。怖いからくっついててもいいかな?」

 

「おい、アリア――」

 

「私のブラ、フロントホックだから」

 

「――ぬけが……あ、あれ?」

 

 

 怖いという理由でタカ君に抱きつこうとしたのではないかと疑ったシノっちでしたが、単純に盗難対策だと分かり呆気に取られてしまったようです。

 

「な、なんだっ?」

 

「停電ですね」

 

「うひゃっー!?」

 

 

 辺りが暗くなったと思ったら、スズポンの悲鳴が部屋に響き渡りました。

 

「HカップはHカップでも、硬い方のHでしたか。ハードのH」

 

「鉛筆じゃないよ、マシュマロだよ」

 

「スズ、そのツッコミはどうかと」

 

 

 ブラを盗まれたスズポンの力ないツッコミに、タカ君が同情的なツッコミを入れました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これ以上の被害を防ぐために、全員で同じ部屋で寝ることにしたのですが、私には気になっている事がありタカトシさんに声をかけました。

 

「これって、私が犯人を追及しなければいけないのでしょうか?」

 

「まぁ、犯人役という名の探偵役に指名されているのがサクラさんですから」

 

「でも、タカトシさんは最初から犯人があの人だって分かってましたよね?」

 

「あの手紙を部屋に運んだのはあの人ですから」

 

 

 常人には出来ない特定の仕方で犯人を見抜いていたタカトシさんと私とでは、探偵役としての説得力が違うと思うんですけど……

 

「サクラっち、どうかしたの?」

 

「犯人が分かりました」

 

「本当か?」

 

「えぇ。まずこの手紙は、私に罪をかぶせる為のブラフです。そして犯人は天草さんがいた女湯に忍び込むことが出来て、コトミさんの縞々パンツを盗むような邪な人で、七条さんのバストサイズを知っていてかつ、萩村さんのブラを抜き取るフィンガーテクを持つ出島さん、貴女です」

 

「お見事です。言い逃れの出来ない推理ですね」

 

 

 私の推理に、出島さんが拍手をしながら称賛を送ってきました。

 

「さぁ、大人しくお縄につきましょう。早く縛ってください」

 

「うわー反省してないよこの人……」

 

 

 縛られるのをドキドキしながら待っているのを見て、私は思わず素の思いが零れてしまいました。

 

「でも何でタカトシを犯人役に指名しなかったんですか? 女物の下着を盗むなら、男であるタカトシの方が自然だったのに」

 

「だって、タカトシ様には手紙を仕込む前から私が犯人だとバレてたようですし」

 

「そうなのか?」

 

「えぇ。だって、部屋割りがあからさま過ぎでしたし。俺とサクラさんを同室にしたのは、このミステリーツアー完遂に俺も一役噛まされたからですよね?」

 

「その通りです。そして何よりの理由は……タカトシ様がここにいるメンバーの下着を盗むわけがないという、絶対的な信頼を得ているからです」

 

 

 出島さんの言葉に、私たち全員納得してしまいました。確かに、例え普通に盗難事件が起こっても、真っ先に疑うのはタカトシさんではなく出島さんだったでしょうね……




男より下着ドロの可能性が高い出島さん……

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