桜才学園での生活   作:猫林13世

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問題はやっぱりコトミ


三者面談

 生徒会室で、一枚の紙を眺めながらため息を吐いたら、シノ会長が心配して肩口から覗き込んできた。

 

「三者面談の紙か。何がそんなに心配なんだ?」

 

「いえ、相変わらず両親が出張中でして……保護者同伴じゃなきゃダメだろうなと思って」

 

「まぁそうだろうな。だが君なら問題ないんじゃないのか? 面談で話さなきゃいけない事などなさそうだし」

 

「いえ、コトミの事で……」

 

「あぁ、なるほどな」

 

 

 一応俺も面談はしなければいけないだろうが、自分の事よりもコトミの事が心配でたまらないのだ。何を言われるか分からないし、いろいろと問題があるのは俺も知ってるからな……

 

「タカ君の保護者役なら、私が担当してあげるけど、コトミちゃんのはタカ君が担当した方がよさそうね」

 

「義姉さんが? というか、何当たり前のように生徒会室にいるんですか」

 

「暇だったから」

 

「一応部外者は立ち入り禁止なんですが……」

 

 

 俺の当然のツッコミは黙殺され、面談当日は義姉さんが参加する事になった。というか、何故コトミのは出たくなかったのだろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカ君の三者面談に保護者役で同伴したら、横島先生が怪訝そうな顔をして私を見詰めていた。

 

「保護者?」

 

「はい」

 

「いや、一応家族の人じゃないと……ご両親は?」

 

「相変わらずです」

 

「妹さん……」

 

「それじゃあ俺のじゃなくてコトミの面談になるでしょうが」

 

 

 タカ君の言葉に、横島先生だけではなく私までも頷いてしまった。

 

「仕方がないね……これ」

 

「何でそんなもの持ち歩いてるんだよ」

 

 

 私が取り出したのは、既に私の分が書き込まれた婚姻届け。家族じゃなきゃいけないなら、本当の家族になればいいだけだと思ったんだけど、タカ君は呆れてる様子だった。

 

「まぁいいわ……」

 

「それじゃあ担任の先生も許してくれた事だし、タカ君、ここ書いて。判子ある?」

 

「いや、そっちじゃなくて……」

 

「横島先生がツッコむなんて相当だぞ……」

 

 

 とりあえず婚姻届けはしまうように怒られたので、私は渋々鞄にしまい込んだ。何時か本当にタカ君にサインしてもらえる日が来ると良いんだけどな。

 

「えっと、それじゃあ気を取り直して……津田の成績や生活態度、生徒会役員としての仕事っぷりはさすがね。校内でも津田の事を認めている人は大勢いるわ」

 

「さすがタカ君だね。お義姉ちゃん、鼻高々だよ」

 

「唯一気になることと言えば、いい加減彼女を作らないと同性愛じゃないかと疑われるって事くらいか」

 

「誰だ、そんなこと疑ってるやつは……」

 

「だって、お前の容姿なら選び放題だろ? 何なら複数と付き合っても許されるんじゃないかってくらいのモテっぷりだ。それを誰とも付きあってないとなれば、同性愛を疑われても仕方がないだろ」

 

「そんな思考の持ち主はくたばればいいんだ……というか、複数と同時に付き合ったらダメでしょうが」

 

 

 タカ君はその辺りも真面目なのか、彼女が認めたとしても複数と付き合うつもりは無いらしい。というか、タカ君を独占出来ると思ってる女子の方が少ないと思うんだけどな。

 

「まぁ、その辺りは畑が流してる噂がネタ元だから、詳しい話は畑から聞いてくれ」

 

「やっぱりあの人か……」

 

 

 あっさりと犯人が特定出来て、タカ君は盛大にため息を吐き、新聞部の部室がある方に視線を向けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 順番待ちの為廊下で待っていたら、タカトシと魚見さんが教室から出てきた。

 

「あら、津田君のお母さん、随分と若いのね」

 

「いや、違――」

 

「まだ膜ありますよ」

 

 

 私の言葉を遮るように魚見さんがお母さんに言うが、そのツッコミは違うんじゃないかな……

 

「貴女も膜の再生手術したの?」

 

「……もっ!?」

 

 

 おかしな話だなと思って流そうと思ったけど、ついつい聞き流せない事だと思って大声を上げてしまった。

 

「何を驚いてるの? もう一度お父さんに初めてを貰ってほしくて――」

 

「あー、それ以上は言わなくていいから。というか聞きたくないから」

 

「相変わらず大変そうだね」

 

「アンタの妹には負けると思うけどね」

 

「あっ、この後コトミの面談だから、俺はもう行くね」

 

「自分のが終わったと思ったら次はコトミの……やっぱりアンタは大変ね」

 

「同情しないでよ……なんだか虚しくなるから」

 

「ご、ゴメン……」

 

 

 タカトシが気にしなくていいといった感じで手を上げて一年のフロアに向かうのを、私はただただ見つめる事しか出来なかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカ兄が保護者として面談に同席してくれるんだけど、出来る事なら一人で面談して一人で怒られたかったな。

 

「怒られる事前提で考えるのもどうかと思うぞ」

 

「だって、どう考えてもいい事を言われる確率の方が低いよ……」

 

「だったら改善しようと努力しろ。この前生徒指導部に呼び出されたばかりだろうが」

 

「私はタカ兄みたいに優秀じゃないから、頑張ってもたかが知れてると思うけど」

 

「別に優秀になる必要はないから、せめて普通になるように努力しろよ」

 

「普通って難しいんだよ~?」

 

 

 自分が普通だと思っていても、周りから普通じゃないと思われているかもしれないし、平凡を目指すってのも何だかつまらないしね。

 

「屁理屈ばかり言ってないで、少しくらいは反省しろ」

 

「はーい」

 

 

 いい返事をすると、タカ兄は呆れたようにため息を吐いたのだった。




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