桜才学園での生活   作:猫林13世

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冷房は兎も角、暖房は殆ど使わないな


エコ精神

 夏真っ盛りな今、現代人の中でエアコンを使わずに過ごせる人がどれだけいるだろうか。地球温暖化を防ぐためにも、なるべくならエアコンに頼らずに生活した方が良いと分かってはいるのだが、どうしてもこの暑さを凌ぐにはエアコンに頼らざるを得ない。

 そこで私は考えた。個人で使うからいけないのであって、みんなで一ヵ所に集まって使えば、地球温暖防止につながるのではないかと!

 

「――で、集まるのウチなんですか?」

 

「うん」

 

 

 そういう話をして、私たちは今タカトシの家に集まっている。メンバーは我々桜才学園生徒会役員と英稜の二人、そしてコトミの友人のトッキーと八月一日という、ある意味いつものメンバーである。

 

「五十嵐にも声をかけたんだが、コーラス部の活動があるとかで学校にいるらしい」

 

「そういえばトッキー、今日部活は?」

 

「休み。来週大会だから、今のうちに英気を養うんだとさ」

 

「随分と余裕ですね。我が校の柔道部はかなり強いですよ?」

 

「ウチの柔道部だって負けてないぞ!」

 

「では、勝った方の学校が負けた方の学校になにか一つ言う事を聞かせる、というのはどうでしょうか」

 

「乗った!」

 

「あんまり感心しませんね」

 

 

 カナと私とで賭け事をしようと決めたが、タカトシが青筋立ててこっちを睨んでいたので、この賭けは不成立という事になった。

 

「せっかく集まってるんですし、何かしましょうよ」

 

「そうだな。これだけいるんだから、コトミと時さんの宿題でも見てもらいましょうか」

 

「何で勉強しなきゃいけないのさー!?」

 

「お前、自分が退学すれすれだという事を忘れているのか? 夏休みの宿題を忘れただけでも、留年の可能性があるんだからしっかりしろ」

 

「うへぇ……」

 

 

 タカトシに怒られ、コトミはその場にヘタレ込み、トッキーは情けない表情でタカトシに頭を下げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシさんに頼まれて、私たちはコトミさんと時さんの宿題を教えつつ、自分たちの宿題を片付ける事にした。

 

「森さんは夏の模擬試験、受けるんですか?」

 

「一応受けるつもりではいます。萩村さんは?」

 

「私は既に申し込んでいますので」

 

「早い……私ももっと緊張感を持った方が良いんでしょうか?」

 

「森さんには森さんのペースがあるんでしょうから、無理に緊張感を持つ必要は無いと思いますよ」

 

 

 萩村さんとそんな話をしながら宿題を進めていると、キッチンにいたタカトシさんが何かを持ってきました。

 

「タカトシ、それは?」

 

「暑いからアイスを作ってみたんだが、食べる?」

 

「アンタホントに有能ね……もちろん食べる」

 

 

 ケーキとか甘い物に目がない萩村さんは、既にアイスに意識を持っていかれているようだった。

 

「コトミも時さんも、少し休憩にしよう。あんまり無理しても頭に入らないだろうし」

 

「ほへ~……今ならタカ兄に襲われても抵抗出来ないよ」

 

「馬鹿な事言ってると、本気で塾に通わせるぞ」

 

「それだけは嫌だな~……」

 

 

 口から何かが抜け出ているような反応ですが、コトミさんもしっかりとタカトシさんからアイスを受け取って食べ始めました。

 

「というかタカトシ」

 

「はい?」

 

「お前は本当に抜け目がないな」

 

「丁度アイスが食べたいと話していたところだったんですよ」

 

「そうなんですか? まぁ、材料もありましたし、この暑い中買いに行くのも面倒だったので」

 

「作る方が大変だと思うけどな~」

 

「暇でしたから」

 

 

 萩村さん同様、既に宿題を終わらせているタカトシさんとしては、これくらい大した労力ではないのかもしれませんが、この人数分を作るとなると、結構な重労働だと思うんですよね……

 

「津田先輩、私たちの分まで、ありがとうございます」

 

「他の人には作って、八月一日さんたちにだけ作らないなんて事はしないよ」

 

「てかタカ兄。せっかくエアコンつけてるのにそんなに動き回ったら意味なくない?」

 

「誰かが家事をしないと片付かないだろうが。お前は宿題が残ってるし、俺がするしかないだろ?」

 

「一日くらいサボっても問題ないんじゃない?」

 

「そういう考え方をしてるから、お前は毎年宿題に苦しめられているんだろうが」

 

 

 タカトシさんのカウンターを喰らい、コトミさんは旗色悪しと判断して会話を打ち切った。ここで追い打ちをかけるような性格の悪さを発揮するタカトシさんではないので、彼はため息を吐いて話題を変えた。

 

「少しは真面目になってきたかと思ったんだがな」

 

「何だよ~! これでも五エロに減ったんだからね」

 

「まだ多いだろ……」

 

「さすがに二十エロだった時と比べれば減ってるでしょ」

 

「コトミ、そんなにしてたのか?」

 

「コトミちゃんの部屋が雌臭かったのは、それだけしてたからですか」

 

「先輩たちだって、タカ兄を想ってソロプレイしたことくらいあるでしょう。私は少し探せばおかずがいっぱいあるので、我慢出来ないんですよ」

 

「なら仕方ない――となると思ってるのか、お前は?」

 

「これからは自制心を鍛える所存であります故、平にご容赦くださいませ」

 

 

 とても兄妹の会話とは思えないけど、これが津田兄妹の日常のようで、私以外は特に驚いた様子ではありませんでした。というか、凄いパワーバランス……




コトミは相変わらずだな……

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