バイトもある程度終わり、片付けが終わったら海に遊びに行く事になった。
「会長、この後ビーチに行きましょう!」
「そうだな」
「アリア先輩も、ビーチに行きますよね?」
「うん、私も遊びたいし」
「スズ先輩も、ビーチく?」
「何でそこで略した……そして、そんな聞き方があるか!」
スズ先輩にツッコまれて、私は満足げに頷いた。タカ兄程ではないけど、スズ先輩もなかなかのツッコミのキレがあるので、ツッコまれると嬉しいんですよね。
「そういえばコトミよ」
「はい?」
「今日は家にタカトシ一人なのか?」
「タカ兄がバイトですし、お義姉ちゃんが来てると思いますよ。もしかしたら、サクラ先輩も来てるかもしれませんがね」
私から見ても圧倒的嫁のサクラ先輩がウチにいるかもしれないと知った三人は、あからさまに動揺している。まだタカ兄が誰と付き合うかなんて明言してないというのに、もう決まっちゃったと思ってるのかな?
「明日タカ兄が来てくれますし、水着アピールでもしてみては如何でしょう? あっ、シノ会長とスズ先輩じゃあんまりアピールにならないかもしれませんね」
「コトミ、喧嘩したいなら素直にそういえ」
「私も、相手になってあげるわよ?」
「いえいえ、喧嘩したいわけではありませんよ。そもそも私は、皆さんの恋路を応援してるんですから」
このままサクラ先輩に決まっちゃっても面白くないし、もう一波乱くらいあっても良いんじゃないかなって思ってるんだよね~。なんなら、マキを焚きつけてタカ兄に告白させるって手もあるんだけど、散々せっついてもなかなか告白しなかったし、マキはこのまま脱落しちゃうのかな。
「応援してるって、最前線で私たちの邪魔をしてるのはお前だろうが」
「私、邪魔なんてしてませんよ?」
「お前がもう少しまともだったら、タカトシがお前に使ってた時間は我々と一緒にいたかもしれないだろうが」
「私がダメだから、それにかこつけて先輩たちはウチにお泊りしたり出来てるんじゃありませんか? もし私が自力で平均点を取れるんなら、勉強会なんて必要なかったでしょうし」
私の反論に、シノ会長は黙ってしまった。スズ先輩やアリア先輩も何も言ってこないところを見るに、私の反論は相当効いているようだ。
「まぁ、タカ兄はあの通り色恋には明るくないですし、誰かがリードしてあげないといけないと思ってます」
「だが、鈍感とはまた違うだろ? 私たちの気持ちも、知った上で何時も通り接してくれてるわけだし」
「そこなんですよね~。普通の男子高校生なら、自分に好意を寄せている美人の先輩がいるなら、我慢せずに食べちゃうと思うんですよ。それこそ、男子生徒を喰い漁ってる横島先生みたいに」
タカ兄がそんな人だったら嫌だけど、そうじゃないって分かってるから言える冗談だ。会長たちも私が冗談を言っているのは分かっているので、あまり強めのツッコミは来なかった。
「横島先生の問題行動は兎も角として、タカトシはそんな節操無しではないからな」
「そんなこと、私が一番よく分かってますよ。リビングで全裸オ〇ニーが見つかった時も、そのまま正座させられましたし」
「何でそんなところでしてるのよ、アンタは……」
「一度リビングでしてみたかったんですよ。というか、スズ先輩も興味あるんですか~?」
「あるわけないだろうが!」
スズ先輩に思いっきり脛を蹴られて、私は悶絶しながら快感を味わっていた。これがタカ兄の蹴りなら、絶対に快感なんて味わえないのだろうが、スズ先輩の蹴りなら、それほど痛くないので快感も味わえるのだ。
「っと、話が横にそれましたが、とにかくタカ兄と付き合いたいのなら、もう少し積極的にアピールしてもいいと思いますよ? 下発言が減ってきた事で、タカ兄が先輩たちに向ける感情にも変化が見られますし」
「そもそも私はそんな事言ってないわよ」
「スズ先輩の場合は、自虐的な発言がなくなれば、もっと距離が縮まると思いますけどね」
「自虐的というと、身長ネタと貧乳ネタか……って、誰が貧乳だー!」
「誰も会長の事なんて言ってませんよ? シノ会長もそれがあるから、タカ兄にイマイチ異性として意識されないんだと思いますけど」
タカ兄は別に、大きさにはこだわらないだろうし、そもそも興味があるのかどうかすら怪しい。私やお義姉ちゃんがバスタオル一枚でうろうろしてても、普通に注意するだけだし……
「とにかく、明日はタカ兄がここに来ることになっているので、皆さん少しくらいは意識してもらえるように頑張ってくださいね」
「人の事ばかり言っているが、お前にはそういう相手はいないのか?」
「恋愛はゲームの中で十分ですよ。そもそも、こんな変態を貰ってくれるような男がいるとは思えませんし」
「自覚してるなら少しは改善したらどうだ? さっきの話じゃないが、お前がこのままだとタカトシが自分の為に使える時間が増えないだろうが」
「一日一エロを目指してるんですけど、どうしても十、二十と増えちゃうんですよね~」
一度滝に打たれろとタカ兄に怒られた事があるくらい、私は煩悩の塊のようなのだ……
まずコトミをどうにかしないと無理だろうな