桜才学園での生活   作:猫林13世

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これって交流会なのか?


交流会 副会長たち編

 久しぶりの学園交流会という事で、我々は英稜高校にやってきた。

 

「――で、何でコトミがいるんだ?」

 

「ムツミ先輩に柔道部の偵察を頼まれました」

 

「偵察? そういえば今度大会で当たるんだったな」

 

 

 三葉たちも十分に強いが、英稜の柔道部も侮れないと聞いたことがある。柔道部員たちには練習してもらった方が良いし、コトミに偵察を頼むのは正しい選択だったな。

 

「偵察は分かったが、何でコトミは英稜の制服を着てるんだ?」

 

「お義姉ちゃんに相談したら貸してくれました」

 

「……何してるんだよ」

 

「えっ、ダメだった?」

 

「偵察されていると分かっていれば、本気を見せないかもしれないだろうが」

 

「あっ!」

 

 

 タカトシに指摘され漸く気づいたのか、コトミは大声を上げて頭を掻いた。

 

「お義姉ちゃん、やけにあっさり制服を貸してくれたと思ったら、そういう思惑があったのか」

 

「くっくっく……今更気づいたのか」

 

「くっ、今回は……私の負けだ!」

 

「君たちは何をしてるのかな?」

 

 

 突如現れたカナと二人で厨二ごっこを始めたコトミに、タカトシが呆れながらツッコミを入れる。

 

「こんにちはタカ君。そしてその他大勢」

 

「おい!」

 

「冗談ですよ。シノっちはからかい甲斐がありますね」

 

「まぁ冗談ならいいが……」

 

 

 そもそも生徒会長は私なのだから、どう考えても私が中心だろうが。

 

「そもそも今日偵察が来ることは、私以外知りませんので、思う存分偵察してください」

 

「それで良いのか?」

 

「まぁ、やりすぎないように私が監視しますので、ご心配なく」

 

「では、私たちもコトミに付き合うとするか」

 

「交流会は良いのかよ……」

 

「副会長同士でやっておいてください」

 

「………」

 

 

 タカトシが頭を抑えながら萩村になにか耳打ちする。恐らく行き過ぎた時のストッパーを任せたのだろうが、最近の私たちはだいぶ大人しいと思うんだがな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 義姉さんに生徒会室の鍵を借り、俺は英稜高校生徒会室を訪れた。

 

「お邪魔します」

 

「あれ? タカトシさん一人ですか? 会長が出迎えに行ったはずですが」

 

「あぁ……義姉さんならコトミの偵察に付き合うと言って、ウチの会長たちと一緒に柔道部に行きました」

 

「何で桜才の偵察に会長が?」

 

「単純に楽しそうだからかと……」

 

 

 出迎えてくれたサクラさんに愚痴をこぼすような形になっているが、どうやらサクラさんも呆れてくれたようだ。

 

「ウチの会長もですが、そちらの会長もなかなかですよね……」

 

「まぁ、昔はもっとぶっ飛んでいたので、最近はまともになってきたと言えなくもないですが、相変わらずな部分はやっぱありますよね……」

 

「とりあえず、お茶でも飲んで落ち着いてください」

 

 

 サクラさんが淹れてくれたお茶を啜り、とりあえず一息つくことにした。

 

「それで、会長たちが柔道部に行ってしまったということは、交流会はどうなるんでしょうか?」

 

「俺とサクラさんに丸投げされました……『副会長同士で上手いことやっておいてくれ』だそうです」

 

「はぁ……」

 

 

 どうやらサクラさんも呆れて言葉が出ないようだった……まぁ、俺も似たような感想だし、サクラさんが呆れてしまっても仕方ないか……

 

「そもそも、会長は何で偵察を黙認してるんでしょうか?」

 

「さぁ……コトミが相談して英稜の制服を貸すくらいですから、何か考えがあるのでしょうが……」

 

「コトミさんに? そういえばさっき、見たこと無いツインテールの女子生徒がいるという噂を聞いた気がします」

 

「十中八九コトミですね、その特徴は……」

 

「男子たちが噂してたみたいですし、声をかけられてるかもしれませんよ?」

 

「それがどうかしました?」

 

 

 まぁ、不審者として声をかけられるのなら問題だが、普通に声をかけられるくらいあるだろうな。実際、俺もさっき生徒会室に来るまでに何人かに声をかけられたし。

 

「お兄ちゃんとしては心配じゃないんですか? 妹さんが付き合うかもしれないって?」

 

「あの問題児を貰ってくれるのなら、喜んで贈りだしますよ。何なら熨斗でもつけて」

 

「……まぁ、コトミさんの本性を知っている身としては、タカトシさんの気持ちは痛いほどわかりますけど、それでいいんですか?」

 

「そうですね……相手に悪いかもとは思いますが」

 

 

 あんな妹を押し付けて申し訳ないと思うかもしれないな……家事無能でおバカな女を受け止めてくれるだけの器量があればいいんだが……

 

「普通は妹に彼氏が出来るかもって思うと焦るのでは?」

 

「どうなんでしょうね……まぁ、彼女もいない兄が何を言ってもやっかみと思われるかもしれませんが」

 

「タカトシさんなら、すぐに彼女を作れるんじゃないですか?」

 

「どうでしょうね……意外とシビアですから、付き合ってもすぐにフラれそうですし」

 

 

 そもそもコトミの世話から解放されない限りは、彼女と何処かに出かけるなんて余裕は無いだろうし、そうなると「つまらない」とか言われてフラれそうだしな……

 

「何だか彼女を作らない理由が、他の高校生とは違い過ぎますよね、タカトシさんは……」

 

「まぁ、保護者代わりですから、とりあえずはコトミがしっかり自立するまでは無理ですね」

 

 

 そんなことを話しながら、これでいいのだろうかという疑問が頭をよぎった。これじゃあ交流会というよりバイト後のお喋りと大差ないんじゃないだろうか……




保護者が板につき過ぎてる……

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