桜才学園での生活   作:猫林13世

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大変だな……


飛ばされたスカート

 水泳の後直接生徒会室にやってきた私は、とりあえず着替えようとハーフパンツを脱いでスカートに履き替えようとして――

 

「おや?」

 

 

――鍵をかけ忘れたことに気が付いた。

 

「萩村、着替えていたのか」

 

「えぇ、水泳の後野暮用がありまして、ここで着替えさせてもらってます」

 

「でも何で鍵をかけなかったの? もしかしてタカトシ君に着替えをのぞかせて、責任を取らせるつもりだったの?」

 

「そんな意図は一ミクロンも存在しない」

 

 

 そもそもタカトシなら、生徒会室の中の気配を感じ取って、私が何をしているかくらいわかりそうなものだし。

 

「そういう事なら仕方ないが、ちゃんと窓を閉めておいた方が良いと思うぞ?」

 

「窓を閉めたくないなら、せめてカーテンを閉めておいた方が良いよ~」

 

「どうしてですか? この部屋は地形的に外から覗かれる心配は必要無いと思うのですが」

 

「えっとね、この部屋は――」

 

 

 七条先輩が理由を説明しようとした瞬間、突風が襲ってきた。

 

「――極偶に強い風が吹いて、部屋の中の物を攫って言っちゃうの」

 

「ぬぁっ!? スカートが」

 

「遅かったみたいだな……」

 

 

 既に私のスカートは風に攫われ、手を伸ばしても届かない位置まで飛ばされて行ってしまった。

 

「仕方がない、私たちが探してくるとするか」

 

「さすがにスズちゃんがパンツ丸出しで探し回るのは問題だしね~」

 

「面目ないです……」

 

 

 会長と七条先輩がスカートを探しに行ってくれている間に、私は窓を閉めてる。

 

「まったく、エライ目に遭ったわね……」

 

「あれ? 会長とアリア先輩は?」

 

「あ……」

 

 

 窓を閉めたからといって、扉の鍵を閉めなかったら意味ないじゃん……タカトシ以外にも来客があるかもしれなかったんだし、窓より先に扉でしょうが……

 

「どうかしたの?」

 

「い、いや……何でもない」

 

「そう? 何だか冷や汗をかいてる様子だから、何か都合が悪いのかと思ったけど」

 

「(さすが、こういうところは鋭い!)」

 

 

 恋愛方面では鈍感を装っているタカトシだが、普段から鋭い観察眼で物事を見抜いているのだから、私が今ここにいてほしくない気持ちも分かっているのだろう。

 

「ちょっと熱いな……何で窓を閉めてるの?」

 

「うぇ? と、特に意味はないわ……よ?」

 

「……ちょっと購買に行ってくる。何かいる?」

 

「だ、大丈夫。牛乳があるから」

 

「そう。それじゃあ、会長たちが来たらよろしく言っておいて」

 

「えぇ。ありがとう」

 

「どういたしまして、でいいのかな? 今度からは気をつけなよ。鍵は合鍵で閉めておくから」

 

「っ!?」

 

 

 どうやらお見通しだったようで、タカトシは静かに生徒会室から出ていき、外から鍵をかけた。本来なら会長が持っている一本だけだったのだが、紛失騒動の際にタカトシが合鍵を所持する事になったのだ。ちなみに、職員室にも予備の鍵を用意してあるので、二人が休んでも私のように鍵を借りてきて開ける事が出来るのだ。

 

『萩村、見つかったぞ……? あぁ、鍵がかかっているのか』

 

 

 タカトシが出ていって数分後、会長と七条先輩がスカートを見つけてくれたようで、生徒会室に戻ってきた。私は中から鍵を開けるべきか悩んだが、会長が自分の鍵を使って中に入ってきた。

 

「ほら」

 

「ありがとうございます」

 

「あれ? タカトシ君がまだ来てないなんて珍しいね」

 

「あぁ、それなら――」

 

 

 スカートを穿いた私が説明を始めようとしたタイミングで、タカトシが人数分のお茶を持って生徒会室に戻ってきた。

 

「遅れました」

 

「珍しいな、タカトシが遅刻だなんて」

 

「何やら事情がありそうだったので、購買に寄ってお茶を買ってました」

 

「ゴメンなさい……」

 

「萩村が言ったのか? 風でスカートが――」

 

「わー! と、とにかく全員集まったので、作業を始めましょう」

 

「な、なんだいったい……」

 

 

 会長が余計な事を言い出しそうだったので、私は強引にその話題を終わらせて作業に没頭する事にした。

 

「というか、熱いぞこの部屋……」

 

「あっ、さっき窓閉めたままですので」

 

「そういう事か……まだエアコンに頼る時期じゃないし、窓を開けるか」

 

「大丈夫? また何か攫われ――」

 

「わー! わー! わー!」

 

「スズ、さっきから五月蠅い」

 

「ご、ゴメンなさい……」

 

 

 恐らくタカトシには私のスカートが風に攫われた事はバレているのだろうけども、直接口にするのはちょっと恥ずかしいし、異性のタカトシの前でスカートの話をされるのも恥ずかしいので、大声を出して誤魔化していたんだけど、タカトシに怒られてしまった……

 

「とりあえず、物が飛ばされない程度に窓を開ければいいんだろ? 萩村もそれでいいな?」

 

「はい……それで構いません」

 

「といっても、今日はそれほど事案も発生してませんし、処理すべき書類もこれだけですけどね」

 

「楽が出来るのは良い事だな」

 

「やっ!」

 

「畑さん? 何か用事ですか?」

 

「これ。萩村さんの飛ばされたスカートを追いかける天草会長と七条さんのパンチラ写真。いくらで買ってくれます?」

 

「アンタの所為でいろいろ台無しじゃないかー!」

 

 

 結局書類の処理をタカトシに任せ、私たち三人は畑さんを説教するために生徒会室を後にするのだった……というか、この人の存在を忘れてた……




やっぱり畑さんはダメだな……

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